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“安いニッポン”脱出を考える人に最低限必要な2つの心構え。「海外就職」は現実味を帯びてきたか

続く円安、生活必需品の値上げラッシュ。今の稼ぎのままで現状の生活水準が維持できるのか、不安を抱く人は増えているはず。稼げない日本で働くのではなく、思い切って海外就職も検討してみるか、そう思う人も増えているかもしれない。海外就職を考える人に必要な最低限の心構えについて、人材コンサルタントの小松俊明が解説する。

小松 俊明

執筆者:小松 俊明

転職のノウハウ・外資転職ガイド

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“安いニッポン”加速で「海外就職」に現実味? 国外就職を考える人に最低限必要な2つの心構えとは

生活必需品の値上げが続いている。今の稼ぎのままで現状の生活水準が維持できるのか、不安を抱く人は増えているはず。世界ではコロナ禍への対応に慣れ、渡航の自由も戻りつつある。稼げない日本で働くのではなく、ここは思い切って海外就職も検討してみるか、そう思う人も増えているかもしれない。超円安な状態も背中を押してくれるはずだ。海外就職の実現に必要な最低限の心構え2つを、人材コンサルタントが解説する。
 

世界には日本語を話せることが大きなアドバンテージになる仕事がある

日本人は英語があまり得意でないと言われてきた。実際に英語が得意でないと、海外で就職することは叶わないと、最初から諦めている人もいるかもしれない。確かに、知り合いに外資系企業で働く人がいると、大抵は英語が得意で、中には帰国子女もいる。自分に海外経験がほとんどないため、海外で働くなんて想像もできないという人もいることだろう。

このように、海外で働くということは、自分とは全く違う世界の話だと思っている人も少なくないかもしれない。しかし、実際海外に就職した人の話を聞いてみると、実は特別な人ばかりではないようだ。ここでは、海外における日本人雇用の需要を2つ紹介する。

(1)日本人相手に商談ができる営業マン
良くも悪くも日本人はユニークな存在である。こんな小さな国でありながら、世界第3の経済大国であるし、さまざまなテクノロジーを開発している。日本市場は中長期的には縮小するが、質の高いサービスや商品に対して目の肥えた日本人向けのビジネスは、ある意味で取扱注意のプレミアムマーケットとして認知されている。

海外で見る日本人歓迎の求人の多くは、日本企業向けの営業の仕事が多い。やはり日本企業にとって、日本人の営業マンと商談ができることの安心感は、大きな魅力である。よって、そうした日本人相手の営業ができる人は、現地に進出した日本企業に加えて地元企業で日本企業と取引をしたい会社では常に求められている。英語の流暢さよりも、日本人相手の商談ができることの方がはるかに大切な仕事である。

(2)日本語のコールセンター
これに加えて、日本語対応ができることに大きなアドバンテージがある仕事の代表格として、日本語のコールセンターで働く求人がある。

これも海外就職では人気の職種であり、同じコールセンターの仕事で英語や現地の言葉で対応する仕事よりも、はるかに給料がいいことから、明らかに日本語対応のプレミアムが認知されている。この仕事に就いている日本人は実際に多いようだ。
 

海外就職の成否は日本との比較をやめられるかどうかにかかっている

日本からの海外就職を希望する動機に、「より良い待遇を求めたい」ということが含まれるようになったのは、いかに日本が稼げない国になってきたかということを表しており、これは最近の特徴である。以前から海外就職への一定の需要はあったが、その理由の多くは英語を使って働きたい、海外で生活してみたい、そして長時間労働が常態化した日本では働きたくないという内容が中心だった。そのような意味では、海外就職のあり方は、ずいぶん変わってきた。

世界中に日本企業の拠点があるため、いつの時代も日本企業で働く社員で、海外駐在を経験する人たちはいた。家族を帯同する人もおり、日本人学校の中には、かなり規模の大きな学校もある。タイ・バンコクや中国・上海の日本人学校が代表的だ。駐在員本人もさることながら、家族も含めて、海外生活を安定的に続けられるかどうかは、本人たちが日本と海外の比較をやめられるかどうかにかかっている。

例えば、来日した外国人が日本の特徴としてよく言うことが、町がきれいなこと、サービスがいいこと、時間が正確なこと、そしてまじめにルールを守ることである。海外で仕事をし、生活もしてみてすぐに気づくことは、それが欧米であれ、アジアであれ、これらのほとんどの項目で、日本ほど整っていることはないということだ。

つまり、日本人は、これらの点で海外生活に不満を持ちやすいということである。このことが、日本人の足をすくうことが多い。神経質な人は特に、海外生活に我慢できなくなる。海外就職を本気で考えたい人は、まずはこの点に注意したい。
 

「雇用は安定しないのが当たり前である」という前提に立つ

日本の会社は、かつては終身雇用で、定年の年齢まで誰もが働けた時代があった。そのように振り返る日がいつかくるかもしれない。すでに、自分の会社はそのような状況だという会社もあることだろう。

転職経験のある人は実感しやすいと思うが、雇用は安定しているものではない。常に会社が置かれている状況は流動的で、人の出入りがあることがむしろ自然である。必要に応じた適材適所の人員整理がされなければ、必ずどこかにしわ寄せが起きる。自分だけ良ければいいと考える人でも、ずっと自分だけ難を逃れられるということは考えにくい。大きな組織になればなるほど、最終的に個人は組織の論理の前に勝つことはできない。

海外就職を希望する人は、日本の常識ではなく世界の常識を意識して、雇用は安定していないこと、職場はさまざまな出来事に合わせて変える必要があること、そしてそれがむしろ自然で合理性もあり、実は持続性もあることを最低限理解することが必要である。

日本で働くことは待遇がいいかと言えば、そうではないことが明らかになってきた。英語ができるから、海外経験が豊富だから海外で働きたいという人ばかりでもなくなった。日本語を話せること、日本人対応ができることが、思いのほか評価され、それが仕事につながることも増えている。

国際情勢の先が読めず、平和な日本が今後どのような状況を迎えるのか、予想は難しい。人口減少が進み、外国人が日本に増えてきたこと一つ見ても、日本社会の将来は今とは大きく異なると見られる。

つまり、日本もこれまでとは違う職場環境になるということである。海外就職を特別な人が考える特別なこととして捉えるのではなく、誰にとってもありうる一つの選択肢として、自分ごととして捉えるべき時がもう来ているといえる。
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