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臨床獣医学フォーラム・レポート「心臓病」(3ページ目)

今年も臨床獣医学フォーラムの年次大会が東京赤坂で開かれました。全国の獣医師、獣看護士、そして一般市民が一緒になって動物医療の明日を考える試みも今年で8回目。レポート1回目は「心臓病」です。

執筆者:坂本 光里

薬と運動制限と食事療法で安定を保つ

今は早い段階ならとても良い薬があるそうです

さて、慢性型の僧帽弁閉鎖不全症が比較的早い段階(クラス1~2程度)で見つかったら、どんな内科的治療をするのか? 通常はACE阻害剤と呼ばれる血管拡張薬を使うことになります。これは、血管を拡張することで心臓が血液を送り出しやすくしてあげるという薬で、早い段階ではとても効果があります。場合によってはこれで安定して何年も生き続ける子もたくさんいるとのことですから、じつに頼もしい薬といえますよね。ただし途中でやめることはできず、生涯飲み続けなければなりません。

そして症状が進むにしたがって、クラス3では血管拡張薬に加えて強心薬と利尿薬を使い、クラス4になるとこれらのお薬の投与量を増やし、クラス4の急性型では利用薬と強心薬、血管拡張薬を毎日注射することが必要になるそうです。

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 血管拡張薬 
動脈と静脈の両方を拡張させる薬
・エナラプリル(腎排泄)
・ベナゼプリル(肝腎両方から排泄)
・ラミプリル(肝腎両方から排泄)
・テモカプリル(80%以上肝から残り腎から排泄)
・アラセプリル(60%肝から40%腎から排泄)

 以上5種類は穏やかに作用する薬で、
 ほとんどが1日1回の内服になります
 (エナラプリルのみ1日1~2回)。


さらに症状が進むと、薬の種類が変わります。


静脈血管拡張薬
・通常ニトロと呼ばれる硫酸イソソルビド錠が使われます。
 ただこれは作用時間が短く、1日2-3回の服用が必要になります。

動脈血管拡張薬
・ヒドララジン(アプレゾリン錠)、重度の症状の子に
 使われます。


さらに症状が進んだ場合(クラス3以上)になると、上記以外に強心薬と利尿薬の併用が必要になります。


 強心薬(ジギタリス療法) 
 心拍数を正常値まで下げ、徐脈の状態にして心臓を守ります。
 腎排出を促すジゴキシン、吸収の早いメチルジゴキシン
 などが使われます。
 他に心収縮力を増強するβ一遮断薬が使われることもあります。
 薬の内服だけでなく、運動を控えめにして、
 安静な状態を保つようにすることが必要です。

 利尿薬 
 体液が溜まるのを抑えるためにナトリウムや
 フロセミドを投与します。
 また同時に塩分を控えめにした食事に変えていきます。


最後の選択として手術という道もある

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カラードップラーで見る心臓内の画像はとてもクリア

塩分を多くとると、喉が渇くため水を多量に飲むようになりますよね。当然のことですが、水をたくさん飲むと血液の量が増えて心臓に負担がかかるうえ、肺にうっ血が起こりやすくなります。これを防ぐためには、老齢犬用か腎不全用の処方食(塩分0.2~0.25%)、症状が進んだ場合には心不全用の処方食(0.1%)を使うとのこと。また、缶詰(1.13%)よりはドライ(平均0.4%)の方が塩分が低いので、缶詰を食べている子にはドライへの切り替えをすすめておられるそうです。
でも犬ガイドのわたしとしては、塩分をしっかり抑えたメニューの手づくり食をおすすめしたいと思いますけどね。

img2金本勇先生の形成術は
世界的評価を受けている 金本先生のお話はここで終わりでしたが、実をいうと急性型や急性への移行型についてもまったく希望がないわけではありません。それは最後の手段として外科的な治療が残されているからです。
そして、金本先生はこの外科手術の第一人者。僧帽弁閉鎖不全症の手術には、人工弁を使うものと自分の腱索を使って弁を再生させる形成手術とがありますが、とりわけ小型犬の形成手術を行える人は、世界でも金本先生を筆頭に数えるほどしかおられません。

もちろん高度な技術と犬用の人工心肺を使ってやる難度の高い手術なのですが、金本先生は多くの成功例を持っていて、世界中の獣医師が集まる外科学会でも高い評価を得ておられるとか。
また形成術以外でも、日本には人工弁を使ってこの手術に取り組まれている先生が、農工大の山根義久先生や麻布大の若尾義人先生をはじめ何人かおられます。

どちらも100万円以上する高額な治療なのですが、飼い主さんが望むなら「それが手の届くところにある」というのは、本当に素晴らしいことだと思います。もっとも一番よいのはそうならない前に未然に防ぐこと。あなたが小型犬の飼い主さんなら、今日から愛犬の様子をしっかりチェックしていくことにしましょうね!

来週は、引き続きレポートの第2弾「外耳炎のケア」をお送りします、お楽しみに!
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。

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