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犬の便秘や下痢は病気?愛犬の便から考える健康状態チェック

犬の便秘や下痢は病気のサイン? 便は健康のバロメーターと言われます。黒い、硬い、柔らかい、細い、便秘気味(出ない)……など便の状態や回数から愛犬の健康・体調をチェックしましょう。今回は、犬の便についての基本的なお話です。

大塚 良重

執筆者:大塚 良重

犬ガイド

愛犬の便から健康状態をチェックしよう

犬の便秘や下痢は病気?愛犬の便から健康状態をチェックするコツ

ウンチは健康のバロメーター


犬と暮らし始めたその日から必要になるのが、食事とトイレの世話です。食事の内容に気を配ることも大事ですが、オシッコや、栄養を摂り入れた後の残りかすであるウンチをチェックすることもこれまた大事。人間の場合でも「観便」の大切さを指摘する声は多く、その状態のちょっとした変化から体の異変に気づくことができます。それは犬であっても同じことで、愛犬の健康管理のためには毎日のウンチのチェックは欠かせません。
   
<目次>
 

犬の健康的なウンチって? 形、臭い、排泄内容をよく観察して

ウンチ

つかんでも形が崩れず、地面やトイレシートもあまり汚れない程度の硬さがあるのがよいとされる。

一般的に、犬のウンチは、処理をする際に手でつかんでも形が崩れず、地面やトイレシートにも汚れがほとんどつかない程度の硬さがある状態がよいとされます。ただし、食べているものがドライフードか、手作り食か、また、たんぱく質や繊維質の量など、食べたものの内容によって少しずつ違ってくるので、普段から愛犬のウンチの健康な状態を把握しておきましょう。

ウンチの色は、だいたい黄土色~焦げ茶くらいですが、食事の内容や体調によって若干違ってきます。

回数は、おおむね、食事をした回数にプラス1~2回といったところでしょうか。これも個体差があり、腸の働きなどによって、もっと回数の多いコ、少ないコもいます。

臭いについても食べたものによって左右されます。元来、肉や卵など動物性たんぱく質は腐敗も速いですから、食べる割合が多ければ、臭いの元となる腐敗成分も多くなるでしょうし、腸内環境が食べたものを消化しづらい状況であったり、消化しづらい食べ物を食べ過ぎたりすると、臭いもきつくなる傾向にあります。また、細菌やウィルス感染といった何らかの病気の影響で臭くなる場合や、食材・薬・サプリメントなどの臭いがそのままウンチに反映される場合もあります。

形状については筒型ですが、腫瘍のような病気の影響でウンチが細くなったり、形状に変化が出ることも。

こういったウンチの回数や色、臭い、形状、そしてウンチをする時の様子などは毎日チェックしたいものです。場合によってはウンチを崩し、どの程度消化されているか確認することも必要でしょう。
 

犬が便秘気味、便秘が始まる前の兆候は?

犬にも便秘はあるのか? 答えは、あります。

本来、大腸では余分な水分が吸収されてウンチが出てきますが、大腸に留まる時間が長いと水分が吸収され過ぎてウンチが硬くなり、コロコロとした細切れのウンチになりがちです。

それが続くと、便秘になってしまうこともあります。
 

犬の便秘と関連がある状況や病気など

では、どんな状況が硬いウンチや便秘と関係するのでしょう? 考えられるものには、以下のようなものがあります。
 
  • 食事量が少ない
    食事量が少ないと、ウンチは硬くなりがちです。
  • 運動不足
    適度な運動は内臓の働きもよくします。
  • 高齢による消化機能の低下
    高齢になると体の筋肉が衰えてきますが、それは内臓の筋肉にしても同じこと。腸の働きが鈍ることで、便秘になることもあります。便秘にかかわらず、犬が寝たきりになり、自力で排泄できない場合には、ウンチをかき出してあげる必要が出てくることもあります。
  • カルシウムの過剰摂取
    カルシウムを過剰摂取した場合、ウンチの表面が白っぽくなり、まるで白い小石のような印象を受けることがありますが、カルシウムを過剰に与えると、四肢の骨格異常や亜鉛・鉄などの吸収障害につながることもあるので、子犬の成長期によかろうと添加している場合、与え過ぎにはご注意ください。
  • 病気の影響
    前立腺肥大、前立腺炎、前立腺の腫瘍、腸閉塞、会陰ヘルニア、腰痛など。腸閉塞では下痢になることもあるそうです。
  • 異物の誤飲
    上記の腸閉塞に関連して、石や靴下など異物を飲み込んでしまうことで便秘になるケースも。何でも口に入れてしまうタイプの犬では注意のしどころでしょう。
  • トイレトレーニングの問題
    トイレトレーニングの際に失敗を叱ってばかりいると、トイレをすること自体がいけないことだと思ってしまい、オシッコやウンチをしたくても我慢してしまうことがあります。この場合は、便秘と言うよりも、出したくても出せない状況と言ったらいいでしょうか。トイレトレーニングをする際には、失敗をさせないことが理想的であり、失敗をした時には叱らずに、さっさと片付けてしまうことをお勧めします。
  • トイレの掃除が不十分
    本来、犬は綺麗好きで、自分の巣穴ではウンチやオシッコをしない習性がありますから、トイレが汚れていると、上記のトイレトレーニング同様、ほんとうはしたいのに我慢してしまうこともあります。トイレトレーニングの途中であり、トイレまで誘導させる意味であえてオシッコやウンチの臭いを残している場合は別として、極力清潔を心がけたいものです。
 

犬はよく下痢をする?問題ない下痢と病気による下痢の見分け方は?

