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ドラッグに溺れ空き缶集めした境さんへインタビュー NYでホームレスになった日本人(2ページ目)

NY在住16年、ウエイターのバイトから機械メーカーのサラリーマン、そして挙句にはドラッグに溺れてホームレスまで経験した境さんの生きざまをインタビュー。

執筆者:溝口 弘恵

「ドラッグを始めたきっかけは、覚えてないんです。いつの間にかはまってた。僕の場合、わりと自由になるお金があったから上質なドラッグを手に入れることができたんです。ドラッグやってるうちに古着屋も『やめちゃえ~』って面倒くさくなって、3年ちょっと続いたけど、やめてしまったんです。でも、そういう風に生活してる時が、とにかく楽しかったです。妻は堅実なタイプだったから、僕との生活に愛想をつかして出ていったけど。」刹那的に生きていくタイプの境さんは、こうしてホームレス生活へ突入。

「最初に入ったシェルターは、教会の地下にベッドがあって、6,7人くらいで共同生活をするってタイプ。更正させるための施設だから3ヶ月くらいしか居れないんです。これとは別にシティーがやってるシェルターは外に住むより危険だって話もありますけどね。」私がイメージしてたシェルターは体育館くらいの建物にベッドがザーッと並べられてるタイプ。これがシティーのシェルターなのだという。シェルター生活をしながら、境さんは再び会社員として働きはじめたが、ドラッグをやめることができず、そこも半年でやめてしまった。

「本物のホームレスになって、外での生活が始まりました。でもドラッグは続けてたんです。ちょっと考えられないでしょ?ホームレスってお金がないのにドラッグできるのかって。働いたんです、空き缶を拾って。ゴミ袋7つに詰めた空き缶(5¢)が、180ドルくらいになるんです。一日中、走り回って空き缶を集めました。ニューヨークで3人しかいないんですよ、こんなに空き缶が集められるのは。どこに空き缶が多く捨ててあるのかとか、地域ごとに空き缶の収集日なんかも全て頭に入ってました。

寝る場所は5,6ヶ所にカギをかけて毛布なんかを保管してる場所があって、朝は早くから起きないと人に見られちゃうから早起きして仕事に出るんです。食べものや衣類はシェルターへ行けば支給されるし、シャワーも浴びることができるから、『住』を除いた『衣・食』だけは最低限やっていけるんです。僕は寒がりだったけど、人間って徐々に慣れていくんですねぇー。外に住んでるうち寒さに強くなりました。」

ホームレスという状況でも生真面目なのが日本人。人目を気にして早起きするなど、境さんは自尊心を捨てず、善きにつけ、悪しきにつけ150ドルもする良質のドラッグを楽しむという目的のために身を粉にして働いたのだった。無論、ドラッグが目的でなければ、空き缶集めで平均的な生活はできる。だが、たいていホームレスになっている人はドラッグやアルコールに溺れていることが原因だという。

「ホームレスやってて怖い目にあったことは2回だけあります。拳銃が口の中に突きつけられて目が覚めたんです。見知らぬホームレスだったけど、僕が金持ってることを知ってたらしくて、脅されたので金をあげました。ホームレスってみんなが思っている以上に危険ではないです。薄いけど横のつながりがあるんですよ。数人で集まって共同生活してる人もいますし。僕が一番仲良かったのはドックとシスコで、どちらもカリビアン。なので英会話は彼等と話してるうちに覚えるし、暇があるから英語の本を拾ったりして読んでました。」
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