家の後ろの路地から、シャンシャン、パァパァと、銅鑼やチャルメラの音が聞こえてきた。その音に誘われるまま見に行ってみると、トラックが舞台の人形劇が上演されているではないか。おじさん一人が両手に人形をはめて、派手なBGMで立ち回り。見物人に訪ねると、「これは、”ぽてひ”ってんだ」。ぽてひ、そう、これが台湾人形劇の「布袋戲」だ。
<台湾の人形劇>
台湾には、大きく分けて3種類の人形劇がある。布袋戲(指人形劇)、懸絲傀儡戲(操り人形劇)、皮影戲(影絵の劇)だ。今回紹介するのが布袋戲で、台湾語の発音はぽてひ。ちょっと気になる響き。
<布袋戲って何?>
布袋戲は、中国・泉州で明代の頃、科挙の落第生たちが当時の政治など風刺を人形を使って代弁させたのが始まり。それが清代に民間の娯楽として発展してきたもの。傀儡戲(操り人形劇)の変化したものとも言われている。布を袋状に縫製した人形なので「布袋」と呼び、また、人形使いが持ち歩く際に人形の頭を裏側にひっくり返して袋として携帯したため「布袋」ともいい、またの名を、手のひらで操るため「掌中戲」ともいう。
<いつ頃台湾へ? 現在はどんな感じ?>
明代の終わりから清代のはじめ頃、福建省で盛んだった布袋戲を、中国の人形使いや台湾から中国へ渡って習得した者が台湾にもたらした。初めのうち、劇中のBGMは南管音楽(銅鑼、南胡、笛、琵琶など)であったが、その後、北管音楽(南管よりも激しい)、外江派音楽とバリエーションに富んできた。現在では、西洋音楽や京劇、日本の音楽などを取り入れ、また、三国志などをアレンジしたストーリーや連続ドラマ仕立てなど、派手な内容の布袋戲が主流になってきている。
かつては、野外で上演されるのが普通のことだったが、1952年、政府による「例行節約、改善民衆」政策によって、屋内の舞台のみの上演となった(=内台布袋戲)。今では、お寺などにトラックがやってきて気軽に無料で見ることもできる。
←舞台裏で忙しく人形を操る人。いろんな人形が用意されている(左側)
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