転職するとき失業保険はどうする?
失業給付金を受け取るとお得な気持ちになりますが、長い目で考えると実は損しているかもしれません。 |
特に就職氷河期になんとか見つけた職場に就職をしたものの、あまり待遇がよくないと感じている人などは、今まで積み上げてきた知識と経験を武器に、キャリアアップを図ってみることを強くお薦めします。
総務省の労働力調査によれは、転職をして「前職より年収が上がった」という人が増えているそうです。すばらしいことです。景気の回復や人材難に伴い、転職により収入を増やすチャンスは確実に増えているようです。転職エージェントの存在も皆さんにとっては追い風です。
転職エージェント会社はあなたを雇ってくれる新しい会社から「あなたのキャリアアップした年収の○割」をもらう、といった契約になっていますから、できるだけ高い条件であなたの仕事が決まることに必死になってくれるのです。これもぜひ利用してみるといいでしょう。
さて、転職とマネープランについては、いくつかのポイントがあります。たとえば、転職に伴って年収が増えても貯金を増やせない、といった現象はよく見られます。せっかく増えた年収をそのまま生活費に回してしまうから起きる現象です。こうした人はいくら年収が増えても貯金できないタイプですから「年収が増えたら貯金をしよう」と考えず、体質改善をはからなければなりません。
(参照→キャリアアップ後はケチになれ?)
(参照→キャリアアップしたら金がない?)
また、転職したときもらった退職金を使い切ってしまうのも大問題です。一つの会社に勤め上げれば数千万円の資産が老後の支えになったところを、途中で取り崩してしまうわけですから、絶対に使わずに残しておいてほしいのです。しかも増やす努力もしなければなりません。
特に401kでは自分の老後資産を引き継いで持ち運べる仕組みになっていますが、手続き忘れのため凍結されている例が多く見られます。こちらもぜひちゃんと引き継ぎを行ってほしいものです。
(参照→転職するときは401kを忘れずに!)
他にもらえるものとして「失業保険ももらいたいな」と思う人もあるでしょう。もらえる給付であればもらうに越したことはありません。しかし、残念ながら転職する人は失業保険をもらうことを考えるべきではありません。それよりも、辞める会社の有給をきちんと使い切って辞めることをお薦めしたいと思います。今回は「失業給付はもらわずに有給を使うべき!」理由をご紹介したいと思います。
自己都合で辞めたときは失業給付をもらうのはタイヘン
「退職したら失業給付もらえるんでしょう?」なんて簡単に思っていませんか?失業給付をもらうのは、実はけっこうタイヘンなのです。制度を確認してみましょう。失業給付というのは「仕事を辞めて、新しい仕事を探している人に支払われるもの」です。つまり、「すでに仕事が決まっている人はもらえない」というのが原則です。「転職先はもう決まっているけど、間を空ければ失業給付をゲット!」という方法は通用しないというわけです。これは初めての転職希望者の多くが勘違いしている部分です。
次に、失業給付は辞め方によって、すぐもらえない場合があるということです。具体的にいえば、リストラ等で会社都合で辞めさせられた場合(あるいは会社が倒産した場合)と、自己都合で辞めた場合はもらい方ともらえる金額が異なるのです。
会社都合で辞めさせられた場合は割とすぐもらえます。退職後7日間をすぎれば雇用保険の給付対象になりますので、ハローワーク(職安)にいって手続きをすれば受給開始になります。もらえる期間も長く設定されています。
とはいえ、会社都合で辞めさせられた場合、のんびり失業給付というわけにはいきません。たとえば「90日あるから、45日休んで残り45日で仕事を見つけよう」と考えることができるでしょうか。おそらく休んでいる期間は落ち着かないでしょうし、残り45日で仕事が見つからなければ完全に無収入になってしまいます。ちょっとお薦めできるものではありません。辞めさせられた場合はすぐに就職活動をしたほうがいいと思います。
自己都合で辞めた場合はもっとタイヘンです。自己都合退職者はリストラなどに遭った人と異なりますので、もらい始めるまでにずいぶん待たされるのです。具体的には3カ月の制限期間が設けられており、待期7日+自己都合のための制限期間3カ月+最初の振込までの期間4週間と考えると、実質4カ月は無収入になってしまうのです。
また、自己都合退職者はもらえる期間も短くなっておりますので、やはり「失業給付で暮らしてその後就職活動」という選択肢には向いていません。結論としては、「失業給付をもらってから転職」というのはあまり現実的ではないと思います。
がっかりしたあなたに、その代わりに1カ月分、お休みして収入が手に入る「有給消化」についてお話しましょう。
むしろ有給消化をゲットしよう!
