企業のIT活用/IT関連法律の注意点

下請法 公正取引委員会から調査票が(2ページ目)

公正取引委員会から『親事業との取引に関する調査票』という調査票が郵送で届きました。下請法が改正され情報成果物作成委託が新たに対象になったためです。どんな調査票だったかと言うと...

水谷 哲也

執筆者:水谷 哲也

企業のIT活用ガイド

調査票の目的

まずは注意書きがあります。『この調査の結果については秘密を厳守することはもちろん、貴社の取引先親事業者に知らせることは全くありません。』とあります。
親事業との取引に関する調査票
親事業との取引に関する調査票

また『下請取引の性格上、下請事業者から下請法に違反する疑いのある親事業者の行為について申し立てが期待できないことから、当委員会では下請取引の状況を把握するため、同封しております調査票による書面調査を定期的に実施しております。』と目的が記載されています。

これは「ファイト」の木戸バネ製作所を見ているとよく分かります。ヒロインのお父さんは仕事を発注してもらっている商社に立ち向かうドラマ設定になっていますが、通常は泣き寝入りするなど立場的に弱いのが下請事業者です。

反対に下請事業者は自社で営業活動をしなくても、親企業が仕事を発注してくれ、安定的に仕事ができたためそれに安住してきたのも事実です。

ただ社会構造が変化する中で、このままでは受注が期待できないと考え、経営者自らが慣れない営業活動をスタートし、商談会に出たりして新しい取引先を開拓する企業もあります。

調査票の中身は

調査票はA4用紙で6枚からなっています。1枚目には調査対象となる親事業者の名前が記載されています。下のほうに自社の住所や代表者について記載する欄があります。また親事業者への依存度(売上の何%か)、取引年数、具体的な委託内容を記載するところがあります。
調査票を記載する
調査票を記載する

2枚目から6枚目が取引に関する質問になっています。

2枚目の調査内容は「受注の都度、親事業者から注文等の交付を受けていますか」「親事業者の下請代金の支払制度はどのようになっていますか」という質問で、『書面の交付義務、支払期日を定める義務』を確認する質問になっています。

手形の場合は受取サイト(期間)についての質問もあります。例として120日という数字が出ていますが、2005年初旬に実施した東大阪商工会議所の下請企業動向調査で受取手形の平均サイトが115.3日になっていますので実態にそくした数字になっています。

3枚目以降は下請代金がどのような方法で決定したのか、発注内容の変更や取り消し、やり直しがなかったか契約に関する質問です。中には手形支払で約束していたのが現金支払になった時に金利が引かれていないか等、細かな質問もあります。
コンプライアンス経営
コンプライアンス経営

ITベンダーなどが見て何のことか検討がつかないような質問項目もあります。

有償支給原材料の代金支払や金型製造委託などの質問で、これは本来は質問票を製造業向けの製造委託・修理委託とサービス業向けの情報成果物作成委託・役務提供委託の二つに調査票を分け質問項目も変えるべきでしょう。

最後の6枚目に自由記入欄があり、調査対象項目以外の疑問点や例えば「親企業から調査票の写しを求められた」「親企業から記入について指示があった」等が書き込めるようになっています。

基本的には選択肢に○をして、数字を書くぐらいの作業でそれほどの負担はありません。ただし親事業者との取引で色々と問題がある場合は、理由などを書かないといけないのでこの場合はけっこう負担になります。

調査票の返送、その後は

ネットで公開されている答弁で1998年の書面調査結果についての情報がありました。

親事業者1万7千社、下請事業者10万社に調査票を送り、回答率が親事業者は80%だったのに対し、下請事業者は20%と低い数字になっています。原因として親事業所には法務部門など管理部門がきっちり答える体制が整っていること、下請企業では少人数で行っているため経営者自身に調査票に回答する時間がないのではと類推が掲載されていました。

もっとも調査票に『本調査票には、返信用の切手を同封することができませんが、御理解、御協力のほどよろしくお願いします。』とあり、これも回答率が低い原因のようです。

ただ郵送しなくても公正取引委員会のホームページにアクセスして、インターネットで回答できるようになっています。ZIP形式のファイルをダウンロードするなど少し面倒ですが、私はこちらで回答をしました。

公正取引委員会では、調査票から情報収集し、問題がありそうな情報が出てきたら、親事業者に立入検査や事情聴取をして下請法違反がないかどうか確認作業に入ります。

コンプライアンス経営へ

情報成果物作成委託、役務提供委託の親事業者は資本金1千万円を超える法人が対象となります。

ITベンダー等は今まで下請法と関係がありませんでしたが、法律が改正された以上、対応する必要があります。まずは取引を担当している担当者教育をしっかり行います。法律を知らなかったでは、すまされません。
 >> 違反となる事例はこちら

また調査票は無作為に抽出して送られますので来年の今頃はあなたの手元に届くかもしれません。

(参考)ガイド記事コンプライアンスって何?
経済キーワード超入門「よくわかる経済」横田さんのガイド記事です。

(参考)ガイド記事CSR(企業の社会的責任)とは
社会人の常識!?いまさら聞けない経済用語(6)「よくわかる経済」横田さんのガイド記事です。
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