労務管理/就業規則の基礎知識

廃止・存続?配偶者控除の見直し議論を整理する

配偶者控除の見直し議論が急展開しています。配偶者控除はなぜ見直されなければならないのか、配偶者控除とはそもそもどのようなものなのか、配偶者控除のメリット(節税効果)は何かなどから解説し、直近の配偶者控除見直しの方向性をまとめています。

本田 和盛

執筆者:本田 和盛

企業の人材採用ガイド

「103万円の壁」から「150万円の壁」への引き上げ検討も?

パートタイマーで働く多くの主婦が、年間収入を103万円以下に抑える働き方を選んでいます。ご主人の配偶者控除の適用を受けるためです。今、この配偶者控除の見直しが議論されています。今回は、配偶者控除に関する最新の情報をお伝えします。

配偶者控除と課税の仕組みを整理する

配偶者控除とは働く妻を持つ夫を優遇する制度です

配偶者控除とは働く妻を持つ夫を優遇する制度です

最初に配偶者控除と課税の仕組みをご説明します。

パートタイマーをはじめとするサラリーマン(給与所得者)は、年収のすべてが課税対象となるわけではありません。まず、年収から一律65万円の給与所得控除が引かれます。さらに一律38万円の基礎控除(納税者すべてが控除される非課税部分)が差し引かれます。

そうすると年収が給与所得控除と基礎控除の合計額(65+38=103万円)以内であれば、課税対象となる金額は0円となり、パートタイマーである主婦(主夫である場合も同様)の給料には税金はかかりません。

一方、扶養している妻の年収が103万円以下であれば、夫の所得について38万円の配偶者控除を受けることができます。仮に夫の年収が800万円だとすると、配偶者控除によって11万円程度の節税が可能となります(38万円×30%=11万4千円、所得税20%、住民税10%として計算)。結構、節税効果がありますね。

配偶者控除は、働く妻の貢献を評価したもの

配偶者控除は昭和36年に創設されました。当時は専業主婦が主流でしたが、家事をこなした上で働き手(納税者)である夫を助けて、家計補助的に働く主婦もいました。こういった妻の貢献(いわゆる内助の功)を税制上評価し優遇するために創設されたのが配偶者控除です。

しかしこの配偶者控除が見直されようとしています。妻が「働き損のないように」103万円以内に収入を抑えるケースも多く(103万円の壁)、制度自体が女性の社会進出を阻む一因となっているからです。少子高齢化に伴い労働力人口の減少が加速するなか、一人でも多くの働き手によって社会全体を支えていく必要に迫られています。

また、妻、夫ともに税制面で二重に優遇される点もよく批判されます。そもそも配偶者控除は、専業主婦が大多数である社会を前提とした制度ですが、制度の創設から50年が経ち、共働き世帯が専業主婦世帯の1.6倍(平成27年度、厚労省資料)を占めるなど、時代にそぐわないものとなっていることも見逃せません。

配偶者控除廃止から一転、配偶者控除の適用範囲の拡大へ

そこで専業主婦を優遇する配偶者控除を廃止し、夫婦なら働き方を問わず一定額を控除する「夫婦控除」の導入が検討されてきました。しかし対象世帯の大幅な拡大による税収の落ち込みや、増税となる世帯の反発が懸念された結果見送られ、ここに来て配偶者控除の適用範囲の拡大(103万円から150万円などへの引き上げ)が検討されています。

これだと「103万円の壁」が「150万円の壁」になるだけで、女性が就労を制限しようとする行動はあまり変わりません。

今後は、103万円の壁をどれだけ引き上げるのかという議論がなされる一方で、配偶者控除を受けられる夫の年収要件(たとえば1千万円以下)に関し、政府・自民党内で話し合われることになります。

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