旅館の子供料金は、戦後、国際観光ホテル整備法により定められた「モデル宿泊約款」がベースになっています。その中に子供料金の割引率が記されているのです。それによると、子供A(大人に準じた食事と寝具)は大人の70%、子供B(子供料理に寝具)は50%、子供C(食事はなし寝具のみ)は30%となっており、通称「七五三料金」と言われています。この料率は、旅行代理店と旅館との契約書にも使われているので、今でも事実上の標準になっています。
ところが、この料率ができた昭和30年代には、大人の1泊2食料金など、おそらく5,000円がいいところだったでしょう。子供料理の必要な子供の場合、50%ですから、2,500円です。子供料理というと、昔から「お子様ランチ」のケースが多いので、まぁ妥当な料金だったのかもしれません。しかし、いまでは大人料金は、高いところでは30,000円位しますよね。でも、お子様ランチはその50%と変わらず、その場合15,000円もかかるのです。ファミレスのお子様ランチはせいぜい480円のご時世。どう考えても15,000円は高すぎやしませんか。
そのため、最近では、旅館ごとに子供料金を定めるところも多くなってきているほか、子供1,000円程度でのバイキング食べ放題(那須温泉「サンバレー那須」や「聚楽グループ」「別府・杉乃井ホテル」など)がファミリーの人気を博しています。業界の事実上の標準を変えることには相当な努力が必要でしょう。でも、これ以上消費者の気持ちをないがしろにすることはいかがなものでしょうか。
でも、消費者だってばかじゃありません。そんなに高いのなら、大人の食事を分け与えればよいのです。寝具だけに大人の30%も払うなんてのもばかばかしいですので、添い寝でいいことにしちゃいます。そのため、実際には子供が3人くらいいるのに「大人2名」の予約をするものですから、こんどは旅館も10畳くらいの狭い部屋を割り当ててしまう、といったトラブルがよく発生してしまうのです。いくら子供といっても10畳に5人ではうっとうしい上、消防法では一室に一定定員以上の宿泊は認められていないのです。
さらなる問題も起こります。子供に食事を分け与えるとき、ファミレスでそうしているように、「お茶碗とスプーンください」となりますよね。でも旅館の反応は、ファミレスほどおおらかではありません。「なんでお金も払っていないのに、サービスしなくちゃいけないんだろう」なんて陰口が囁かれることもあるのです。そこで、最近では「施設使用料」という名目で、乳児も含め、食事・寝具不要の子供に定額料金を課す旅館も増えてきたのです。
うーーーん、私にはどうしても、昔からの料金の決めごとを守らんとするために、どんどん消費者離れを進めているようにしか思えないのです。一層のことですね、部屋はホテルのように室料にすればいいのです。それに大人の料理が何人、子供料理が何人分、とすれば、わかりやすくなるのにねぇ。どうでしょう、皆さん。
でも、それができない「旅館の事情」が、今の旅館料金制度に隠されているのです。それはまた今度、Close UPで取り上げることにしましょう。
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