サミンガは、存在感があります。空気が彼女に集まっていく感じでした。
サミンガは、台湾先住民のプユマ(卑南)族(台東の南王村出身。台東の空港から車で20分ほど)。サミンガという名前の意味は、プユマの言葉で「ただひとつだけ」。「ただひとつだけの声を持つ太陽の歌姫」と称されていますが、私が受けた印象は「ただひとつだけの空」というものでした。
中国名は紀曉君ですが、サミンガといった方がご存じの方も多いのではないでしょうか。彼女が今回来日して、東京でライブを開いたのが6月28日でした。この前日27日にはファンが集まってのプレイベントが東京・中野サンプラザ・8F研修室で行われたので、私も両日参加しました。
サミンガは今年23才の女性。歌う時は長い黒髪を三つ編みにしていますが、普段はワンレングス、大人っぽい女性です。
左:サミンガ 中央:小陸 右:通訳の蔡さん
彼女は、台湾の金曲賞(ゴールデン・メロディー・アワード:日本のレコード大賞に相当)で最優秀新人賞に輝いたばかりです。(「台北週報(元・中華週報)」1954号 2000.5.18)
それから、8月には2枚目のアルバム「野火(予定)」も発売予定とか(ファーストアルバムは「太陽 風 草原的聲音」)。そんな彼女は、歌手の他にも美容師の資格を持っているとはちょっと驚きましたが、今は美容師にはならずに、プユマ族に誇りをもって、大好きな自分達部族歌を歌っているそうです。台湾の音楽シーンにおいてもプユマ族の言葉でプユマ族の民謡や伝統の歌を歌うというスタイルを通してたくさんの人にプユマの歌をきいてもらいつつ、これからはプユマ族の現代風の歌や北京語の歌も歌っていくとのことです。そんなプユマ族の歌の特徴は、優雅で優美なものと楽しいものともいえます(ちなみに、ルカイ<魯凱>族の歌は寂寞な感じが多い)。サミンガは、おばあさんの修花さんやお爺さんの明男さん、他のおばさんらから代々伝わる部族の歌を、耳で聞いて覚えるようです。こうして歌は次の代へと継がれていくのです。
部族の言葉を通して、精神、文化を表現し、台湾本土を表現するために歌っている彼女は、聴衆との距離をできるだけ短くおきたいと考えて、距離感のあるコンサートよりも小さいな会場で歌うことが好きだそうです。
東京の印象はときかれると、台北よりも空気がきれいだし、水道の蛇口をひねって直接水が飲めるのもうれしいと。あとはおいしい食べ物がたくさんあると言って笑っていました。
この日は、バンドのメンバーであるVunkiatt Kataddepan=ブンキャ・カタダパン(通称:小陸)さんも同席。彼もプユマ族出身のミュージシャンです。実は、彼の奥さんは日本人女性。私も知り合いですが非常に感じのよい清清しい人です。結婚当時は、先住民に嫁いだ日本人女性として、ちょっと話題になっていました。
この会場に、台湾で少年時代を過ごしたという日本人のおじいさんがいらしていました。おじいさんは、台北にあった高等学校(当時)の寮歌祭(文化祭)で、プユマ族の歌を歌って踊ったそうです。その歌を歌いはじめると、サミンガや小陸までもが合唱を始めました。♪ピーノーデーヤン グーターヤン アーロー ワンナイ ナーヤーオー オーワイヤー♪という歌、日本の民謡に似ているメロディーでした。するとサミンガが、「民謡と呼ばれている歌は、世界どこでもどこか通じているものがあるように思う」と発言を。ん、なるほど。
さて、このプレイベントの最後は、サミンガと小陸によるプユマの歌で終わりました。台湾の先住民は、歌も踊りも本当に長けており、日本のその辺の歌手なんて目ではありません。2人はアカペラでハモりましたが、その声量もさることながら、声の存在感の恐ろしいこと。鳥肌がたちました。これは、次の日のライブ、楽しみです。
ライブの模様は次のページに。