薬と運動制限と食事療法で安定を保つ
・エナラプリル(腎排泄) ・ベナゼプリル(肝腎両方から排泄) ・ラミプリル(肝腎両方から排泄) ・テモカプリル(80%以上肝から残り腎から排泄) ・アラセプリル(60%肝から40%腎から排泄) 以上5種類は穏やかに作用する薬で、 ほとんどが1日1回の内服になります (エナラプリルのみ1日1~2回)。 |
さらに症状が進むと、薬の種類が変わります。
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■静脈血管拡張薬 ・通常ニトロと呼ばれる硫酸イソソルビド錠が使われます。 ただこれは作用時間が短く、1日2-3回の服用が必要になります。 ■動脈血管拡張薬 ・ヒドララジン(アプレゾリン錠)、重度の症状の子に 使われます。 |
さらに症状が進んだ場合(クラス3以上)になると、上記以外に強心薬と利尿薬の併用が必要になります。
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腎排出を促すジゴキシン、吸収の早いメチルジゴキシン などが使われます。 他に心収縮力を増強するβ一遮断薬が使われることもあります。 薬の内服だけでなく、運動を控えめにして、 安静な状態を保つようにすることが必要です。
フロセミドを投与します。 また同時に塩分を控えめにした食事に変えていきます。 |
最後の選択として手術という道もある
塩分を多くとると、喉が渇くため水を多量に飲むようになりますよね。当然のことですが、水をたくさん飲むと血液の量が増えて心臓に負担がかかるうえ、肺にうっ血が起こりやすくなります。これを防ぐためには、老齢犬用か腎不全用の処方食(塩分0.2~0.25%)、症状が進んだ場合には心不全用の処方食(0.1%)を使うとのこと。また、缶詰(1.13%)よりはドライ(平均0.4%)の方が塩分が低いので、缶詰を食べている子にはドライへの切り替えをすすめておられるそうです。
でも犬ガイドのわたしとしては、塩分をしっかり抑えたメニューの手づくり食をおすすめしたいと思いますけどね。
世界的評価を受けている 金本先生のお話はここで終わりでしたが、実をいうと急性型や急性への移行型についてもまったく希望がないわけではありません。それは最後の手段として外科的な治療が残されているからです。
そして、金本先生はこの外科手術の第一人者。僧帽弁閉鎖不全症の手術には、人工弁を使うものと自分の腱索を使って弁を再生させる形成手術とがありますが、とりわけ小型犬の形成手術を行える人は、世界でも金本先生を筆頭に数えるほどしかおられません。
もちろん高度な技術と犬用の人工心肺を使ってやる難度の高い手術なのですが、金本先生は多くの成功例を持っていて、世界中の獣医師が集まる外科学会でも高い評価を得ておられるとか。
また形成術以外でも、日本には人工弁を使ってこの手術に取り組まれている先生が、農工大の山根義久先生や麻布大の若尾義人先生をはじめ何人かおられます。
どちらも100万円以上する高額な治療なのですが、飼い主さんが望むなら「それが手の届くところにある」というのは、本当に素晴らしいことだと思います。もっとも一番よいのはそうならない前に未然に防ぐこと。あなたが小型犬の飼い主さんなら、今日から愛犬の様子をしっかりチェックしていくことにしましょうね!
来週は、引き続きレポートの第2弾「外耳炎のケア」をお送りします、お楽しみに!