世界遺産にも登録されたイギリス湖水地方

2017年、ユネスコの世界文化遺産に登録された、イギリス湖水地方。絵本ピーターラビットの作者ビアトリクス・ポター(1866-1943年)や詩人ワーズワースなどの文豪が愛した、英国カンブリア地方の「レイク・ディストリクト」と呼ばれる一帯をさしています。
ピーターラビット

ピーターラビットの故郷 世界遺産のイギリス湖水地方(c)kosuichihou.com


絵本の挿絵と寸分違わない建物や自然風景が広がり、山歩きの格好をした旅人たちが往きかう美しい世界。フットパスが至るところに整備され、老若男女がウォーキングを楽しんでいます。

ナショナル・トラストとイギリス湖水地方

ナショナル・トラストとは、1895年に発足した民間の非営利団体をさし、正式名称は、「歴史的名所や自然的景勝地のためのナショナル・トラスト National Trust for Places of Historic Interest or Natural Beauty」といいます。ナショナル・トラストは、単なる環境保護活動だけが目的ではありません。歴史的建造物はもちろん、イギリス国内の著名な庭園や自然保護地区などがナショナル・トラストの所有になっています
ボウネスピアとウィンダミア湖

湖水地方の景観を守るナショナル・トラスト。湖水地方最大の湖・ウィンダミア湖とボウネス・ピアの光景 (c)kosuichihou.com 


その設立や活動を支援した一人に、ピーターラビットの作者ビアトリクス・ポターがいます。

ビアトリクス・ポターが描いたピーターラビットの絵本初版は、どこの出版社も取りあわず、自費出版でした。ですが人気がではじめると、彼女はその売上で湖水地方一帯を少しずつ、自己所有するようになります。鉄道敷設や過度な観光開発もなく、産業革命の波を受けずに、今に続く美しい景観を守り抜いたのは、そうしたポターの働きかけがあったから。ポターは没後、遺言で、全ての資産をナショナル・トラストに寄贈しました。現在、湖水地方の3分の1以上がナショナル・トラストの所有地です。

<INDEX>
イギリス湖水地方のベストシーズンは?
ピーターラビットの人気関連スポット
イギリス湖水地方へのアクセスとツアーの選び方
イギリス湖水地方のホテルの選び方


イギリス湖水地方のベストシーズンは?

イギリス湖水地方は「一日のなかに四季がある」といわれるほどで、天気が目まぐるしく変化します。夏であっても重ね着できるトレーナーやカーディガン、撥水性のあるウインドブレーカーや雨具が必携です。湖上は紫外線が強いので、サングラスを。冬場はしっかりとした防寒具や登山靴、アイゼン、厚手のセーター、手袋などを準備しましょう。

夏の英国湖水地方
ローウッドベイのマリーナ

夏は湖水地方のベストシーズン 湖岸に佇む老舗ホテル ロー・ウッド・ベイのマリーナ(c)kosuichihou.com


北海道よりずっと北に位置しているので、真夏でも涼しいのが特徴で夏はベストシーズンです。避暑を目的に、家族連れの英国人もたくさん訪れます。ホテル料金もぐっと高くなり、湖上のクルーズ船も混雑します。お得に泊まるためにも、ホテルは早めに予約するようにしましょう。特に湖周辺のホテルは、眺望によって料金が異なります。コンビニエンスストアはないので、町なかのスーパーやグローサリー店で食材を調達しますが、ホテルによっては冷蔵庫がない場合もあります。8月の最高気温は19度前後、最低気温は10度前後です。

冬の英国湖水地方
Honister Slate Mine

10の湖めぐりツアーで立ち寄る石切場ホニスター・スレート・マイン


冬は北海道に比べると、ずっと暖かく感じるはずです。フットパスが至るところに整備されている湖水地方は冬でもウォーキングを目的に、山歩きの格好をした人たちが往きかいます。真冬は日中でも寒く、荒天で雪や雨に見舞われると氷点下になります。ローカルバスや鉄道が運休することもしばしばなので、余裕をもったスケジュールにしましょう。観光施設のなかには、冬の期間は休業もしくは営業時間を短縮させる施設が珍しくありません。また、現地発着ツアーも冬場は催行しないものが多いため、注意してください。2月の最高気温は5~6度、最低気温は氷点下1度程度です。ホッカイロと厚手の靴下も忘れずに。

ピーターラビットの人気関連スポット

2018年5月、日本公開予定のハリウッド映画『ピーターラビット』をご覧になれば、きっと今すぐにでも湖水地方へ行きたくなるはず。湖水地方はピーターラビット生誕地で、関連するスポットもたくさんあります。

▼ヒル・トップとニア・ソーリー村
ヒルトップ

暖炉や食器棚まで絵本の世界そのままのヒル・トップ(c)kosuichihou.com


作者ビアトリクス・ポターが実際に住んだコテージ ヒル・トップは、ニア・ソーリー村の東端に位置します。ピーターラビット『こねこのトムのおはなし』などに挿入された絵柄と、まったく同じ風景が広がります。ヒル・トップは入場制限があります。夏の混雑するときは早めに向かうようにしましょう。入場予定時刻を知らされるので、それまではニア・ソーリー村を散策して過ごしてください。ヒル・トップは、クリスマスシーズンから2月中旬の冬季は閉鎖します。ショップは年中無休ですが、それでも冬は不定期で休みになることがあります。

