さて、美瑛駅の南東、トンガリ塔のある美馬牛(びばうし)小学校周辺の丘陵地帯が「パノラマロード」。丘の畑が広がっている地域で、写真家前田真三さんが小学校廃校跡を改築して作った写真館「拓真館」があります。10年ほど前までは本当に何もなく道路も未舗装で、のどかな別天地だったのですが、いまや拓真館目当てにツアーの大型バスが列をなし、拓真館前には巨大公衆便所が作られ、用を足しに団体ツアー客が降りてきます。用足し後、冷房がなくて暑いと言いながら拓真館をそそくさと出て売店のソフトクリームに並び、お花畑での集合写真があるからとバタバタと去っていく皆さんが可哀想でなりません。その中で本当に来たかった方、ぜひもう一度静かな晩秋にでもいらっしゃって下さい。そしてこの夏に行く方、できれば朝早く静かな時間に行かれて下さい。拓真館の写真は素晴らしいですよ。
そのパノラマロードでのお泊まりは、ぜひ「トロルドハウゲン」へ。テレビや新聞、ゲームなど一切なく、静かな林の中での楽しみは、絵本とピアノの音色、そして小鳥の声と満点の星空、美瑛の丘の風景だけという非日常空間です。そのため、小さな子連れファミリーは遠慮した方が良さそう。全館禁煙なので愛煙家もこの機会に禁煙を。ご夫婦や2~3人の女性グループ、ひとり旅(相部屋のドミトリーの場合も)向きの小さな宿です。
子連れファミリーでも安心なのが、街並みのきれいな美瑛駅前から車で5分ほどの林の中の「ペンションポックロック」。6室(うち和室2室)ですが、キッズルームもある落ち着いた小さなセンスある宿です。ゴールデンレトリバーのWANも歓迎してくれますよ。
◆上富良野・おすすめの宿
上富良野(通称、かみふ)は美瑛とはちょっと雰囲気の違う自衛隊の町(駐屯地から演習場まで行く途中の戦車が時々公道を横切るのでビックリ)。美瑛の景観条例もここまでで、国道の深山峠を越えると周囲の雰囲気が一変するのがおわかりになることと思います。上富に来たら、観光客向けのバイパス沿い松尾ジンギスカンでもいいですが、ぜひ駅周辺の焼肉屋で「豚の塩サガリ」を炭火で召し上がれ。駅周辺にも数軒の旅館がありますが、う~ん、”通”の方にはそれもおすすめだなぁ。(豚サガリとは豚の横隔膜あたりの内臓のこと、このへんの人はなまら(北海道弁でたいへんの意)よく食べます。北海道の常食肉は牛ではなく豚なのです。あと、焼肉はタレではなく塩が基本です。)
そのほか、上富ならではの宿といえば、雲上の「十勝岳温泉」「吹上温泉」を抜いては語れません。高山植物類に囲まれた、道内最高地の温泉宿が十勝岳温泉「湯元凌雲閣」。十勝岳爆裂火口を遠望しながら、ぬるい硫黄泉の源泉の露天風呂につかるのは最高です。以前は山小屋のような木造宿でしたが、今では新築され快適。晴れた日の夜は流れ星がきらめく満点の星空が楽しめ、朝には雲海が広がります。