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ロシア元スパイ怪死と、諜報機関の真実

2006年11月にロンドンで起きた、元ロシア諜報部員の怪死事件。スパイ映画さながらの謎解きドラマが、目の前で展開されています。今回は、あなたの知らないスパイの世界、あっと驚く意外な事実をご紹介!

朝霧 まや

執筆者:朝霧 まや

イギリスガイド

文章:吉田 摩弥(All About「ロンドンで暮らす」旧ガイド)

2006年11月にロンドンで起きた、元ロシア諜報部員の怪死事件。スパイ映画さながらの謎解きドラマが、目の前で展開されています。今回は、あなたの知らないスパイの世界、あっと驚く以外な事実をご紹介!

元ロシア諜報部員の怪死事件、真相はどこに……?

The Independent
リトビネンコ氏の葬儀を一面で伝える新聞。事件発覚以来、報道が途切れることはありません
この事件は、日本のメディアでも毎日のように報道されていたので、よくご存知の方も多いかもしれませんね。元ロシア諜報部員だったアレクサンドル・リトビネンコ氏が何者かに毒(放射性物質「ポロニウム210」)を盛られ、3週間あまりの闘病生活の末に亡くなったという事件です。亡くなる数日前には、髪の毛が抜け落ちて衰弱しきったリトビネンコ氏の写真も公開され、その変わり果てた姿に衝撃を受けた方も多いでしょう。

リトビネンコ氏はロシアの諜報機関KGB(現FSB)を引退後にイギリスに亡命し、イギリス国籍を取得。ロンドンを拠点に痛烈なプーチン大統領批判を展開してきました。このような背景から、今回の事件はプーチン政権が黒幕ではないかとの疑惑が発覚当初からささやかれていますが、真相はいまだ闇の中です。

12月7日の葬儀を前にして、ロンドン警視庁は捜査を「不審死」から「殺人」へと切り替え、本格的な犯人究明に乗り出しました。ロンドン警視庁からはテロ対策チームが捜査にあたり、英国内務省の防諜機関で国内の治安を担当する「情報局保安部(Security Service:通称SS)」、英国外務省の対外諜報機関「情報局秘密情報部(Secret Intelligence Service:通称SIS)」も捜査に加わっています。

事件関係者が立ち寄ったと見られる場所からは、次々と放射性反応が検出されています。ロンドン市内のみならず、飛行機の機内、さらにはモスクワやドイツのハンブルクと広範囲にわたっているほか、FBIも捜査に協力するなど国際的な広がりを見せはじめています。

ロンドン市内では、多くの人が訪れるホテルや寿司バー(チェーンの回転寿司)で強い放射性反応が見られ、さらにリトビネンコ氏がロシア人ビジネスマンらと面会したホテルの従業員10人にポロニウムの感染が確認されました。しかし「一般の健康には影響はない」と繰り返し報道されているせいか、ロンドン市民の反応はいたって冷静で、パニックは起きていないようです。

ジェームス・ボンド映画を連想させる展開

さて、この事件のカギとなる放射性物質「ポロニウム210」は、皮膚からの摂取は不可能。リトビネンコ氏のような症状が出るほど大量に摂取するには、直接吸引する・飲み込む・傷口などにすり込むなど、限られた方法しかありません。おそらくドリンクに混入していたのではないかという見方が強いのですが、一体誰が、どのようにして実行したのかは、謎につつまれたままです。

おりしも、スパイ映画の代名詞ともいえる「007」映画の21作目「カジノ・ロワイヤル」が公開されたばかり。もう映画を見た人ならお分かりの通り、今作品では、ジェームス・ボンドが毒を盛られて危機一髪! というシーンがあります。これを見て、今回の毒殺事件を連想した人は、決して少なくないでしょう。

次のページからは、ジェームス・ボンドとイギリスの諜報機関のイイ関係(?)を。
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