子供の病気/その他の子供に多い病気

低身長の原因・検査・治療・予後(2ページ目)

低身長は、主に成長ホルモンが不足しているために起こってきます。低身長の原因と治療などについて説明します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド


低身長の検査

まず最初に、低身長で受診すると、血液検査と手のX線検査、可能なら尿検査を行います。

血液検査では、甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、成長ホルモン(GH)、成長ホルモンによって作られるIGF-I(ソマトメジンC)を主に検査します。

手のX線検査は、骨の成長の程度を見るためです。骨は年齢に相当して成長しますので、骨の状態で年齢を判断できます。つまり、歴年齢より骨の年齢が遅れていると、低身長である可能性があるわけです。その骨の成長が遅れている原因を成長ホルモン以外にないかどうかをさらに検査することがあります。

成長ホルモンは夜間によく出ているので、朝一番の尿に含まれる成長ホルモンを検査します。

これらの検査は、主に検査会社に検体を送って測定するため、結果が出るのに1週間程度かかります。

血液中の成長ホルモンが低い時や、尿の成長ホルモンが低い時に、成長ホルモンの産生を促すと言われている薬物として、アミノ酸のアルギニン、クロニジン、血糖を上げるグルカゴン、血糖を下げるインスリン、L-dopaと言う薬、成長ホルモンを出すためのホルモンであるGHRPを体に入れて成長ホルモンの値を15分~30分ごとに測定します(これを成長ホルモン分泌刺激試験と言います)。この検査は2時間かかり、1日1回しか負荷試験はできませんので、別の日に別の成長ホルモン分泌刺激試験を行います。2つ以上の成長ホルモン分泌刺激試験が最低必要ですので、まとめて検査するために入院になったり、外来で2日以上かけて検査したりします。

低身長以外に、性発達早熟、性発達遅延、乳腺肥大などの症状がある時には、脳の下垂体と言う成長ホルモンなどを分泌している部分に異常がないかどうか脳MRI検査を行います。

これらの成長ホルモン分泌刺激試験は、X染色体が1つしかない女性であるターナー症候群、骨の形成が先天的によくない軟骨異栄養症、肥満を示すプラダー・ウィリ症候群、慢性腎不全などの場合は必要ありません。この場合、検査なしで、成長ホルモン治療が可能になることがあります。

低身長の治療

成長ホルモンが体に出ていないか、出にくい「成長ホルモン分泌不全性低身長症」と診断されると、成長ホルモンによる治療が始まります。成長ホルモンは主に週5回、皮下に注射します。注射が開始になると1年ごとに身長の伸びを見ていきます。ある程度、身長が伸びたら、中止になることもあります。

成長ホルモン分泌不全性低身長症での成長ホルモン治療、小さく生まれた子供への成長ホルモン治療は保険診療のため、3割は自己負担になります。高額であるために高額療養費(所得によって補助額が異なる)によって自己負担は減りますが、それでも高額です。自治体によって、年収による助成を受けたり、乳児医療制度などで負担を減らす方法がありますが、どこでも可能と言うわけではありません。

ただ、身長が-2.5SD以下などの条件があれば、小児慢性特定疾患事業による補助が得られ、年収に応じて自己負担はかなり少なくなります。ターナー症候群、軟骨異栄養症、プラダー・ウィリ症候群、慢性腎不全による低身長の場合は、小児慢性特定疾患事業による補助が得られます。

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