旅館/宿・旅館関連情報

トレンドは、温泉旅館の「再生」。 05年は「旅館再生元年」に。(2ページ目)

全国で誕生している新タイプの旅館。実は、「再生」された旅館が多いってご存じでしたか。

井門 隆夫

執筆者:井門 隆夫

旅館ガイド

温泉旅館再生のポイント


再生のポイントの、第一は「戦後世代マーケティング」。
実は、多くの既存旅館の営業ターゲットは「戦前生まれ世代(現在の年金シニア)」。言い換えれば、昭和の時代からずっとターゲット世代は同じ。昭和の時代職場で旅行した世代が、現在はシニア旅行に変わっただけ。
一方、「部屋のプライバシー」とか「泊食分離など合理的な料金」とか「面倒なこと」を言い、「週末にしか来ない」くせに、旅館の「サービスの押し付けが大嫌い」な戦後世代を、旅館はあまり得意としていません。むしろ、「昔からの旅館のやり方」を受け止めてくれ、「平日に来てくれる」戦前シニアが大好きなのです。
でも、利用者・生活者に近づいていかない限り、再生は不可能。
そこで「再生旅館」の共通点として垣間見えるのは、ターゲットを「戦前世代から戦後世代にシフト」させ計画を作っていることでしょう。
過去の栄光は忘れ、現代の利用者市場をみつめ、団塊世代のリタイヤ(平日利用)時代に備えることができるか。それが第一のポイント。そのためには、経営者も戦後世代へバトンタッチが必要。「元気な温泉地」は、すべからく戦後生まれの若手がリードしています。
第二のポイントは、「食のリノベーション」。
一泊の宴会を想定した「旅館料理」と呼ばれる「量ばかり多い京風会席料理」。パンフレット上のみてくれを重視するがために、こうなってしまいました。とりわけ、年間250日はあるオフシーズンの主要顧客は「地元客」。いつも食べてる田舎家庭料理より京風会席のほうが確かに魅力的かもしれません。
しかし、「飽食気味の都会客」を集客するために、京都でもないのに京風会席では少々陳腐。量と安さを追うなら、徹底的にバイキング(食べ放題)。自然食バイキングなんてのも流行りかけています。それとも、食の演出で魅力を高めるなら、郷土性と季節性を徹底追及し、その地、その宿ならではの食の演出が求められます。中途半端は許されない「食の分化・個性化」が再生の重要なポイントになっています。
第三のポイントは、「異業種とのコラボレーション」。
多くの既存旅館の弱みは、マーケティングノウハウの不足。「食の演出」といっても実はどうすればよいのかわかりません。でも、中にはとても元気な旅館もあります。例えば、仙台の一の坊グループ。ここでは、仙台市内のダイニングレストランを経験してから旅館で働くそうです。その元気の理由は、厳しい外食業で培った演出力が旅館の個性を支えているからでしょう。
しかし、自社でノウハウを持たなくとも、異業種とのコラボレーションという手法も注目されています。
例えば、登別のゆふらんは、札幌のフレンチの巨匠、中道博さんのプロデュース。あるいは、伊東園ホテルや、彩朝楽は、それぞれ総合エンタテイメント企業の経営。熱海のファーストグリーン赤根崎の経営は、給食会社のグリーンハウス。
独自のマーケティング力をもたなくとも、旅館への異業種参入やコラボレーションにより、新しい旅館の運営スタイルが増えてくることは間違いありません。
05年。今年は「再生元年」です。
これから、どしどし増えていく新しいコンセプトの再生旅館を、本サイトでも随時ご紹介していきますので、どうぞご期待ください。
まずは、予告まで。
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます