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ペットの高度医療に大きな一歩(2ページ目)

この10月、大阪にできたネオ・ベッツVRセンターは、動物の医療界では初の二次診療専門の民間高度医療センターです。ここが果たす今後の役割について創設メンバーの一人、細井戸先生にお話を伺いました。

執筆者:坂本 光里

 ネオ・ベッツVRセンターで受けられる専門医療 
脳神経外科・内科
脳・脊椎損傷、水頭症、頸椎椎間板、胸腰部椎間板、環椎軸椎不安定
整形外科
骨折・癒合不全、股関節形成不全
(股関節全置換術、骨盤3点骨切術、転子間骨切術)
前十字靱帯断裂、関節鏡視下手術
(肘関節、半月板損傷、上腕骨頭OCD、二頭筋腱炎)
軟部・胸部外科・内科
腹腔鏡:胸腔鏡視下手術、胸腔内腫瘍、腹腔内腫瘍、門脈体循環シャント
動脈管開存症、大型犬・超大型犬の避妊手術
眼科
白内障、緑内障、角膜疾患

いまの段階で受けられるのは「脳神経外科・内科」「整形外科」「軟部・胸部外科・内科」「眼科」で、歯科や皮膚科、放射線科などはありませんが、そうした科目も将来的に充実させていかれるのでしょう。
「じつは今もアメリカで留学・研修中の先生が2人いて、かれらがまた最先端の治療法や考え方を持ち帰ってくることになっています。とくにルイジアナ大の腫瘍科に行かれた先生はレジデント(研修医)ではあきたらず、その上のディプロマ(専門医)に挑戦するとのことで帰国がすこし先延ばしになりました。まあしかし、こうした向上心に燃えた人たちが育ってきて、ここがさらに高度化していけばこんなに喜ばしいことはありません」(細井戸先生)

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CTなど高度医療機器は、地域の獣医さんたちに開放されている

ネオ・ベッツVRセンターでは、このほかにも診療・手術などの技術的なデータを広く獣医さんたちに公開し、また施設やCTをはじめとする高度医療機器などの利用についてもオープンに受け容れています。さらに、卒後教育として症例研究会や新技術に関するワークショップなども定期的に行うなどして、地域のペット医療の向上をはかっているそうです。なんだか、大阪の獣医さんたちは恵まれてますね。こんなシステムがなんで東京にないの!と真剣に思ってしまいます。

「技術と知識」「教育」そして「哲学」

「ぼくは、ほんとによい獣医さんというのは、3つの要素を兼ね備えるべきだと思ってるんですね。それはまずたしかな『技術と知識』、これにくわえて『教育』と『哲学』の3つ。
つまり、自分だけが高度な技術や専門知識を持っていて神業的な治療が行えてもダメで、後進の指導や教育がきちんとできて人の育成に熱心であること。そしてそれと相通ずるものがありますが、自分なりの哲学というか理念・理想があること。そうした人格的な面がしっかりしていなければ、これからのペット医療へのニーズに応えていけないのかなと思うんです。
残念ながら、日本の獣医教育はずっと経済動物中心で来ましたから、こうした面での人格教育には力が入れられてこなかった。遅蒔きながら、ぼくたちはこのネオ・ベッツを通じてそれを実践していきたいと思っています」(細井戸先生)

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かけ声だけではない「ヒューマンアニマルボンド」を実践

最近は「ヒューマン・アニマル・ボンド(人と動物の絆)」にもとづく獣医療という言葉もよく聞くようになりましたが、細井戸先生は表面的な言葉やかけ声だけでなく、ほんとうにそれを自分の哲学として身につけ、実行することが大切と言われていました。

真の高度医療とは、なにも高い医療機器を揃え、技術的に難しい手術を行うということだけではありません。飼い主たちに、幅広い選択肢を示し、動物にとってどうすれば一番よいかをQOLの面からともに検討し、もっとも適切と思われるアドバイスと処置を行っていくのも、りっぱな高度医療だと思います。そうしたことができるためには、なによりも“哲学”ですよね。

夢は道頓堀川を魚の住める川にすること

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「地域全体で獣医療を伸ばしていきたい」と語る細井戸先生
「ネオ・ベッツだけが高度な医療を受けられる場所というのでは意味がないんです。地域のホームドクター全体が底上げされてこそ、ここが生きてくるんですね。そのためには、ここが少しでも多くの獣医さんたちから支持され愛されて、利用されなければならないし、『患者を取られてしまうんじゃないか』という不安を与えてはいけない。だから二次診療を貫き、お預かりした患者さんは必ずもとのホームドクターに戻すということを念頭に置いているんです」(細井戸先生)
なるほど、地域全体で獣医療を伸ばしていこうというネオ・ベッツの考え方は、ある意味、感動的でもあります。

26人の獣医さんたちが集まって16年前に立ち上げた夜間救急動物病院は、2001年にCTセンターになり、いまこうして133人の獣医師が参加するネオ・ベッツVRセンターとして実を結んだ(夜間救急動物病院は現在も別に運営中)。それを最初の段階からずっと見守ってきた細井戸先生だからこその高い理想と、確固たる信念----。こうした行動的な獣医さんが東京にも一人欲しいものです。最後に先生は、こんな話もされていました。
「ぼくのつぎにやりたいことは、もちろんネオ・ベッツVRセンターのさらなる充実というのもありますが、もしこの活動を通じてなにか儲かるようなことがあったら、道頓堀川の浄化をやりたいなと。あの汚れた川をきれいにして、魚が住めるようにしたい。で、それをやったのは大阪の獣医さんたちらしいでと、後々まで言われるようにしたい。そんな夢があるんですよ」(細井戸先生)

お堅いばかりではない、そんな少年のようなピュアな一面も持った細井戸先生だからこそ、VRセンターも立ち上げることができたのでしょうね!
動物に高度医療を行うべきかどうかについては、飼い主の考え方ひとつというところもありますが、それを望んだときに受け皿がきちんとあるというのは、素晴らしいことだと思います。

ネオ・ベッツVRセンター
大阪市東成区中道3-8-15
地下鉄/JR 「玉造駅」下車徒歩5分
TEL:06-6977-3000(リファラルセンター・CTセンター)
TEL:06-6977-3200(VR夜間センター)

夜間救急動物病院
大阪府堺市熊野町東4-4-11(市立熊野小学校西隣)
TEL:072-222-8132

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※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。

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