二世帯住宅では、親子両世帯の夕食が別々か一緒かで建物の形が大きく変わります。夕食が別々の場合、それぞれの世帯が独立した住宅としてキッチン、玄関、水回りを持っている独立二世帯がお奨めです。独立二世帯では世帯間の独立性を高めたいが親世帯の加齢配慮を考え行き来もできるようにしたい、というような相反する要望を実現していかなければなりません。これらを考えながら二世帯住宅の構成、つまり二世帯の居住スペースを一つの建物の中でどう組み合わせるかを決めていくことになります。遮音性や世帯間の行き来ができるかも二世帯住宅の構成によって左右されます。ではご覧下さい。
(1)縦と横、どちらで分けるか?
2階建ての場合、まず二世帯の分け方は下の図のように縦か横に単純に分けることを考えつくでしょう。この2種類のメリット・デメリットをまず整理してみましょう。
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二世帯の2つの分け方
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■連棟型
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縦に2つに割る「連棟型」の例 |
縦に2つに割る分け方は「連棟型」と呼ばれ、江戸時代の長屋にも見られる古くからある形式です。普通の2階建て住宅を連続させたものと考えてよく、2階の床や配管に耐火性や遮音上の特別な配慮を必要としないため、技術的には最も単純に建てられる方法です。住まい手の側から見たときは、各世帯が地面に接するため玄関へのアクセスや庭の利用がしやすいこと、また各世帯に2階があるため日当たりの良い部分が平等に得られることがメリットと言えます。一方各世帯が壁で接しているためその面に開口を採ることができず、採光通風が可能な面は残りの3面に限られます。
■重層型
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階で分ける「重層型」の例 |
横に分ける、すなわち階によって世帯を分けるのは「重層型」と呼ばれます。重層型は、床の性能が住戸間の遮音性を左右するため、床の性能が重要になりますが、一般に壁の場合よりも遮音性が優れることは以前「
親子両世帯を分ける知恵・つなぐ知恵(2)」で述べたとおりです。重層型の特徴として、主要な生活空間が1つのフロアにまとまるため、階段や廊下といった通路空間が節約でき、間取りがマンションのようにコンパクトにできることが挙げられます。マンションと異なり4面が外気に接していますので、採光や通風もとりやすいこともメリットです。