会社員とフリーランス・自営業の年金制度や社会保障制度を比較します
日本の公的年金や社会保障制度のしくみは、職業によって適用される制度が異なる場合が多く見られます。転職など職業が変わることによって適用される年金制度や社会保障制度がどのように変化するのか、今回は会社員であった期間と自営業であった期間の両方を持つ人の事例を使ってご案内します。

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会社員とフリーランス・自営業者の公的年金の違い
事例で確認~老齢年金
事例で確認~遺族年金
年金以外の社会保障制度の相違点

会社員とフリーランス・自営業者の公的年金の違い

会社員とフリーランス・自営業者はともに国民年金に加入していますが、その種別が異なります。会社員は第2号被保険者として国民年金に加入すると同時に厚生年金にも加入し、フリーランス・自営業者は第1号被保険者として国民年金のみに加入しています。このため、第2号被保険者である会社員は1階部分の基礎年金と2階部分の厚生年金を受給し、第1号被保険者であるフリーランス・自営業者は1階部分の基礎年金のみを受給します。



大学や高校を卒業した後、ずっと会社員として働き続ける場合や家業を継いでずっと自営業者として仕事をする場合は、同じ種別で年金制度に加入し続けるので、上記のように会社員は基礎年金と厚生年金、自営業者は基礎年金を受給します。一方、会社員として就職した後、独立してフリーランスになったり、自営業者から会社員に転職した場合は、公的年金の加入期間が第1号被保険者と第2号被保険者期間が混在したものになります。それでは、老齢年金と遺族年金の支給内容の変化をみていきましょう。

●老齢年金
会社員として厚生年金に1ヵ月でも加入したことがある人は、老齢基礎年金の受給資格を満たしていれば老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給することができます。さらに、1年以上厚生年金に加入していれば60歳から支給される特別支給の老齢厚生年金を受給することができます(特別支給の老齢厚生年金は生年月日・性別により支給内容が異なります。詳細は「年金はいったい、いつからもらえるの?」をご覧ください)。

また、厚生年金に20年以上加入した人が老齢厚生年金の受給権を取得した時に扶養する配偶者や子どもがいる場合は加給年金が加算されます。そして、加給年金の対象となっている配偶者が65歳になり、自分自身の老齢基礎年金を受給するようになると、加給年金は支給停止され、配偶者の老齢基礎年金に振替加算として加算されます(加給年金と振替加算の詳細は「「年金の加算にはどんなものがあるの?」をご覧ください)。

●遺族年金
会社員として厚生年金に加入中に死亡した場合、要件を満たす遺族に対して遺族厚生年金と遺族基礎年金が支給されます。この場合に支給される遺族厚生年金を「短期要件の遺族厚生年金」といいます。一方、過去に会社員として厚生年金に加入したことがあり、その後も国民年金に加入して老齢基礎年金の受給資格を満たしている人が死亡した場合も、要件を満たす遺族に対して遺族厚生年金と遺族基礎年金が支給されます。この場合に支給される遺族厚生年金は「長期要件の遺族厚生年金」といいます。

短期要件の遺族厚生年金と長期要件の遺族厚生年金の大きな違いは、年金額の計算の際の加入月数の考え方と配偶者に対する中高齢寡婦加算の要件です(中高齢寡婦加算の詳細は「「死亡保障と遺族年金の関係は?」をご覧ください)。原則として、遺族厚生年金は死亡月の前月までの厚生年金の加入月数で計算した老齢厚生年金の年金額の4分の3になります。

ただし、短期要件の遺族厚生年金は加入月数が300月未満の場合は300月とみなして計算します。つまり、加入期間が短い人にも最低月の保証があります。一方、長期要件の遺族厚生年金は実際の厚生年金の加入期間のみで計算します。

また、中高齢寡婦加算は夫の死亡時の妻の年齢等の要件を満たす場合に支給されますが、短期要件の遺族厚生年金は死亡した夫の厚生年金の加入期間にかかわらず支給されます。一方、長期要件の遺族厚生年金は、夫の厚生年金の加入期間が20年以上ないと中高齢寡婦加算は支給されません。

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