第3号被保険者という不思議な存在が誕生した理由
「第3号被保険者」とは「被用者年金被保険者の被扶養配偶者」のことです。といっても何のことやらサッパリという感じです。簡単にいえば、「会社員・公務員の配偶者で専業主婦(夫)である人」のことです。第3号被保険者という区分は、国民年金の保険料を納める必要があるかないかを決めるものです。自営業者など自ら国民年金保険料を納める人を第1号被保険者、厚生年金に加入している会社員や共済年金に加入している公務員(保険料に国民年金分が含まれる)などは第2号被保険者と呼ばれます。
第3号被保険者に該当するかはとても大きな違いです。というのは基本的には毎月14410円の国民年金保険料を自ら納めなければいけないところ、第3号被保険者であれば、国民年金保険料はゼロ円ですむからです。年間17万円の違いですからこれは大きい。
さらに、第3号被保険者の配偶者(夫等)は厚生年金や共済年金に加入しているわけですが、彼らの保険料が高いわけでもありません。第3号被保険者の場合、その配偶者が加入している厚生年金制度、共済年金制度の全体でまとめて保険料を負担しているからです。つまり文字通りタダで国民年金に加入していることになるのです。
このような不思議な仕組みが誕生したのは1986(昭和61)年のこと。まだ20年くらいしか経過していない制度です。それまでは、専業主婦が国の年金制度に加入するのは任意でした。夫の年金があれば夫婦が暮らしていける、という考え方だったからです。しかし、年金も個人単位で考えていかなければならないという整理のもと、国民は全員何かの年金制度に加入することになりました。しかし、いきなり保険料を義務づけるのでは加入しない人が多くなってしまい、意味を成さないおそれがありました。
そこで、当時の事情を考慮して作られたのが第3号被保険者という仕組みだったというわけです。当時はうまく考えられた、よい仕組みだと受け入れられていました。しかし20年という時間はいろいろな前提を変えてしまうものです。この制度も例外ではありませんでした。
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