第四に見直すべきは、行政間の連携でしょう。国の年金のデータを持っているのは社会保険庁であり所管は厚生労働省です。一方、最新で確かな住所データである住民票のデータを持っているのは市区町村であり住基ネットは総務省が所管しています。しかし社会保険庁の住所データが古いものであった場合に、両省庁間で情報のやりとりを行う体制は十分でなかったようです。おかげで、社会保険庁がせっかく年金に関する書類を送っても未着になるケースがあったようです。
このあたりはむしろ住所データを別個に保有するのではなく一元的な管理ができないのかと思います。問題意識が高まったこうした機会を好機ととらえ、対応をしていただきたいものです。何よりきちんと住所地に案内が届くことは個人にとって大きなメリットであることは間違いありません。
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私は「申請主義」がおかしいというのはおかしい、と思っています。税金の還付を受けたい人は自ら確定申告をしなければならないように、年金を受けたい人は自ら裁定請求書を書き提出しなければならないと思います。
しかし「申請主義の前段階」は確かにおかしいことだらけであったことは間違いありません。特に加入履歴データの管理の不正確さを認めないお役所仕事には憤りすら覚えます。ここさえ謙虚であれば、これほどのトラブルにはならなかったでしょう。また、住所データについて正確性を社会保険庁自ら保持しなければいけないのかについては疑問を感じます。
でも、それで申請主義が破綻したと結論づけるのはあまりにも性急すぎるのではないでしょうか。仮に申請主義を放棄するのであれば、我々は完全なる国民総背番号制を確立し、自らの振込口座なども国に開示しなければなりません。もちろんそういう未来が求められているのであればそれも議論の一つでしょうが、申請主義の批判とセットにするにはあまりにも軽率な議論に思えます。
本来は自分の加入している制度や手続きを自分が知っておかなければならない。そして必要に応じて行政を監督していかなければならない。そうした視点も欠けていたように思います。それが、私たちが今回の年金「申請主義」問題で学ぶべきことなのかもしれません。
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