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本膳料理という老舗スタイル~矢田屋松濤園

06年再生旅館レポート第三弾。加賀・柴山潟畔の老舗旅館がモダンな雰囲気で再オープン!料理のテーマは江戸時代に遡った「立場料理」。

井門 隆夫

執筆者:井門 隆夫

旅館ガイド

湖底から湯が湧く温泉の老舗に灯が点る

矢田屋松濤園
ジャズがかかる、現代風のロビーBar「竜神」。
東京から一時間。日本海に程近い小松空港の周辺の加賀平野は、明治時代まで「加賀三湖」と呼ばれる「潟」の風景が広がる湿地でした。
その後、干拓事業が進められ、その名残は、当時「瓢湖」と呼ばれた「柴山潟」の一部のみ。白山を映す潟には、冬、多くの水鳥が飛来します。
柴山潟の湖底から湧くのが片山津温泉。「潟山津」と書いた昔、瓢湖の小さな船着場だったのでしょう。今でも、夏には観光屋形船が発着します。
その湖畔に鉄筋の温泉旅館が十数軒。その中央にあるのが、片山津一の老舗旅館「矢田屋松濤園」です。
湖底からの温泉湧出に成功した明治期の創業で、皇室をはじめ、与謝野鉄幹・晶子など数々の文人墨客が逗留した名宿です。しかし、平成に入り、この旅館業以外の投資失敗の責任から代表者交替。その後、老舗の火を守ろうと地元金融機関などが出資して再生に着手し、06年5月、老舗の灯が再度点ったのです。

矢田屋松濤園
明治29年、片山津を襲った大水害の年、矢田屋は開業した。
鉄筋7階建ての矢田屋松濤園本館の玄関を入ると、静かにジャズがかかり、季節の花が飾られたロビー。湖に残る伝説の主「竜神」の名を取ったカウンターバーから、ドリンクが運ばれてきます。
聞くと、お部屋での呈茶は止めたそうで、思わず、お茶はやめて、生ビールを頼んでしまいました。余計なお世話をやかないほうが、現代人には好評になったのでしょう。
この後の料理も、部屋食の希望を出さない限り、新設の食事処。これも、最近の流れですね。ここで、和風創作料理といえば、「ああ、ここもか」・・・となるところですが、少々変わった出し方をしていたので注目しました。
でも食事の前には、温泉!温泉。湖底から湧く塩化物泉は、5分も浸かれば汗がじゅんじゅん、止まりません。70度以上ある源泉は少々熱いのですが、飲泉もできる、良質の温泉です。
お部屋は、全室レイクビュー。鉄筋の本館と、庭園に面した木造数寄屋を選べます。
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