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「温泉旅館に3,000円で泊まれる商品」の裏事情(2ページ目)

温泉旅館に3,000円で泊まれる商品が注目を浴びています。その裏側にはどのような業界事情があるのか、解説します。

井門 隆夫

執筆者:井門 隆夫

旅館ガイド

旅館の「客室のみ販売」の理由

日本経済新聞05年11月19日付朝刊に「JTB、客室買い取り販売」という見出しが大きく掲載されました。
そう、これが、今回の「素泊まりプラン」の裏事情。
日経新聞によると「JTBは旅館の客室の買い取り販売を始めた。(手数料をもらい)宿泊施設の客室を販売代行するだけという旅行会社のビジネスモデルから脱却。買い取り契約することで売れ残りのリスクを抱える一方、仕入れ原価を引き下げ従来より最大四割近く安いプランを実現する。宿泊予約サイトの普及で旅館が客室を直販する動きに対抗する」(カッコ内は筆者加筆)ということです。
要するに、JTBは今回、7軒の旅館について、もともとオフシーズンとなる1月11日~3月31日について、客室を各2室買い取り、(売り切るために)素泊まりでも販売してみたのです。
今回の取組みは、JTBにとっても、7軒の旅館にとっても、あくまで「実験」。この実験が成功したか、失敗に終わったかは、今後またこのようなプランが出てくるかで、判明することでしょう。
しかし!、これとほぼ同じシステムで、「素泊まり料金」+「食事料金」を明示して、販売しているサイトが、ずいぶん以前からあります。
トクー
従前から「ひとり当り部屋代」を表示し、販売しているトクー。直前になるとさらに割引になる。食事は別料金。
それは、Tocoo!(トクー)
新聞で、JTBが「対抗する」と書かれた「旅館の客室直販」宿泊予約サイトですね。(楽天、じゃらんネット、一休、等は、トクーと違い、旅行会社のように手数料を取るので、厳密には直販サイトとはいえません)
もともと、トクーは、社長の西村氏が「一消費者」として、旅館がホテルの客室や飛行機の座席と同じく「空けておいても仕方ない」のに空室がたくさんある(客室稼働率が低い)点に着目。直前に空いている部屋だけでも安く売れば、食事で稼げるわけだし、いいのではないかと考えたのが発端です。
しかし、業界事情をよくよく調べると、空けたくて空いているのではなく、半分以上の部屋が「旅行会社に押さえられているために空いている」ことに気付きました。それなら、旅行会社と同じように客室を登録できる仕組みを作り、手数料を旅館から取らない代わり、直前の空き部屋を極力安くしてもらい、客室を利用者に提供しようと始めたのがトクーでした。

しかし、多くの旅館は、トクーより旅行会社を優先しているようです。その理由は「トクーに入ると、安売り旅館のようなイメージがつく」「旅行会社のほうが、有名ブランド旅館でいられる」と考えているからではないでしょうか。
しかし、いま、旅行会社最大手のJTBがトクーと同じ売り方を始めました。旅館の思いはどこまで同じでいられるでしょうか。
ところで、JTBの客室買い取りや、トクーの客室の直前販売のような、こうした「手数料を取らない」方式の販売形態。実は、「これからそれが拡大していくであろう背景」があるのです。宿泊予約エージェントは、いったい何を目指しているのか。いよいよ、この問題の核心に、次ページで迫ります。
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