場所は、ウィンダミア湖の湖畔の町ボウネスからフェリーで対岸へ渡り、バス525番に乗車してヒル・トップ入口で下車してください。

▼タワー・バンク・アームズ
タワーバンクアームズ

ニア・ソーリー村唯一のパブでも知られるタワー・バンク・アームズ(c)kosuichihou.com


『あひるのジマイマのおはなし』にも登場する、ニア・ソーリー村唯一のパブがタワー・バンク・アームズです。地ビールのほかフィッシュ&チップスやパイなど自家製料理が味わえます。著名人が数多く訪れていることを物語る壁一面の写真など、ぜひ訪れたい名所です。

▼ビアトリクス・ポター・ギャラリー
湖水地方最大の湖・ウィンダミア湖と、その西方のコニストン湖の間にある村・ホークスヘッドの博物館がビアトリクス・ポター・ギャラリーです。ポターの遺品や原画、写真などが収蔵されています。ピーターラビット『パイがふたつあったおはなし』などの挿絵になった風景を、実際に感じられます。ここはポターの夫ヒーリスの、弁護士事務所だった場所。周辺にはカフェやレストランもあり、村全体が博物館のような場所です。

▼ビアトリクス・ポターの世界 The World Beatrix Potter Attraction
ポターの世界

ピーターラビットのアトラクション施設「ビアトリクス・ポターの世界」


リアルな雰囲気のピーターラビットとその仲間たちが迎えてくれるアトラクション施設が、ビアトリクス・ポターの世界です。場所はボウネスの町なかで、フェリーなどが発着するボウネス・ピアから歩いていけます。入場料は大人7.50英ポンド、子供(3~15歳)3.95英ポンド(2018年2月現在)。ピーターラビット・シアターショーも見ものです。ショップも充実しています。ぬいぐるみやキャラクター文具、ウェッジウッドをはじめとしたピーターラビット柄の陶製食器などが売られていて、お土産購入に最適です。


イギリス湖水地方へのアクセスとツアーの選び方

ヴァージントレインズ

湖水地方への個人旅行なら鉄道旅で。ヴァージントレインズの特急利用なら指定席をとっておくのが安心


▼ツアーと個人旅行の違い・選び方のポイント
湖水地方はパッケージツアーのなかでも人気のコースで、その多くがロンドン・ヒースロー空港ないしはマンチェスター空港を起点とする周遊型のツアーに組み込まれているのが一般的です。周遊型ツアーの場合、湖水地方は1泊程度の短い滞在になりますが、英国全土やイングランド北部を効率よくまわることができるコース設定になっています。

個人旅行で湖水地方へ行くのであれば、できれば最低2泊はしたいもの。じっくりと観てまわるには3~4泊を予定しましょう。

ハードウィック種羊

湖水地方の固有種ハードウィック羊はポターが絶滅を防いだことで知られる


イングランド中央部の美しい丘陵地帯・コッツウォルズと湖水地方の、どちらに行こうか悩む人も多いでしょう。いずれも英国らしい田園風景が広がり、特にコッツウォルズはロンド ンからの日帰りも可能です。ですが湖水地方が世界遺産に登録されてからは人気も増しています。湖水地方はエリアが広いので、時間的な余裕をもってスケジュールを組むとよいでしょう。

ツアー選びのポイントですが、ロンドン滞在でフリータイムが多い自由旅行型のツアーでしたら、ロンドン発着のミニツアーを組み込むのも一手です。ミキ・ツーリスト みゅうJTBマイバス ヨーロッパが一例です。フリータイムを上手に利用して、人気の湖水地方をめざしてください。

▼鉄道での湖水地方へのアクセスと便利な鉄道パス
ヴァージントレインズ

スーツケースの収納棚もあるヴァージントレインズの車内


湖水地方の南の玄関口・ウィンダミアは、湖水地方一帯をまわるのに起点にしやすい町です。ウィンダミア駅へのロンドンからのアクセスは、ロンドン・ユーストン駅からヴァージントレインズに乗車して、途中、オクセンホルム駅で湖水線に乗り換え、ウィンダミア駅が終点です。ロンドンから所要3時間強の道のりです。湖水線は日曜日の運行本数が少ないので、スケジュールを組むときに注意します。

利用回数と利用日を自由に選べる便利な鉄道パス・BritRailを、事前に日本で購入するようにしましょう。現地で、個札で買うよりも、4割程度もお得です。ミキ・ツーリスト みゅうRAILEOUROPE レイルヨーロッパが取り扱っています。

鉄道パスを利用する際の注意点として、バリデーションがあります。バリデーションとは、鉄道パスを利用する前に、駅窓口でパスポートと一緒に鉄道パスを提示して、利用開始日やスポート番号を記入してスタンプをもらうことをさします。 サイン欄には、パスポートと同じサインを署名します。 もし、空欄のまま鉄道パスを利用すると、無賃乗車とみなされますから注意してください。

