企業のIT活用/システム導入方法

クラウドコンピューティング活用のポイント(2ページ目)

車を所有せず皆で共有するカーシェアリングが登場していますが、コンピュータの世界でも「所有」から「利用」へ時代が移りつつあります。クラウドコンピューティング導入のメリットや課題についてみていきましょう。

水谷 哲也

執筆者:水谷 哲也

企業のIT活用ガイド

PaaS、IaaSでプライベートクラウドを構築する

クラウドコンピューティングの種類としてパブリッククラウド、プライベートクラウドという分け方もあります。パブリッククラウドとはパブリック(公衆)という名前がついているように不特定多数の利用者を対象に広く提供されるサービスでSaaSを指します。Gメールなどがこの形態になります。

プライベートクラウドとは自社システムをクラウド形式で構築したものでPaaSまたはIaaSを利用して作ります。例えて言うとパブリッククラウドは仕様に基づいて作られたマンション。間取りを変えるぐらいはできますが延べ床面積を増やすような改築はできません。プライベートクラウドは注文住宅ですので自分が思った通りに作れますが、凝れば凝るほどお値段はアップします。

クラウド活用のメリット

情報資源(リソース)を需要のピークにあわせなければならない

情報資源(リソース)を需要のピークにあわせなければならない

クラウドを活用する一番のメリットは自社で災害対策しなくてすみ負荷を軽減できることです。自社サーバーを所有するとサーバー室の耐震対策、高感度煙検知システムの設置、停電対策などいろいろなコストがかかります。
→ 災害時、システム機器の損傷予防 

自社サーバーで運用する場合、情報資源(リソース)を電力会社のように需要のピークにあわせなければなりません。正月やゴールデンウィークに処理が集中するのであれば、ピークにあわせた容量対策が必要です。つまりピーク時以外は情報資源(リソース)を余らせることになります。クラウド化すれば必要な時に必要な分だけ借りればよいのでピークにあわせる必要がなくコスト削減になります。

クラウドサービスは使った分だけ利用料を払う料金体系ですので自社サーバーのような初期導入コストは発生しません。クラウドを長く使っていると利用料が導入コストを上回りますが、リソースを業務のピークにあわせる必要がなく結果的にTCO(システムの導入、メンテナンスなどを含めたシステム運用にかかる費用の総額)が減少します。

クラウドでサービスの立上げをスピードアップ

エコポイントはPaaSを活用し3週間でサービスを立上げ

エコポイントはPaaSを活用し3週間でサービスを立上げ

クラウド活用のもう一つのメリットはシステム導入のスピードアップ。自社サーバーにパッケージを導入する場合、インストール作業や設定作業が必要で、すぐには使えません。SaaSを活用すれば手続きを終えればすぐ使えます。

自社サーバーに新規システムを導入する場合も同様でサーバーや回線などの仕様を決定し、見積もりしてから契約を行い、自社にサーバーを搬入、セッティングする作業が必要となります。PaaS、IaaSを活用すればシステムの申し込みをし、早ければ1時間以内に環境整備が終わり、立ち上げられます。外部環境がめまぐるしく変わる現代では経営に俊敏さが求められます。サービスの立上げが遅れることによって発生する機会損失をなくすには準備時間が少なくてすむクラウドサービスに利点があります。

省エネ家電普及促進のため行われたエコポイント・システムはセールスフォース・ドットコムが提供するPaaSを使って開発されました。従来型の開発手法なら何ヶ月もかかりますが、PaaSを活用し3週間でサービスを立上げました。

クラウドはスモールスタートができトライアル&エラーができます。自社システムを導入してみたが使い物にならなければ投資はムダになります。クラウドはやってみなければ分からない時代にマッチしたサービスです。PaaS、IaaSを活用し、まずは小さなシステムを作り、使い勝手にあわせてどんどん拡充することができます。
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