不安やイライラ…どうしたら良い? 妊娠中のメンタルケア

妊娠すると、急に涙もろくなったり不安が襲ってくるなど、心にも大きな変化が…。そんなときは自分の感情を上手くコントロールし、パートナーの協力を得ることも大切。穏やかな気持ちをキープする方法とは?

提供:バイエル薬品株式会社

お話をうかがった方

大美賀 直子

All About「ストレス」ガイド:大美賀 直子

メンタルヘルスの分野を中心に執筆するカウンセラー、ライター。精神保健福祉士、産業カウンセラー、キャリアコンサルタントの資格を持つ。現代人を悩ませるストレスに関する基礎知識と対処法を解説。ストレスやメンタルコントロールに関する著書・監修多数。

妊娠中に気持ちが不安定になるのは、女性ホルモンの変化が原因

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パートナーのちょっとした言動にイラッ。今までなら軽く流せたようなことでも引っかかったり、なぜか急に悲しくなって涙が出てきたり…。自分が本当にちゃんと母親になれるのだろうか? と大きな不安を抱える妊婦さんもたくさんいるといいます。でもこれらの妊娠中の気持ちの不安定は、そもそもどこからくるもの?

「妊娠中は、女性ホルモンの急激な変化によって気持ちが不安定になりやすくなります。いわゆる生理前のイライラと少し近いものがあるかもしれません。特に妊娠初期はつわりとも関係するhCGホルモンの分泌が急激に高まります。つわりの程度は人それぞれですが、こうした体調の変化も不安定な気持ちをもたらす原因のひとつといえますね。さらに妊娠の経過に伴って卵胞ホルモン(エストロゲン)、黄体ホルモン(プロゲステロン)も増えていき、妊娠前とはホルモンの状態が劇的に変化していきます。そのため情緒も不安定になりやすく、ちょっとしたことで感情的になりやすくなるのです」(大美賀さん)

誰もが感じる、妊娠中の不安…対処するには?

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たとえばFacebookやブログ、インスタ等のSNS上で目にする妊婦さん。誰もが幸せいっぱいに見えて、こんなに不安なのは自分だけなのではないか…と思ってしまうことも。

「そんなことはありません。誰もが妊娠中に感じるネガティブな感情変化の最も代表的なものは“不安”。お腹の子が無事育つか、といったものから、出産や産後に対する不安、お金や生活に関する不安、パートナーの愛情やサポートに対する不安、仕事の継続や職場復帰に対する不安、社会から取り残される不安など、挙げればきりがありません」(大美賀さん)

しかしながらこの“不安”という感情…、一体どうすればいいの?

「この不安定な気持ちは、妊娠という体の変化が引き起こしているもの、と考え、あまり感情に振り回されないようにしましょう。妊婦さんはどうしても家の中にこもりきりになりやすく、そのためにネガティブな感情が解消されない場合が少なくありません。イライラしたり不安が高まってきた場合には、運動を兼ねて外に出て、気分を変えてみましょう。

また、パートナーや友人に相談してみるのもいいでしょう。自分には深刻に思えることでも、他者の視点からはさほど深刻でもないことは多いもの。したがって自分ひとりで抱えず、気持ちを打ち明けてみることがおすすめです」(大美賀さん)

妊娠中にありがちなプチ喧嘩。どう対処すべき??

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妊娠中のメンタルの変化に伴い、気持ちに余裕をもつことができず、近しい人とは特に喧嘩になってしまうことも。どんなときどう対応すればいいのか?

おこりがちな3つのケースで、アドバイスして頂きました。

●CASE1:対パートナー
妊婦の大変さを理解していない、または父親になる自覚のないパートナーに対して、腹が立ってしまう…。
【ANSWER1】
「パートナーは妊婦の状態や感情の変化が直接的には分からないため、空気が読めない発言をしたり、気持ちに気づいてくれないこともあるでしょう。そうしたパートナーの状況をまずは理解すること、そして、感情的にならずに自分の状態や気持ちをその都度伝えていくことが大切です」(大美賀さん)