▼現地ではバスやクルーズ、現地発着ミニツアーを利用しよう
コーチバス

バスやクルーズを運営するStagecoach


現地では、湖水地方の要所を結ぶバスやレイククルーズ船を利用するとよいでしょう。Stagecoachには、バスとクルーズを組み合わせたお得な割引チケットや、乗り放題チケットもあります。バスのドライバーから直接買うことができます。

湖水地方は、現地発着のミニツアーを上手に利用するのがおすすめです。なぜなら道幅が狭く、沿道は石垣で、大型バスが入りづらいため、バンタイプの小型バスで名所をめぐるのが一番、効率がよいのです。マウンテン・ゴート社など現地のツアー会社が催行するミニツアーを選んで、事前予約をするようにします。人気なのは「10の湖を巡るツアー」10 Lakes Tour です。湖水地方一帯の湖や絶景ポイント、名所などをドライバーガイド(英語)の案内とともにまわります。自由時間もあるので、町散策もできます。

また、現地では観光客向けのレンタサイクルが整備されています。一般に、ママチャリではなくマウンテンバイクなので、ヘルメットやグローブを着用するなど、安全装備をすることです。

イギリス湖水地方のホテルの選び方

湖水地方で泊まるなら、有名老舗ホテルがおすすめです。湖岸には、築300年もの老舗ホテルがそびえています。歴史を感じさせる佇まいですが、一歩なかに入れば、近代的なしつらえで驚くことでしょう。

ロー・ウッド・ベイ

数ある老舗ホテルのなかでも絶好のロケーション ロー・ウッド・ベイ


客室を選ぶときのポイントは、レイクビューがおすすめです。場所によっては湖の向こうに沈む夕日を眺めることができます。料金を抑えたいなら、眺望にはこだわらないでアクセスのよさなどで選びましょう。

ホテルの予約サイトを利用するなら、即時決済をすることで安い料金で予約手配ができます。現地払いを選んだ場合、多くのホテルがVISAとMaster Card以外のクレジットカードの利用ができないので注意してください。

代表的な老舗ホテルを紹介します。

▼ロー・ウッド・ベイ リゾート&スパ
Low Wood Bay RESORT&SPA

ロー・ウッド・ベイは、ウィンダミア湖の東岸に位置する風光明媚な四つ星ホテルで、ウエディングにもよく利用される中規模なホテルです。1850年開業の老舗ですが、2つのレストランにラウンジやバー、スパ施設、スポーツジム、エレベーターが完備され、客室の付帯設備やアメニティなども充実しています。
ローウッドベイのレセプション

フレンドリーな雰囲気のスタッフが出迎えるロー・ウッド・ベイ


ロー・ウッド・ベイでは、新館の増築工事が行われており(2018年3月現在)、さらに客室数が増え施設が充実する予定です。場所は、ウィンダミア駅から555番ないしは599番のバスで大人1人3.9英ポンド。タクシーなら10分程度で、チップ込みで約10英ポンドです。

ローウッドベイ客室

客室には紅茶やコーヒーにセイラ・ネルソンのジンジャーブレッドが添えられている


▼ワイルド・ボア・イン
The Wild Boar Inn

ワイルドボア

ジビエ料理も楽しめるワイルド・ボア・イン


ワイルド・ボア・インは、ボウネスの町から東へ5キロほど、沿道に建つ旅籠(はたご)のような可愛らしい宿です。それぞれの客室はファブリックやインテリアが異なり、イングランドの片田舎にタイムスリップしたような雰囲気。ハウスフォンは昔懐かしい黒色のダイヤル式で、古きよき時代を感じさせます。

ワイルド・ボア・イン

まさにインという風情で客室にはアンティーク家具が



 

ワイルドボアインのランチ

ワイルド・ボア・インで出来立てのビールと燻製料理を


おすすめはホテルのレストランでのお食事です。なんと敷地内に、クラフトビールの醸造所と自家製燻製の小屋があり、木製のアフタヌーンティー式スタンドでお料理を楽しむことができます。ランチだけの利用もよいでしょう。ランチでも予約を忘れずに。

▼リンデス・ハウ
Lindeth Howe

リンデスハウ

カントリーハウスのリンデス・ハウ


リンデス・ハウは、ボウネス・ピアから歩いて20分ほど。緑豊かな高台に佇むカントリースタイルのホテルです。ポターの母がかつて暮らしていた屋敷で、1875年に建てられたものですが、一歩中に入ると近代的なつくりで、インテリアもイギリスらしさに溢れています。

リンデスハウ

明るい雰囲気の1階レストランにはポターゆかりの調度品がずらり


レストランやバー、ジム、プールなども併設しており、庭先からは美しい湖が遠くに望めます。アフタヌーンティーだけの利用もOKで、フルーティーなクラフトビールもメニューにそろいます。散策ついでに立ち寄るのもおすすめです。



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※海外を訪れる際には最新情報の入手に努め、「外務省 海外安全ホームページ」を確認するなど、安全確保に十分注意を払ってください。