崇伝の息が掛かった豪華な庭たち
明智光秀が母の菩薩のために大徳寺に建立したものです。明治初年に移築されました。 |
総門より受け付けをすまし、明智門をくぐります。すると広々とし、丁寧に手入れされたお庭が広がります。恐らく、紅葉の季節などは一番美しい場所だと思います。南禅寺の人混みに比べて、意外や紅葉の穴場スポットかもしれません。
石畳の道を進むと御成門が見えてきます。ここで、崇伝と徳川家との関わりをご存じで、日光東照宮を訪れた方は、ピンとくるはずです。ここの東照宮は、徳川家康の遺髪が納められております。京都に現存する唯一の権現造り様式(※2)で、重要文化財に指定されており、拝殿の天井には、狩野探幽の筆による、不気味な龍「鳴龍」が描かれています。この黒い権現造りの東照宮は、京都の寺院で、なかなか見ない不思議な情景だと感じました。そして、東照宮の横を通り、崇伝の塔所・開山堂などがひっそりとたたずんでいます。
黒ずんだ東照宮は、存在感があり、不思議な空気が流れているように感じます。 |
そして、少し進むと小堀遠州作の枯山水・鶴亀の庭園(特別名勝)が広がります。さすが、徳川家とゆかり深い崇伝が作らせただけあり、大変贅沢である豪華な作りだと感嘆します。
整然と広がる白砂と背後の刈り込みとが合わさり、実際よりも壮大に見える贅沢な庭です。右が鶴・左が亀。 |
波を打つ白砂は、宝船と海洋を象徴し、合わせて海原を表しており、正面には、緑の向こう側にある東照宮に対する礼拝石となっています。その両端に、亀島、鶴島を配しています。青々とした刈り込みが、白砂などと対比し、庭に深みを与えています。この正面の表情は、季節が変わってもほとんど変わることは、ないそうです。
※2
神社本殿形式の一。本殿と拝殿とを、石の間または相(あい)の間でつないだもの。平安時代に始まり、桃山時代から盛んになった。日光東照宮本殿がこの例。石の間造り。八つ棟造りとも言う。
方丈は、見どころ一杯!江戸時代の優美な文化が満載
鶴亀の庭の前にある方丈は、1611年(慶長16年)に徳川家光より賜り、伏見桃山城の遺構を移築したものです。屋根は、最近吹き替えされたばかりで、遠目からみると鶴亀の庭園・方丈は、崇伝の権力を見せつける豪華なものだと感嘆します。 |
その方丈と京都三名席の一つ八窓席は、特別拝観とされています。ここまで、来てこちらを見逃すのは、はっきり言って金地院に来た甲斐がありません。空いている時期などは、受付にて申し込めば、大丈夫ですが、混む時期は、前もっての予約が必要かどうか確認した方が良いとの事でした。こちらの特別拝観の良いところは、ガイドの方がお一人付いて、一つ一つ丁寧に説明してもらえる事です。空いている時期など、方丈もガイドの方も貸し切り状態でじっくり・ゆっくりと見学できます。
ここの襖は、狩野探幽・尚信の作品が殆どで、間近まで行き見せてもらえるのにも驚きました。畳まで上がらせていただき、目の前に広がる江戸初期の襖絵を見られるのは、身震いがするという感覚です。
また、小書院の襖絵は、桃山時代の画壇・長谷川等伯の代表作の「猿猴捉月図」で、襖から今にも猿が毛をなびかせながら、出てくる様に思わせる感じなど、桃山時代に書かれたものとは、思えないぐらいはっきりと描写されており、驚きます。これが、畳に上がらず廊下から見るのとは、まったく距離感が違い、感動も半減してしまうかもしれません。どの、襖絵も見応えがあり、撮影禁止のため写真を載せられないのがとても残念です。
東照宮に向かう途中にある、小さな鳥居。石畳みの道と手入れされた周りの木々や苔などゆっくりと庭を眺めるだけでも落ち着きます。 |
その後、重要文化財であるお茶室・八窓席を見学しました。こちらは、小堀遠州好みで、三畳台目の明るい茶席です。私自身は、武家好みの茶席を拝見する機会が少ないため、とても新鮮でした。刀を置く棚があったり、にじり口が大きく、入る前に外縁があったり、そして何よりも窓が沢山あり明るいという印象です。
特別拝観を含め拝観料は、1100円と少しお高く思われますが、是非特別拝観にて、贅を尽くした、江戸時代の文化をお楽しみください。
■金地院
所在地:京都市左京区南禅寺福地町86-12
TEL:075-771-3511
拝観時間:8:30~17:00(12月~2月 8:30~16:30)
交通・アクセス:地下鉄東西線「蹴上駅」下車徒歩7分
地図:地図情報