【その1】玄関に旅行代理店の看板を並べていない。
旅行がまだ非日常だった昭和の時代には、旅行代理店の契約数や政府登録観光旅館の看板が信用力になり、利用者は安心して予約し、銀行も旅館に金を貸してくれました。しかし、いまや「リピーターがどれだけ多いか」で旅館の価値が測られる時代。いまだに看板商売をしている宿は「良い宿」への第一関門で立ち止まっているような気がします。たとえ代理店と契約していたとしても、あえて表には出さない宿がおすすめです。
【その2】「室料」を明示している。
旅館の部屋には「宿泊約款」という冊子が必ず置いてあります。これは利用者との契約内容が記されているのですが、多くの宿(モデル約款採用旅館)では「宿泊料金=室料+夕・朝食料」と表示してあります。つまり、ホテルと同様、旅館にも「室料」があるはずなのですが、実際には、すべて「一人当り料金」がスタンダードになっています。これは、江戸時代の「旅籠」の相部屋制と同様、和室に詰め込み、室料以上の総額をもらった方が儲かるという理由もあるからです。室料を採用し、食事料金との組み合わせで料金が決まるようにすれば、旅館の料金が明快になるはずなのですが・・・。約款を無視して曖昧な料金を続けている限り、消費者は公共の宿など明快な料金表示をしている宿へ流れてしまいます。旅館の方はこの事実に早く気づいて欲しいものです。
【その3】大浴場には源泉を流している。
湯量の少ない温泉地には大変恐縮なのですが、湯を循環せず、源泉流しっぱなしにしている温泉旅館はこれから強いと思います。源泉こそ温泉ですからネ。
源泉と見極めるには・・・「浴槽いっぱいにお湯がたまっているかどうか。お湯を観察すると温泉成分の浮遊物があるかどうか。飲泉ができるかどうか(泉質による)。ジャクジーなど付いていないかどうか。お湯は出ていてもちょろちょろかどうか。」・・・Yesなら源泉ですが、Noなら循環湯(循環・殺菌して同じお湯を使っている)です。もちろん、循環湯ならちゃんと循環させている(湯口からダポダポお湯が出ている)限り清潔ですが、やはり温泉の効能は若干薄められてしまうのは仕方ありません。
【その4】料理の温度管理をきちんとしている。
「天麩羅がアツアツで出てくる」---天麩羅を暖かく出すには食べる直前にフライヤーで揚げなくてはいけないので、これができている宿は一発及第点です。でも、多少冷めていても許してください。
煮物はどうでしょう。中身はもとよりお椀までアツアツの場合も多いと思います。それは温蔵庫に入れていたから。お造りはどうでしょう。お皿もついでに冷えているのではないでしょうか。それは冷蔵庫に入れていたから。
旅館ではなかなか作ってその場で出すことが難しいので、こうした調理器具を使っています。しかし、何も温度管理していない宿(みんな冷めてしまい、お造りは生温い)はちょっとおすすめできません。逆に、お椀やお皿は何でもないのに、ちょうどいい温度の料理が盛られていたら、それは出来たてを提供している本当に一生懸命な旅館です。