シストというエイリアン:トキソプラズマの感染形態

ほとんどの方はオーシスト、シストという言葉に、あまり馴染みがないでしょう。

生物学的な解説では-
オーシスト:オス・メスの生殖体が合体して融合体となり、それが皮膜で覆われたもの。
シスト:原虫が皮膜で覆われ、一時的な自発活動休止様状態のもの。
となりますが、これではなかなか理解が難しいです。

原虫の感染形態には4つの変化があります。

1.ブラディゾイト(繁殖活動ができる成虫のようなもの)
2.オーシスト(虫の卵のようなもの)
3.タキゾイト(繁殖することができない幼虫のようなもの)
4.シスト(自分に適した環境ではないので、シェルターのような核の中で活動を停止しているサナギのようなもの。サナギというよりもエイリアン…!)

トキソプラズマ原虫は【2.オーシスト】または、【4.シスト】のどちらかの形で動物の体内に取り込まれます。

感染経路-ネコ科の動物からの場合

最初に書いたようにトキソプラズマの終宿主はネコ科の動物ですので、ネコ科の動物の身体の中に入ったトキソプラズマは【1.ブラディゾイト】になって繁殖活動を行い【2.オーシスト】を糞便中に排出します。
この糞便中に出てきたオーシストを口にすると、もちろんその動物はトキソプラズマに感染します。

しかし排出されたばかりのオーシストには感染能力がありません!
ネコ科の動物から排出されたオーシストは、排出されて空気に触れることで、胞子形成を起こし、24時間から長くて3週間程度経って、初めて感染能力を持つ成熟オーシストに変化します。
→ですから、ネコのウンチはすぐに片付ければ問題ナシ!
2日も3日もウンチをそのままにしておくことなんて、普通は考えられませんよね。

感染経路→ネコ科以外の動物から

ネコ科以外の動物の体内にオーシストが取り込まれると【3.タキゾイト】になります。タキゾイトは腸管内から血流に乗って全身に広がり、無性生殖(細胞分裂)を繰り返し増えます。しかし、体内では免疫応答がはじまり抗体を作り出しタキゾイトを攻撃します。
免疫抗体とタキゾイドの戦いは、通常1~2週間で終わり、劣勢のタキゾイトは居心地が悪くなり骨格筋、心筋、脳などの筋肉の間で【4.シスト】に変化し休眠状態になってしまいます。
このシストがいる動物の肉を食すると、シストの袋が破れてトキソプラズマに感染することになります。
→シストは熱に弱いので、肉類を食べるときはよく加熱すれば問題ナシ!


トキソプラズマに初めて感染したヒトの場合

免疫に異常がない健康体のヒト(成人)の場合は、ほとんど何の症状もみられません。
タキゾイトが抗体に抵抗し何とか増殖を試みる間、感染者の10-20%にリンパ節の腫れやゲリや発熱、涙・鼻水・筋肉痛などのインフルエンザに似た症状が2~3日現れることがあります。
免疫状態が正常なヒトの場合、初回の感染後は終生免疫ができます。

トキソプラズマに初めて感染したネコの場合

現在20~50%のネコはすでにトキソプラズマに感染しているといわれています。
免疫系統が健康なネコの場合は、感染してもほとんど症状がみられないでしょう。

しかし体力のない仔猫などの場合は、免疫抗体が戦いを続けている間、発熱や呼吸困難などの症状が出たり、時に重篤になることがあります。
最初の感染による戦いが収まって抗体ができたネコ科の動物もヒトと同じく、健康状態が安定していればその後再感染したり、再発症がみられることはありません。

※主に仔猫にみられる症状
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急性トキソプラズマ感染症
・抗生物質で改善されない発熱が続く
・急性肝炎
・腸管の通過障害(腸管膜リンパ節の腫大による)
・急性下痢(しばしば粘血便)
・筋炎、および心筋炎

※主に高齢ネコ。または免疫力の低下したネコにみられる症状
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慢性トキソプラズマ感染症
・慢性下痢
・白血球減少症
・貧血
・網膜・脈絡膜炎、虹彩炎
・脳脊髄炎
など。

ネコエイズが陽性の場合:トキソプラズマが発病して重篤になる場合がある。

※ヒト、ネコともに免疫機能が落ちた場合は、再感染・再発症の恐れがあります。