愛犬の健康日記を作り、毎日オシッコやウンチの回数、状態などを記録しておくと、何か体調に変化があった時に役に立つことがあるのでお勧め。

愛犬の健康日記を作り、毎日オシッコやウンチの回数、状態などを記録しておくと、何か体調に変化があった時に役に立つことがあるのでお勧め。


犬は、結構下痢をすることがあります。整腸剤を飲ませてすぐに治るようならいいですが、中には何らかの病気からくる症状の場合もあるので、気をつけて見てあげるようにしてください。

下痢が続くと思った以上に体力も奪い、特に、抵抗力のない子犬や高齢犬であると、最悪の場合、命にかかわることもあります。神経質になり過ぎるのも問題ですが、甘く見たくないのも下痢ということです。

そして下痢は、大腸性の下痢、小腸性の下痢に分けることができます。以下に、そのポイントとなるところをいくつか挙げておきましょう。
 
  小腸性 大腸性
回数 少ない傾向 増える傾向
増える 変わらないか、減る傾向
粘液 あまりない 多くが見られる
しぶり あまりない ある
お腹の音  ある あまりない
血液 ウンチの中にタール状のものが見られることもある ウンチの表面に赤い血が見られることもある
 

犬の下痢症状は特徴をしっかり捉えて、病院で細かく相談を

柔らかいウンチ・下痢にも、幾つか特徴があります。いつものウンチがちょっと柔らかくなったように見えるもの(軟便)から、どろっとして、まるでカレーのように見えるもの、水様のもの、白や薄い黄色で粘液がついたもの、黒っぽくてタールのようなもの、脂っぽい脂肪便、明らかに血液が混じっているもの、トマトジュースのようなもの…など様々。

ウンチに血液が見られる場合、鮮血(赤い血)であれば大腸や直腸など消化管の下部からの出血である可能性が高く、濃い色~黒っぽい色であれば胃や小腸といった消化管上部からの出血である可能性が高くなります。これは、出血して時間が経つと、血液の色は濃く(黒っぽく)なっていくことによります。また、膵臓から出る消化酵素が正常でない場合、特に脂肪がうまく分解されずに脂肪便になることがあります。

下痢は数日様子を見ればすぐに治るものから、危険な状態になるものまであるので、少しでも変だと思った時には動物病院で診てもらうことをお勧めします。その際には可能な限り現物を持って行くようにし、それができない場合には、できるだけ詳しく説明できるよう、特徴をとらえておくといいでしょう。
 

犬の下痢と関連のある状況や病気など

下痢になるきっかけや病気には様々なものがあります。以下はその一部です。

【食事性】
  • 過食
    食べ過ぎて下痢になることもあります。
     
  • 食物アレルギー
    アレルギー症状の1つとして下痢を起こすことも。
     
  • 高脂肪食
    脂肪が分解しきれずに下痢を起こすがあります。
     
  • 腐敗物の摂取
    腐ったものを食べれば当然下痢をすることでしょう。
     
  • 犬にとって危険な食材の摂取
    タマネギ、チョコレート、レーズンなど。
     
  • フード(食事内容)の変更、または急な変更
    フード(食事内容)を切り替える場合は急に替えるのではなく、1日目は1割、2日目は2割というふうに1週間程度かけて切り替えていきます。
     
  • 牛乳
    犬は牛乳に含まれる乳糖を分解しにくいため、下痢をしやすくなります。与えたい場合には少し温めたり、少量を与えたりするのがいいでしょう。

【病気】
  • 寄生虫
    回虫症、鞭虫症、コクシジウムなど
     
  • ウィルスや細菌
    ジステンパー、パルボウイルスなど。パルボウイルスの場合はトマトジュースような下痢になることが特徴的です。
     
  • 膵外分泌不全症
    脂肪便となることもあります。
     
  • 腫瘍・ガン
    状況によっては正常なウンチの時期と下痢の時期とが交互になることがあります。

【中毒】
  • 各種中毒
    食材による中毒の他、化学物質や薬品などによって中毒を起こし、下痢になることも。

【神経性】
  • ストレス
    何らかのストレスによって下痢を起こすこともあります。
 

犬に下痢が見られたら

整腸剤などで止まる程度のものでしたらいいですが、下痢が続いたり、明らかにウンチの状態や様子がおかしいと思った時には、なるべく早く動物病院へ行くようにしましょう。

軽い場合でしたら、12~24時間、場合によっては48時間程度、食事制限をして、胃腸を休めてあげるのがいいと一般的には言われます。下痢で水分を奪われるため、水を飲みたがるでしょうが、一度にたくさん与えず、少しずつ飲ませるほうがいいかもしれません。詳しくは動物病院でお尋ねください。

また、前述したように、腫瘍・ガンが隠れていた場合、軟便や下痢になる時と、健康なウンチが出る時と、交互に繰り返すようなこともあるので、治ったからと安心せず、そのような場合には、一度検査を受けてみることをお勧めします。


犬と暮らすあるご夫婦のお宅では、ご主人が仕事から帰ると、「ただいま」ではなく、「〇〇の今日のウンチはどうだった?」だそうです。そういうご家庭は多いのではないでしょうか。ウンチは健康のバロメーター。毎日のチェックを忘れずに、愛犬の健康を守ってあげましょう。


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