68歳での沖縄移住に意欲を見せていた木村さん(仮名)のケースを紹介します。彼女は、持ち家をどうするかの問題とともに、身辺整理で体調を壊し、移住自体を諦めざるを得なくなりました。
避寒のための沖縄通い
千葉に住む木村さんは一人暮らしです。ご主人は3年前に他界しました。2人の子どもたちは独立して家庭を持っています。世間一般的には、シニアの一人暮らしを不安視する傾向があるのですが、自立心旺盛な木村さんの場合は、シングルライフを謳歌していたといってもよいでしょう。彼女の、唯一の悩みは神経痛です。神経痛は寒さや冷えで痛みが増すことから、毎年冬季になると沖縄への避寒旅行を続けています。滞在先は那覇市の民宿。市場や商店街などで同世代の沖縄の友だちが何人もできました。
千葉から沖縄へ
千葉は木村さんの故郷ではありません。亡きご主人とともに子育ての地として選んだ土地です。東京のベッドタウンと化した住宅地でした。近年の再開発ですっかりオシャレな街に変身しています。近所に同じ世代の人がいないわけではありませんが、木村さんにとっては「住みにくい」と感じる街になってしまったようです。地域の老人会活動にも積極的に加わる気持ちにはなれません。
木村さんの家は築25年の古い一軒家ですが、手入れを欠かさなかったことから機能的には問題ありません。そこで木村さんはこの家を売って沖縄に移転しようと考えました。
なにしろ、暖かい沖縄で出会ったのは現役で働く元気な同世代の女性たち。沖縄ならば、まだまだ人生を楽しめるのではないかと……。
自宅売却か賃貸か
彼女の土地売却の意向を知り、色んな人がやってきます。子どもの目から見ると、胡散臭げな人たちが母親に取り入ろうとしていたようです。そこで子ども達は「売らずに貸したら」とアドバイスしました。大事な資産です。じっくり考えて取り組まなければなりません。しかし人間、年をとると気が短くなるもの。思い立ったら即実行、で気ばかりが焦ります。売却するにしても貸すにしても、長年の生活で増えたモノたちを整理しならなければ!と、木村さんは、家をどうするかを決めないまま、荷物の整理を始めました。
いくら元気とはいえ68歳。毎日の荷物整理などはけっこう重労働です。若いときのようにはやれません。2週間せずして彼女は体調を壊してしまいました。
木村さんの沖縄移住は、当分の間お預けです。というより、木村さんの年齢と体調、住宅売却の問題、あるいは賃貸住宅の管理問題などを考えると、今後、1人で沖縄暮らしができるかどうかは難しいと言わざるを得ません。
住み替え支援センター
多くの人が、第二の人生を住みやすい土地や住宅で過ごしたいという願望を持っています。ネックとなるのが持ち家。売るにしても大変だし、貸すにしても遠くに行ってしまえば管理が難しくなります。地域の不動産会社に家賃管理を委託する方法もありますが、その不動産会社自体の経営が行き詰まり、家賃収入が滞るというケースもありえます。そんな時に利用して欲しいのが国土公通省が導入した「住み替え支援センター」です。現在、センターに所属する賃貸住宅管理会社が全国に約100社以上あり、万一、賃貸を仲介した不動産会社が倒産しても家賃収入が保証されます。
国土交通省によると、65歳以上で70平方メートル以上の広い持ち家に住んでいる世帯は1998年時点で356万世帯。現在では400万世帯超と推測されるそうです。
子どもが独立した高齢者にとって、広い持ち家は負担以外の何者でもありません。しかも、それらの殆どはバリアフリーにはなっていません。高齢者が過ごすには不向きです。
住み替え支援センターは、国などの拠出で基金を新設し、賃貸を仲介した不動産会社が倒産しても家賃収入が入るよう保証する一方、段差が少ないバリアフリーの優良賃貸住宅を増やし、高齢者が老後資金を確保しながら住みやすい家に移れるようにするために設立されました。なお、この制度は高齢者でなくとも利用できます。
■住み替え支援センター
財団法人日本賃貸住宅協会のサイトの左側「高齢者等の住み替え支援事業」をクリックしてください。
■「徹底研究 シニア世代の住み替え術」(NHK)
実際に住み替える場合の資金計画について解説しています。
■50代からのマイホーム作戦
日経住宅サーチのサイトです。高齢者の住宅状況が理解できます。
■All About シニアライフ
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