大晦日に食べるものといえば年越しそば。「どうして年越しにそばを食べるの?」と、うどん好きの私は子供のころよく思ったものです。周りの大人から「これは縁起物だからね。そばのように細く長く生きられますようにね」と説明を受け、何となく納得していたことを思い出します。「そば長生き説」をずっと信じて食べていたのですが、意外や意外、年越しそばについてはこの他、こんな説もあったようです。
大晦日にそばを食べる理由は?
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家族揃って年越しそばを食べていると、なんだか心まで温まるようです |
さて大晦日にそばを食べる理由を探してみると、いろんな楽しい説が飛び出してきました。
- 金細工職人が散らばった金粉をそば粉で集めていたことにあやかって金運に恵まれたい
- 切れやすいそばを食べて災いを断つ
- 雨風にさらされても日に当たるとすぐに元気になる植物、そばにあやかって来年こそは!と祈願
どの説を信じるにしてもそばは、縁起の良い食べ物に違いなさそうです。
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江戸時代にはすでに年越しにそばを食べていた? 長い時を経ても人の心って通じるものがあるようです |
江戸時代の後半にはすでに庶民の間に広まっていたという引越しそば。質素な生活の中、少しでも新しい年が希望に満ちたものでありますようにとの思いを託していたとすれば、この習慣は長い時を経た今でも、とても身近に感じられてくるようです。
年越しそばは、年越し、すなわち除夜の鐘を聞きながらそばを食べるもの? と思われそうですが、そういう習わしはなさそうです。年さえ越さなければ夕食だろうが、夜食だろうが構わないと言われています。年を越さなければというのがみそで、年を越してから食べると縁起が悪いとの説も一部にはあるようです。ぜひ縁起をかつぎたい!と思って食べるなら夜中の12時までに食べるのが良いかもしれません。
引越しそばも縁起物?
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昔から庶民の食べ物として人気のそば。縁起物としても重宝されていたのでしょう |
それでは、引越しそばはどういう理由から振舞われ始めたのでしょうか? 引越しそばというのは耳慣れた言葉ではありますが、ガイド自身は一度も引越し挨拶品として配ったことはありません。というのもどうして引越しにそばなのか、その意味がわからなかったというのが主な理由です。年越しそばと同様、引越しそばという習わしは昔からあったのでしょうか?
なるほど、あるようです。もともと引越しそばは、江戸時代中期から江戸を中心に行われるようになった習わしだそうです。「そばに(近く)に越してきたことに引っかけて、『おそばに末長く』あるいは『細く長くお付き合いをよろしく』との江戸っ子の洒落が込められている」(そば・うどん百味百題/柴田書店)との説があるようです。
引越しそばはだれに振舞う?
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乾麺なら長持ちするし、安く押えられるし…。引越し挨拶品にピッタリ! |
江戸時代引越しそばは、現在の引越し挨拶品と同様、ご近所の方々に振舞っていたようです。「転居先に荷物を運び入れたところで、家主、向こう三軒両隣に配るようになった。隣近所へは二つずつ、大家、差配(管理人)に五つというのが決まり」(同/柴田書店)ということらしいです。それにしても二つと五つの差に互いの力関係や、よく取り計らって欲しいとの思いも見え隠れするこの習わし、現在にも活かされる生活の知恵かもしれません。
そばはこんなにもいわれの多い食べ物なのですね。でも、そばが縁起のいい食べ物とは後から付けた理由で、本当は庶民的なそばで縁起が担げれば安上がり、そんな理由があったとも伝えられているそうです。どちらにしても何かにあやかりたい、近所づきあいを円満に、そして安上がりにという気持ちは、今も昔も外見ほどに変わっていないよう。この習わしを受け継ぐのも悪くはなさそうですね!
関連サイト
・もっとくわしくそばのことを知りたいなら
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