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ウィーン在住のトレーナーさんに聞く犬事情(2ページ目)

日本の犬事情も随分と変化を見せてきていますが、海外から学ぶことは多々あります。ウイーン在住のドッグトレーナーさんに、オーストリアの犬事情などお話を伺ってみました。そこから見えてくるものとは?

大塚 良重

執筆者:大塚 良重

犬ガイド

当初よりトレーニング方法には変化ありませんでしたか?

合同レッスンの様子
左側の犬は、鎖に繋がれて飼われていた保護犬。他の犬に出会うと恐怖吠えや攻撃性が高く、1対1の練習の成果を見るために他の生徒さんも参加している。

Eggiさん:
コースのアシスタントを3期勤めたら、オーストリアの使役犬協会のコース担当トレーナー試験を受けられるので、その道を進みました。そういった経緯から、オーストリア使役犬協会のパピーコース、ヤングドッグコース、家庭犬訓練コース、ブライテンスポーツなどのコース担当トレーナーの資格も一応持っています。

協会で自分のコースも受け持つ中、当初から褒めて延ばす方法で授業をしていましたので、同僚からの風当たりはちょっと強かったですね(苦笑)。そうこうしている内に、1999年に“現代の犬のしつけ”というタイトルのセミナー案内を見つけ、従来の方法に必死で抵抗していた時期でしたから、頭をガンッと殴られた思いでした、すぐに参加応募いたしまして、そのセミナーでクリッカートレーニングと出会い、すっかり魅了されました。

翌年には、カーミングシグナルを世に発表したトゥリッド・ルーガス女史と出会い、行動アドバイザーとしての勉強も重ねて、今に至っています。現在では、先の協会からPet dog trainers of Europe(2004年にルーガス女史が創立した協会)のほうへ籍を移しております。

現在のお仕事の内容について

レッスン中のコ
「いいコね」の褒め言葉に嬉しそうに反応する生徒さんの愛犬。
Eggiさん:
これまでほとんどがリハビリ(社会生活復帰)のお世話をしていました。まず飼い主さんに、犬の習性、犬の学習行動、カーミングシグナル、ストレスなどを知って頂いて、犬への理解を深めてもらうことが第一の仕事でした。犬に何かを一方的に期待するのではなく、人間が、犬の習性からくる、犬としてごくあたりまえの期待や要望に沿うようにすれば、犬の精神も落ち着いて、お行儀もよくなることを、身をもって体験してもらうわけです。犬の期待をまるで無視して、人間側の要望だけを押しつけることが、犬の問題行動につながっていることを認識してもらうことです。

犬の期待なんて、たかが知れています。高価なものを買って欲しいなんて要求はしませんから。人間は昔から、犬に何かを一方的に期待するので、一方的に犬に命令して押さえつけてしまうのですよね。しかも、それは犬の習性にない、人間の思考で考えた要求だったりします。人間の命令に盲目的に従う犬が、いわゆるよい犬だったんですよね。

でも、私は、幸せな犬ってどんな犬なんだろう?と考え始めてこの道に入った人間ですから、従来のよい犬の姿に違和感を持ってしまいます。従来の服従訓練精神とは別に、ノーリードでも呼べば喜んで戻ってくる、リードを引かないで歩く、必要のない時は吠えない、などの練習を、犬に理解しやすい方法でしながら、相互の信頼関係の形成のお手伝いをするのが、私の仕事です。天真爛漫な犬の表情が戻ってきたら、私の生徒さんは卒業です。

オーストリアではどうやって犬を手に入れるのでしょう?

歩き方のレッスン中
“他の犬にかまわないで、緩いリードで歩きましょう”の練習風景。
Eggiさん:
30年ほど前まで、大きなペットショップでは生体販売をしていましたが、病気になる犬があったりして問題になってからは、それもなくなりました。2005年1月1日から、新改正された犬保護法では、ペットショップでの生体販売は禁止になりましたが、再度改正されまして、生体販売許可を申請して、許可を受けたショップでは可能となりました。動物保護法などの専門知識の審査があって、結構大変そうです。

改正の理由に、東欧諸国の繁殖工場からの密輸阻止を上げていました。高速のパーキングエリアなどで、パピーの密売をする人がいたそうです。売れ残った子犬たちは、なんとゴミ箱に捨てられていたりして、救助されたニュースが入ったりしていました。

話を元にもどして。一般的にはブリーダーさんの出す雑誌広告や新聞広告を見て、直接ブリーダーさんから買います。血統書つきの犬を欲している人は、必ずと言ってよいほど、広告を見ていますね。オーストリアケンネルクラブの血統書つきの犬たちは、ほとんどそのケースです。

後は、新聞に里親募集のページもあります。ウイーンの新聞は、ウイーン動物愛護協会からの記事が載っています。そして、この制度は、それなりの歴史と信用があるようです。もし、その広告のせいで悪いブリードや詐欺があったりしたら、新聞会社や雑誌会社の信用も落ちてしまいますよね。それから、動物愛護協会から、譲り受けるケースも多いです。


次のページでは、一般の飼い主さんの意識について。
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