●CASE2:対母親
里帰り出産などで一日中一緒に過ごすことが増える時期。出産に対する緊張も重なり、身内ということもあって些細なことで口喧嘩に。
【ANSWER2】
「出産後は、実家の母親の力を借りる機会が増えていきます。その準備の意味も兼ねて、妊娠中に母娘の付き合い方、祖母としての孫への関わり方などをじっくり話し合っていきましょう。母親は、大人になった娘との適度なつきあい方がよくわからないのかもしれません。どのように接してもらうと助かるのか、逆に自分は母親にどのように接するといいのかなど、お互いの視点、希望を共有しながら一緒に考えていきましょう」(大美賀さん)

●CASE3:対上司や同僚
妊娠しながら勤務を続けているとき。上司や同僚からデリカシーのない発言をされ、ストレスに。
【ANSWER3】
「こちらもCASE1、CASE2と同様ですが、発言者は“相手の状況”、“相手の気持ち”をよく理解できないため、自分の価値観で失礼な言葉を言ってしまうのだと考えられます。失礼なことを言われたときには、自分の状況や気持ちを伝え、理解してもらうしかありません。上手く伝えられないなら、次回タイミングよく伝えられるように準備しておきましょう」(大美賀さん)

妊娠中だけじゃない、知っておきたい産後のうつ

妊娠中の不安定なメンタルとはうってかわって、出産後に起こるいわゆる“産後うつ”も少なくはありません。具体的にどんな症状が起こるの? その対策法とは?

「産後うつは、出産2〜3週間後くらいから生じるうつ症状。期間は1ヶ月から1〜2年ほど続く人もいます。産後の急激なホルモン変化に伴う体調変化、授乳や世話に追われての睡眠不足、急激な生活変化などが影響するといわれています。一日中憂うつな気持ちになる、家事や育児にスムーズに取り組めない、疲労感が取れないといった症状が続きます。真面目で完璧主義な人がなりやすいとされています」(大美賀さん)

もし産後うつかな? と思ったら、いちばん大事なのは無理をしないこと。何もかも完璧にしようとせず、優先順位をつけて取り組みましょう。

「産後はまず赤ちゃんのお世話が大切なので、それ以外のことはほどほどに。何もかも自分でやろうとせず、家族や子育てサポートなどの協力を得ていくことも必要です。ちょっとしたおしゃべりができる相手、気持ちがつながれる相手をもつことも大切ですね。また、深刻な場合は早めにメンタルの専門医を受診し、相談することも必要です」(大美賀さん)

実は栄養バランスの乱れが、気持ちの不安定をもたらすことも…!?

メンタルの変化はホルモンの影響が大きいものの、そればかりとは言えないことも。

「栄養バランスの取れた食事は、体調管理に役立ち、それがメンタルのサポートにもつながります。しかし、特につわりの頃は食事が進まないことも多く、栄養バランスが乱れがちに。また近年は体重増加を気にしすぎたり、もともと食が細いことなどから妊娠期の目標体重まで届かない“やせ妊婦さん”も増えているといわれます。このように必要な栄養をバランスよく摂取できていないと、妊婦さんの体調や気持ちの変化に影響を及ぼすだけでなく、胎児の発育に影響が表れやすくなります」(大美賀さん)

必要な栄養素は、サプリメントの力を借りるのも有効な選択

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妊婦に必要な栄養は、食事だけでカバーしようとすると、意外にハードルが高いもの。そんなときは、無理せずサプリメントでフォローするのがおすすめだそう。

「妊娠中に必要な栄養素をバランスよく摂取し、体調が整ってくれば不安定な気持ちもラクになるでしょう。胎児や妊婦さん自身の健康のためにも、サプリメントは上手に利用したいものです。また妊娠中、特に必要な栄養素として“葉酸”があります。妊娠初期に葉酸をきちんと摂取すると、神経管閉鎖障害(NTDs)という胎児の先天異常が生じるリスクを低減する可能性があります。しかし、葉酸は食事だけでは十分に摂取しにくいため、厚生労働省ではサプリメント等を利用して摂取することを推奨しています。葉酸は赤血球の形成を助けるため、妊娠期から産後を通じて、適量を積極的に摂取したい栄養素のひとつですね」(大美賀さん)

健やかなマタニティライフを過ごすためには、妊娠前から十分な栄養を摂取するよう心がけるようにしましょう。

>>赤ちゃんと自身の健康のために、バランスの取れた栄養素を