ハイブリッド・ハブにご用心

ガラス越しでも迫力満点のハブ。環境破壊で生態系が変化
ガラス越しでも迫力満点のハブ。環境破壊で生態系が変化
沖縄在来のハブと、台湾ハブや八重山諸島から沖縄本島にやってきたサキシマハブたちが混血した結果、自然界では起こり得ない新種の「ハイブリッド・ハブ」たちが誕生している。移入の管理ミス、モラルハザードなど原因は様々だが、沖縄本島のハブが変化しつつある状況を食い止めることは難しそうだ。

沖縄の爬虫類を研究している高田爬虫類研究所沖縄分室「ディノドン」の大谷さんによると、「沖縄本島のハブは毒性は高いものの大人しい。台湾ハブは、沖縄ハブより毒性は弱いが非常に攻撃的である。一方サキシマハブの毒性は沖縄ハブよりも弱いとはいえ、生態系の変化が危惧される」

ハブといえば「血清」がすぐに思い浮かぶ。多様化する沖縄のハブに、これまでの血清が通用するのか。大谷さんによると「血清が効かなくなったわけではないが、まだハイブリッド化の途中であるため、ハブ個体それぞれに様々な毒性と性質を帯びていることが問題」という。それはすなわち、種として安定していないということだろう。今このときも、沖縄のハブ社会では大きな変化が起きている。

台湾ハブとのハイブリッド種は沖縄本島北部のヤンバルに多く、サキシマハブとの混血種は本島南部で生息が確認されている。しかも、獰猛な習性を持つタイワンスジオという蛇も、沖縄本島に上陸しているらしい。この蛇の特徴は獰猛性である。つまり「何でも食う」のだ。大谷さんによると「沖縄の生態系を大きく狂わせる可能性が高い」という。

諸島県である沖縄は、島それぞれに独自の生態バランスが保たれてきた。海で分断された島それぞれに特有の自然体系が出来上がり、絶妙な弱肉強食のなかで亜熱帯固有の自然が発展している。小さな生き物たちとそれを捕食する種を含めて、全てが沖縄の財産である。この生態バランスを壊しているのが、いわずと知れた人間たち。

「人間が沖縄の生態系を壊している」大谷さんは怒りをこめて言う。

ハブは本当に怖い生き物?

ハブとはそれほどに怖い存在なのか。自然界で遭遇すれば、即座に噛まれちゃったりするものなのか。噛まれたとき、血清が間に合わないと死ぬのだろうか。

ハイブリッド・ハブは分からないが、沖縄ハブの場合、相手の生態を理解していれば被害は避けられる。たとえばキャンプ。料理したあとの残飯などは完全に処分すべし。食べ残しをその辺に放置するとネズミがやってくる。そのネズミを狙ってハブがやってくる。知らずに遭遇したら大変なことになる。

あるいは山歩き。藪の中に分け入る時は、長い棒などで下草を軽くガサガサとかきまわそう。ハブのテリトリーは意外と狭い。ガソゴソやると、ハブは「フン!」とばかりに避けていく。犬を同伴するのも良い。ヤンバルの山荘に暮らす知人は2匹の大型洋犬を飼っている。山に入る時は犬も一緒だ。犬たちが走り回るのが「ウザい」と感じたハブは逃げていく。

このようにハブは、攻撃するために毒性を獲得したのではない。身を守るためだ。自分に危険が及ばないとハブ流に判断すれば攻撃して来ない。これが沖縄のハブである。

私は、山の中で昼寝中のハブに出会ったことがある。木の切り株に座ったときだ。友人が「う、う、うしろ…」と指さした。私の座った切り株から50センチ程度離れた場所にハブがいた。そーっと離れたのは言うまでもない。

それでもハブに噛まれてしまったら?

大谷さんによると基本的に「ハブに一回噛まれたぐらいでは死なない」らしい。そういえば奄美には「7回噛まれた」という女性がいた。ハブに噛まれたら、まずは口(虫歯があっても大丈夫)か専用の吸引機でくりかえし血を吸い出し、体をなるべく動かないようにして、できるだけ早く病院に連れていこう。

ただし最近の沖縄では、ハブに噛まれたという事件は滅多に発生していないので安心してほしい。新種のハイブリッド・ハブに出会いたかったら、ディノドンで見学できる。ちなみにここでは、ハブ骨で作ったストラップも購入可能だ。


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