伊勢の麻吉旅館
ここは、江戸時代にタイムスリップできる宿。夜な夜な宴会が催されたその木造6階建ての楼閣は、今ではひっそりと静まりかえり、遠く電車の音だけが聞こえてきます。まるで「千と千尋の神隠し」の湯屋にいるような、そんな錯覚に陥りかねない、日本の宿の歴史を物語る宿屋です。
その宿の場所は、江戸の吉原、京都の島原などと並び、江戸時代には「五大遊郭」と言われた、伊勢の「古市」。ここはかつて、お伊勢さんへの「おかげ参り」の帰路、旅人の「精進落とし」で栄えた街。
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※古市についてはこちら。
しかし、現在の古市は、何事もなかったかのように、ふつうの住宅街として静まりかえっています。そんな街でただ一軒。往時の面影をそのまま残す楼閣として、その宿は今もなお営業しているのです。
当時の名は「花月楼 麻吉(あさきち)」。現在の宿名は「麻吉旅館」。創業は嘉永4(1851)年、創業150年余といわれていましたが、近年になって、1782年の古市街並図に「麻吉」の名があったり、東海道中膝栗毛に「麻吉へお供しよかいな」と登場することから、200年以上の歴史があると言われるようになりました。
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