T・Eの違いは投資している銘柄構成の違い
トラッキング・エラーの違いは、ファンドの中の銘柄構成によります。基本的にベンチマークと同じ資産配分(銘柄構成)にすれば、TEは小さくなります。TEが小さいということは、パッシブ運用ということで、パッシブ運用の極致がインデックスファンドの利用です。そして、アクテイブ運用を志せば意図的に異なる資産配分(銘柄構成)を作り、その分だけ超過収益(アルファ)を狙いに行き結果としてTEが発生してきます。この数値を見ればファンドの特徴が分かりますし、逆に数値目標を持つことでファンドの特徴を作ることができます。日本の運用会社では、トラッキング・エラーを運用の自由度を図る指標として使っているところが多いようです。
T・Eにとらわれないアグレッシブなファンド
しかし、トラッキング・エラーにとらわれないで運用するというアグレッシブなファンドもあります。たとえば、JPモルガンのJFザ・ジャパンというファンドですが、設定来の超過収益が66.7%なのですが実績トラッキング・エラーは4~25%と小さくありません(ファンドとTOPIXの月次リターン格差のばらつきが最小で4%、最大で25%の時期があった)。このファンドの銘柄構成の特徴は、ベンチマークの構成比を参照しないということです。つまり、自由な発想により独自のシナリオの元に銘柄構成を創造しています。このようにアクテイブなファンドマネージャーには、トラッキング・エラーを目標として運用をすることは超過収益をあげることの障害となると感じているはずです。ベンチマークに潜む偏りや歪みを発見して、あえて異なる配分を作るので、トラッキング・エラーは自然と大きくなります。
とはいえ、運用会社としては、結果として出てくるトラッキング・エラー値を運用評価のチェックポイント(ファンドマネージャーの評価基準)としていることでしょう。ただ、TEを目標として運用することと、結果としてチェックされることは、運用スタイルとしてまったく異なることとなります。
さて、トラッキング・エラーのお話、いかがだったでしょう?少し難しいと感じた人は、具体的な投資信託を題材にして証券会社に聞いてみるとよいでしょう。
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