起死回生の浮上大作戦

慎重に慎重に、確認しながら作業が進む

慎重に慎重に、確認しながら作業が進む

作業は朝から始まった。椿は中野と共に下から作業を見守り、室井は足場で作業を行った。
「立ち位置はいいか!」
「スライダー上がります」
いつものように中野の声に続き、椎野の声が響く。バルーンが少しずつ、上がり始めた。その時、室井が大きな声を上げた。
「おい、スライダー、止めろ、止めろ!」
「はいっ、止まりました!」椎野が返事をする。
「ランドマーク側のロープがゆるんでる。落ちてくるかもしれない!」
一瞬、緊張が走る。もう二度と事故は起こしたくない。学生たちを危険な目には遭わせたくない。バッタの足下には、強風で飛んでいきそうな女の子もいるのだ。

 

確認後、再びスライダーが上がり始めた。今度は椿が叫んだ。
「止めろ~! 上がってないやないか! ロープはどうなっとる?」
足場の一番上にいた学生が大声で返事をする。「ゆるみがとれてます」
「よし、じゃあ少しずつ上げていこう!」椿の声に反応して、ゆるんだロープが伸びて、スライダーが上がっていった。今度はうまくいった。

風がやむのを待つ、学生ボランティアたち

風がやむのを待つ、学生ボランティアたち

順調に進むかと思われた作業は、強い風のために何度も中断した。「どうせ風を待つなら」と、早めの昼食時間となった。

実は、これまで学生たちの昼食はいつも室井と椿が負担していた。トリエンナーレ事務局から給付された補助金も、毎日の昼食代に消えた。学生たちの報酬は昼食なのだ。インターコンチ周辺のレストランは、ほぼ行き尽くした。「寿司以外はね」と女子学生が笑いながら言った。