8人吉温泉 たから湯
完璧な宿、浴槽、湯
たから湯は印象的であった。人吉温泉の発祥の地で、最も古い一角なのであろう。温泉町という地名である。となりは老舗の翠嵐楼である。この湯は公衆浴場として開放されているが旅館の内湯である。新築の木造旅館で以前は写真でしか知らないが、改築後素晴らしい浴室、浴槽と宿になった。さらに湯も良く完璧な温泉として存在していた。46度の含食塩重曹泉で総計1197mgの薄いものであるが自噴掛け流しで個性もある。瀟洒な木造建築で玄関は広い板敷きで奇麗に磨かれている。浴場は玄関前すぐにあり扉を空けて入るが、空けてみると思いもよらない大きな空間があった。立派な欄干手摺のついた階段があり遥か下方に浴槽が見えた。木の浴槽に木の床で壁が御影石である。本当に良いものを目指して長年にわたり使用するために建築した、という思いが一瞬にして伝わってくる良い造りの浴室である。浴室のみ見てこれほどのインパクトを受けたのは数少なく、金谷旅館の千人風呂や武雄の殿様湯以来であった。壁に古くからあった分析表を掲げてあり風情を増していた。名湯は下に下れという感じで下って行くと自噴掛け流しのやや熱めの湯があった。HSを0.6mg含有し透明、少たまご味、弱い油臭であった。中神温泉の硫黄臭やしらさぎ温泉の油臭も持ち合わせている湯であった。入浴していると階段や高い天井の造りが良く見え開放的である。入浴後に良い芸術作品を鑑賞した後にあるような感慨があり最高の評価としたい。
9人吉温泉 筌場温泉
舟の露天風呂が面白い
人吉郊外にある田の中の公衆浴場付きの宿。好い湯であるが個性が少なく清澄なものである。総硫黄が1.7mgあるので単純硫黄泉となるがこの施設自身も単純硫黄泉と思っていないようだ。というのも硫黄の個性はほとんどなく透明、無味、無臭の湯であった。44.6度の単純泉で総計933mg HS1.2 H2S 0.5であるが硫黄分は源泉からは感知できなかった露天風呂が面白く舟の浴槽である。熱い湯を弱く掛け流しにしている。
10涼水戸温泉
人吉でも外れの郊外にある温泉。43.3度の含重曹芒硝泉で総計1938mg、色付きの温泉で好い。民家のような外観で大きな岩のある木の縁の内湯と大きな飯を炊く釜の風呂が露天風呂になっている。弱く掛け流しになっており小さな浴槽なので人が入るとその分だけドッと溢れる。薄い白濁、少苦味、少薬臭と観察した。
11華まき温泉(再訪)
本日絶好調。泡まみれ
この温泉も人吉中心部からの郊外に外れたところにある温泉。以前夜に少し立ち寄って結構好い記憶になっているので再訪した。34.9度の純重曹泉で総計1916mg 特記成分はHSの0.7mgとCO3の12mgでそれほどの数値ではない。透明、重曹味、無臭で個性も少ないが今日は暖かく加熱が少ないので源泉が新鮮であった。さらに入浴客が不在で私一人であったので浴槽の湯が全くかき混ぜられることなく長い間掛け流しされている状況であった。そのため入浴すると一気に飽和状態の気体成分が産毛に気化し素晴らしい泡付き状態になった。しかし気泡が大きくなるタイプではなく微細な気泡で終わるのでそれほど多いとも思われない。透明の清澄な湯でもこのように楽しい入浴感をもたらせてくれる温泉は記憶に強く残る。源泉一本一本違い、なにかの個性を感じることが出来ると温泉を廻っていて楽しいなあと感じることができる。そんなことを思わせてくれる温泉であった。
12中神温泉
硫黄臭、掛け流し多し、泡付き
新築ながら人吉マップの最新版にすでに登場していた。
筌場温泉のすぐ近くにある温泉。新築の共同湯で木造の瀟洒な造りである。筌場温泉の後に訪れたがまだ開いておらず涼水戸温泉、華まき温泉に行きその後に再訪した。男女とも四角い素っ気無いタイル浴槽が1つあるのみの簡素な施設ながら湯が大量に掛け流しされており素晴らしい。清澄な単純硫黄泉であろう。透明ながらはっきりとしたたまご味と弱い硫黄臭がある。これこそ温泉の醍醐味であろう。これなら源泉掘りたての時に使うノッチタンクに匹敵する掛け流し量である。源泉を使い切るという潔さを感じ、ゆりの山温泉を連想した。当然弱いながらも泡付きも見られた。新築の一般的建築で特記するべき点もない施設ながら温泉は良い。泉質もまあまあである。良く湯量と温度がこのように利用されるのに充分であったことか、絶妙である。実はこれが温泉の一番良いことで、また貴重なものである。温泉は湯が良いことが一番である。この温泉は湯以外のことを考えずに、充分に湯の良さだけで納得してしまう温泉本来の良さがあった。
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