「OK牧場」は有名な心理学用語……人生態度を振り返るマッピングツール
「OK牧場」は心理学用語?本当の意味とは?
実はこの「OK牧場」は、心理学ではとっても有名なキーワードなのです。「交流分析」という心理療法で使われる人生態度のマッピングツールです。
上に表した図が「OK牧場」のマップです。この中には4つのゾーンがあります。自分自身や他人をどう捉えているのか、ご自身に近いゾーンを探してみましょう。
(1) 私もあなたもOK
(2) 私はOKじゃない。あなたはOK
(3) 私はOK。あなたはOKじゃない
(4) 私もあなたもOKじゃない
いつも、(1)「私もあなたもOK」のように考えられるのが理想です。しかし、悩みを抱えていたり、うまくいかないことが続いたりすると、(2)「私はOKじゃない。あなたはOK」と他人をうらやんだり、(3)「私はOK。あなたはOKじゃない」と他人を見下したり、(4)「私もあなたもOKじゃない」と、自他の良いところを全く見いだせなくなることがあります。
現実の牧場の中の牛の位置が一定ではないように、私たちもこの「OK牧場」の中を移動しながら生きているのです。
「私もあなたもOK」と思えない理由・心理学的な原因
人は幼少期に人生への態度を決める
幼い子どもたちは、身近な人々とのコミュニケーションで感じたことを通して「世の中ってこういうもの」と理解していきます。その理解を基に、「生きていくには、こうふるまった方がいいのだろう」と人生態度をなんとなく決めていきます。
幼少期に(1)の「私もあなたもOK」の人生態度を身につけると、大人になっても自然と自分と他人を信頼できるため、ストレスの少ない考え方をすることができます。一方で、(2)「私はOKじゃない。あなたはOK」、(3)「私はOK。あなたはOKじゃない」、(4)「私もあなたもOKじゃない」の人生態度を身につけた子は、その後の人生でもこれらの考え方を基軸にして人や世の中を見ていくようになるため、ストレスを抱えやすくなってしまいます。
未熟な子どもが考えたことですから、その考え方は合理的ではないことが少なくありません。しかし、「三つ子の魂、百まで」ということわざがあるように、幼少期に身につけた人生態度は、その後の人生でも続いていきます。
では、幼少期に身につけた人生態度は一生変えることができないのでしょうか? そんなことはありません。人はいつからでも変わることができます。
OK牧場の理想形、ガッツ石松さんに宿る「信頼感」に学ぼう!
自他への信頼感が人を前進させる
私は、「OK牧場」を流行らせてくれたガッツ石松さん自身の人生こそが、(1) 「私もあなたもOK」に近づくヒントになると感じています。ガッツさんのお母さんは、体の弱い夫に代わって毎日泥まみれに働き、女の細腕で一家6人を支えてくれたのだそうです。ガッツさんが映画『太陽の帝国』(1987)で、アジア人初の全米映画俳優協会・最優秀外国人俳優賞を受賞した際に、授賞式で母親への感謝の気持ちを述べ、そのエピソードが話題になりました。
スピーチによると、幼少時代のガッツさんは、ゴミを漁って小金を稼ぐアジアの貧困層の子どもたちと、同じ生活レベルだったそうです。ただ一つ違うのは、母がいつも「お前を信じている」と全面的に信頼してくれたことです。人は誰かに心から信頼してもらえれば、自分を信じて努力していける。そのガッツさんのメッセージに、会場ではスタンディング・オベーションが鳴りやまなかったそうです。このエピソードを聞くにつれ、ガッツさんの「OK牧場!」の根っこには、自分と他人に対する基本的な信頼感があるのだと感じています。
私たちはストレスに遭遇するたびに、「OK牧場」の4つのゾーンを移動しているため、自分や人を信頼できずにマイナス思考にはまってしまうこともあります。しかし、そうしたときこそ意識して「OK牧場!」とつぶやいていきましょう。
「私はダメだ。自信ない…」と感じたときには、「大丈夫、私はOK牧場!」と自分を励ましましょう。「あの人はダメだなぁ」と感じたときには、「完璧な人なんていない。人は誰でもOK牧場!」と思い直しましょう。そして、他人に対しても同じように伝えていきましょう。その繰り返しによって、人はいつからでも、(1) 「私もあなたもOK」のゾーンに近づいていくことができます。
幼少期に見つけた人生態度は、意識次第でいくらでも変化させることができます。私たちもガッツさんを見習って、今日からぜひ「OK牧場!」とつぶやいていきませんか?
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