住宅購入の費用・税金/住宅ローンのしくみと選び方

目先の住宅ローン金利に惑わされてはいけない(2ページ目)

住宅ローンの借り入れにはさまざまな費用がつきものであり、単純に金利だけで優劣が決まるものではありません。ユーザーからメールでお寄せいただいた失敗談をもとに、住宅ローン選びで気をつけるべきポイントをご紹介します。(2015年改訂版、初出:2006年4月)

執筆者:平野 雅之


住宅ローン保証料の違いがどの程度の金利に相当するのか

Sさんのケースは 2,700万円の借り入れに対して「約65万円と見込んだ前払い保証料が、フタを開けてみたら約130万円だった」というものです。この違いをどう受け止めるかは人によってさまざまなほか、そもそも高額の保証料を取られること自体に疑問を持つ人も多いでしょう。

しかし、資金計画にあまり余裕がなく手元に残すお金がもともと少なければ、資金計画の大幅な見直しや、保証料の前払いをやめて金利へ組み込んでもらう(当然ながら適用金利は高くなる)ことも検討しなければなりません。場合によっては、購入そのものの見直しもせざるを得なくなります。

それでは、Sさんのケースで約65万円の保証料の違いがどの程度の住宅ローン金利に相当するのかを試算してみましょう。

2,700万円を借り入れて35年返済とした場合、金利が 2.00%だとすれば(便宜上、固定金利でボーナス返済なし)総支払い額は37,565,198円です。これに65万円を足した38,215,198円に近い総支払い額となるのは金利が2.111%のときで、その差は 0.111%です。

それに対して、当初の見込みよりも多く支払うことになってしまった65万円を自己資金に充当し、住宅ローンの借り入れ額を少なくした場合はどうでしょうか。

2,635万円(2,700万円-65万円)を借りて35年返済とした場合(実際には10万円単位や100万円単位の借り入れになりますが、比較のため端数はそのままで)に、上記の総支払い額とほぼ同じになるのは金利が2.158%のときで、上記の金利(2.00%)との差は0.158%です。

少しややこしいのですが、結果的にSさんのケースでは〔金利2.00%+保証料130万円〕で借りるのと〔金利2.158%+保証料65万円〕で借りるのが、「当初の負担額も総支払い額も実質的にほとんど同じ」だということになるでしょう。


住宅ローンを借りるためには、他にもいろいろと諸費用がかかる

住宅ローンの金利が1%違えばその差は歴然としているでしょうが、0.1~0.2%程度の違いだったら本当にトクなのがどちらかは簡単に判断できないことがお分かりいただけたでしょうか。

保証料だけにとどまらず、保証会社の事務手数料、金融機関の融資手数料、火災保険、団体信用生命保険、ローン返済支援保険(任意)、あるいは将来的な繰上返済手数料や金利切換手数料など、さまざまな名目で住宅ローン借り入れのための諸費用が発生します。

それぞれの金額は金融機関によってまちまちなほか、団体信用生命保険やローン返済支援保険の保険料を金融機関側が負担するところもあれば、借りる側の負担となるところもあります。

諸費用を加えて総合的に考えれば、金利が0.5%高い住宅ローンのほうがトク、ということだってあり得るでしょう。

それ以外にも住宅ローン商品の特徴による違いがあるうえ、金利の変動要素も考えなければなりません。単純に提示された「金利だけ」で比較することはできないのです。


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