失業給付よりおすすめしたいのは有給消化です。おそらくほとんどの人は中途退職する時点で有給休暇がたっぷり残っているのではないでしょうか。毎年使っている人であっても有給休暇は毎年度チャージされる仕組みになっていますので、20日前後の有給を残している場合は多いものです。また、新しい会社に入ったら、しばらくの間は有給も消化できずに仕事に専念しなくてはならないでしょうから、できれば前職と新しい仕事との間で少しリフレッシュする期間も作っておければいいですよね。でも、無給で間を空けてしまえば、その分は持ち出しになってしまいますので、家計としてはあまり好ましくありません。
そこで、上手に工夫をして退職日を調整してみてはどうでしょうか。新しい会社への入社日を少し遅らせて、業務の引き継ぎが完了する日と有給をすべて消化する日を加えた日を退職日とするのです。
つまり「事実上の退職日(引き継ぎを終えて出社しなくなる日)」と「真の退職日(有給を使い切った日)」を分け、「真の退職日」の翌日を新しい会社の入社日とするのです。こうすれば、給料は辞める会社からもらえるのに、しばらくリフレッシュのお休みが取れるということになるわけです。
たとえば、20日有給が残っていれば、平日5日間×4週間分ですから、ほぼ1カ月休めることになります。ちゃんとお給料をもらえますし、会社が負担する分の社会保険料等も同様にもらえます。
いってみれば働いていないのに1カ月分退職金を増やすようなものです。なかなかお得ですね。1カ月もリフレッシュできれば、おそらく十分な気分転換になるでしょうし、もし引き継ぎがうまくいっていなかった場合は1日くらい出社して引き継ぎを万全なものとすることもできます。
ただし、有給消化を実現するためには、「辞める会社と新しい会社、それぞれと交渉する」ことが必要になります。まず、辞める会社については円満に辞める工夫が必要になります。なぜなら険悪な関係で辞める場合、あなたが有給消化を申し出ても会社は嫌がって認めてくれない可能性があるからです。
もちろん法律上は権利を有していますので、主張してもかまいませんが、辞める時点でさらにこじれてストレスを抱えるのもあまりお薦めできません。無理のない程度に有給を消化するほうがいいでしょう。
次に、新しい会社との交渉です。新しい会社がすでに決まっている場合、できるだけ早くあなたに入社して欲しいと希望するのが普通です。そこを「1カ月待ってください」というわけですから、きちんと理由を説明しなくてはなりません。
リフレッシュすることで新しい会社の業務に集中できるようにしたいと正面から説明するのもよし、有給休暇を消化することを内緒にして、単に真の退職日だけを新しい会社にするのもよし、そこはあなたの工夫次第。がんばってみてください。
なお、有給消化中はまだ前の会社の社員ですから、有給消化中に新しい会社の新入社員になることは基本的にできません(不可能ではありませんが、かなりややこしいことになります)。有給を消化しながら、新しい会社の給料ももらおう、ということはあまり考えないほうがいいでしょう。
雇用保険より、有給消化。私のお薦めはこちらです。ぜひ、有給消化のチャンスを上手にゲットしてみてください。
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