「まずニューヨークで働いてみて思ったのは、美容の文化がアメリカと日本ではまったく違うんです。日本の基準からいうとアメリカ人の美容師は技術不足。だから日本人でもアメリカに長く居れば居るほどアメリカの技術になっているので、『日本に帰ってもう通用しない』とか言ってる人も多いです。美容師のステータス的には日本の技術を持ってる人のほうが上かもしれない。」
具体的に、どんな技術の違いがあるのでしょうか?
「カットに関して日本人は、そもそも欧米人が持っている軽いヘアースタイルにあこがれてるんですね。だから日本人の髪質に対してそれをするために、毛量をうすくするようシャギーなどを入れるっていう文化が、この10年でものすごく発達したんです。簡単にいえば、日本人の場合は直線ラインを引くだけじゃなく、ギザギザにしたりって加えないとダメだけど、欧米人に対しては直線ラインを引ければ、ある一定のところまで行けてしまうんです。
それからアメリカ人の美容師は、パーマができない人が多い。もともとくせ毛な欧米人はストレートヘアを好むし、パーマっていう文化がほとんどないんです。カットとカラー、あとはセットが主です。カラー文化の面ではアメリカが上、確かに色は豊富でお客さんもシビアなんですけど、日本人と違ってもともと明るい髪だから、誤魔化せてしまうところもあるんですよ。とはいえ最近は日本のカラー文化も進んできてます。」カラー文化といえば、たしかに日本に帰るたび「本当にここは日本なの?」って、茶髪な人が増えてて驚かされる。ニューヨークに住んでると、黒髪でストレートのほうがかえって目立つし、モテたりするから、滅多にヘアーサロンへ行かなくなってしまう。
「ニューヨークの女性たちは斬新なヘアースタイルよりもストレートのロングで左右がピッチリ揃っているキリッとしたタイプのスタイルを好むから、日本の床屋さん(床屋さんはピタリと髪の長さを揃えるという職人気質なところがある。)の技術が、こちらで受けてたりします。」やはりカットの技術という点では日本が上だった。だからそれを知ってるニューヨーク在住の日本人は、日系のヘアーサロンに足を運ぶのであった。