対象は水まわりや玄関を増設する二世帯同居用の設備増設工事
さて、具体的にどういう工事が対象になるのか見ていきましょう。対象は主に次の4つの設備を増設する工事です。1.調理室:ミニキッチンでも通常サイズのキッチンが他にあれば対象
2.浴室:シャワー室でも浴槽のある浴室が他にあれば対象
3.便所:暖房洗浄便座付のトイレや手すりの工事も対象
4.玄関:インターホンやポストも対象。勝手口や外部から鍵のかからないものは除く
その上で、次の3つの条件を満たす必要があります。
A.改修後の居住開始日が平成28年4月1日から平成31年6月30日であること
B.対象となる二世帯同居用の設備増設工事費が50万円を超えること
(国または地方公共団体からの補助金等がある場合はそれらを除いた金額で)
C.増設後に1~4のうち少なくとも2つ以上が居住用部分に複数あること
Cの条件は、具体例を挙げるとBeforeがキッチン、浴室、トイレ、玄関が1つずつの場合、キッチンだけ増設しても対象外、Beforeがキッチン、浴室、玄関が1つでトイレが2つなら、キッチンを増設すればキッチンとトイレが「複数」あるのでキッチンの増設工事費が対象になる、という意味です。
さらに、主な要件として次の5つが挙げられます。これらはニ世帯同居用の減税であって、賃貸用住宅への改修とを区別し、高額所得者を対象から除くための条件と考えられます。
1) 対象者の居住用の家屋であること
2) 対象住宅の引渡し又は工事完了から6か月以内に居住すること
3) 床面積が50平方メートル以上あること
4) 店舗等併用住宅の場合は、床面積の1/2以上が居住用であること
5) その年の合計所得金額が3000万円以下であること
以上の条件の下で、水まわりや玄関を増設した費用の内、一定割合が所得税から減税されることになります。三世代同居という言葉は親世帯-子世帯-孫の三世代での同居を指しますが、家族構成や年齢は改修時の要件となっておらず、孫がいなかったり、すでに独立していて親の介護のために同居する場合でも利用可能と考えられます。
投資型、ローン型のどちらかを選択
今回の減税制度の特徴として、投資型、ローン型のどちらかを選ぶ、という考え方があります。投資型は手持ち資金で払った場合、ローン型は資金を借入れた場合です。新築住宅では年末のローン残高に応じて所得税が還付されるローン型のみの制度が多かったのですが、リフォームの場合はローンを組まずに自己資金で支払う投資型のケースも多いため、選べるようにしたのでしょう。投資型では二世帯同居用の設備増設工事に対し「標準的な工事費用相当額」が予め定められています。例えばキッチン(ミニキッチンを除く)の増設は1,649,200円、便所の設置は532,100円となり、この合計に対し、10%が確定申告により還付されます。上限は250万円なので、最大では25万円減税されることになります。
ローン型では償還期間が5年以上の住宅ローンを組んだ場合、
(ア)二世帯同居用の設備増設工事に対し、年末残高(上限250万円)の2%が5年間還付されます。最大では10%分の25万円で投資型と同額となります。但しローン型に限って、
(イ)上記以外の増改築や交換の工事も含め、年末残高(ア+イで上限1000万円)の1%が5年間還付される制度があります。例えば、キッチン増設に伴いLDを広げたり、床を張り替える場合などがこの対象となります。二世帯同居用の設備増設工事の2%減税枠を最大限活用し、それ以外の1%減税の枠を加えると5年間の総額では
(250万×2%×5年)+((1000-250)万×1%×5年)=25万+37.5万=62.5万円
が減税されることになります。
ローン型に関しては、ローン残高に対しての控除制度は対象となる範囲が広いため、減税額の上限が大きくなっています。
いずれ同居するなら今リフォームするのがお得
今回の制度は、いずれは同居したいと思っている家族にとって、改修のきっかけになると思います。リフォームするなら、減税が受けられるうち、特に消費税が上がる前に改修しておこう、というお気持ちの方は多いのではないでしょうか。また、従来からあるバリアフリーや断熱改修工事費の減税と併用することも可能です。今回の内容は改修に限定されており、建替えは対象外ですが、今後より広い対象の三世代同居・近居促進策が出てくる可能性もあります。さらに、自治体によっては同居・近居への補助金が受けられる場合もあり、これからも三世代同居・近居促進の流れは加速していくと思います。今年度はそのあたりの情報にも注目していきたいと思います。
○制度の詳細は国土交通省のホームページで解説されています
同居対応改修に関する特例措置
二世帯住宅研究所(ヘーベルハウス)