この春15歳のTOTOROくん すっかり痩せてしまいました… |
砂漠出身者の猫族は元々の飲水量が少ない動物で、体内で水を有効に使うために尿の濃縮率が高く、濃い尿をします。
腎臓は非常によく働いてくれる臓器ですが、それらが腎臓に一層の負担をかけるため、前回の記事でご紹介したワカバちゃんのような先天性の腎臓疾患を抱えていなくても、高齢になるとほとんどの猫の腎臓機能は低下してしまいます。
猫にとって宿命ともいえる腎臓関係の病気について勉強してみませんか。
今現在症状がみられなくても、常日頃から猫の様子を観察し、また定期的に健康診断を行って猫の状態を知ることは、より良い同居人との暮らしの為にできる第一歩だと思います。
今回は猫の腎臓という臓器、その働き、腎臓の状態を知るための必要な検査について書いていきます。
腎臓は血液の濾過装置
腎臓の構造を簡単に説明すると
血管
糸球体:腎臓の毛細血管
尿細管:体液の内容の調節を行う
間質:血管・糸球体+ボウマン嚢・尿細管などの構造の間にあり、これらを支える組織
で成り立っています。
心臓が迫出する血液が腎臓に流れ込む→
動脈は枝分かれして糸球体に至る→
糸球体の毛細血管の中を流れるうちに一部は濾過され、血管の外に出て行く→
糸球体で濾過された糸球体濾液はボウマン嚢から尿細管へ流れ込む→
尿細管を流れるうちに、体に必要な色々な物質を吸収し通常その約99%は血管に戻る→
尿細管で吸収された残り(老廃物や毒物・薬物など)は尿として排出される
※最初に腎臓に流れ込んできた血液量の約1/1000が尿として排出される
糸球体からここまでの構造をネフロンと呼び、腎臓はこのネフロンが片方で100万個集まってできています。
メインクーンの子猫 生後2ヶ月でも水に手を入れて飲みます |
一般的に考える濾過装置=浄水器などですと、有害な物質を取り除いてきれいな水だけを排出しますが、腎臓は単なる有害物質を取り除くだけの濾過装置ではありません。
尿細管を流れるうちに、老廃物と体に必要なブドウ糖やアミノ酸などの有用な物質をより分けて、また血液中のミネラルのバランスによってナトリウム・カリウム・カルシウムなど色々な物質の吸収・排泄を調節して血液に戻してくれます。
また体内の水分調節も行い、水分が過剰な場合はたくさんオシッコを出し、脱水があるときは水を再吸収してオシッコの量を減らします。
腎臓機能が低下していくと…
腎機能障害が進行すると、食欲不振、多飲、体重減少、活動的でなくなる、多尿、息切れ、毛並みが悪くなるなどがみられます。嘔吐が伴う場合もありますが、嘔吐はどちらかというと急性腎不全の時の方によく見られる症状です。これは、脳の嘔吐中枢がBUN(尿素窒素)の高値状態に慣れてしまって、嘔吐刺激として働かなくなってしまっているからだと思われます。
高血圧を合併することも多く、心臓にも負担がかかりますので、脳内出血や心臓発作を起こすこともあります。
多飲多尿が腎不全のサインといわれるのは、腎不全になると尿の濃縮ができなくなるので、体が自然と水を要求する=飲水量が増える=きちんと濾過されないオシッコが増える、というわけです。
腎臓が壊れてしまうと、尿が作れない=尿毒症になり、体の老廃物(尿素・クレアチニン・その他の毒物)を捨てることができなくなります。
腎不全とは、腎機能の3/4以上が失われた状態ですが、腎臓が1/3しか稼働していなくても、あまり猫に症状がみられないことの方が多いようです。
腎臓は大変よく働きますが、日々濾過するときに毒素にさらされる危険性の高い臓器ですので、年齢と共にネフロンが減少していきます。
多発性嚢胞腎(PKD)のような先天性の腎疾患があったり、急性腎不全に引き続き腎臓の機能を障害する因子がある場合はよりネフロンが減少していきます。
腎臓は再生することができない臓器なので、失ってしまったネフロンの代わりは、残ったネフロンが今まで以上に働きます。こうして残ったネフロンもどんどん壊れていってしまい、慢性腎不全が進行していくのです。
石田先生によるエコー検診 赤坂動物病院にて |
続いて、腎臓の状態を知るための検査です→