ブリーダーとパピーミルとの違いを明確に
環境省は02年、「ペット動物流通販売実態調査」を行いその結果をHPで公開していますが、それによると年間に産出されたとされる推定15万頭の犬たちのうち、流通に乗るのは約8万9000頭(約60%)、飼い主によって買われていくのはわずか7万7000頭(約51%)とされています。つまり半分の犬たちがどこかで「死ぬ」か「処分されている」ということですが、山口さんの言葉どおりだとするとそんなの当たり前のようにも思えてきます。さらに大きな問題は、この調査結果によればアンケートに答えた犬の繁殖業者約1300軒の「年間産出数」は、100頭以上が21%、50~100頭が17.6%、20~30頭が12.2%で、平均は70.6頭だったこと。これは、日本の繁殖業者の大半がパピーミルと呼ばれるような存在であるということです。
また「仕入れから販売までの日数」を見ると平均が26日、「販売時の日齢」は平均48日ですから、子犬たちは平均22日前後で出荷されたという計算になります。これは先の山口さんのコメントにある3週齢ともバッチリ符合します。
「商売優先の無計画な繁殖と、幼齢犬の出荷・販売、このふたつが日本のペット業界の抱えるもっとも大きな問題だと思います。もちろんペットショップでの展示販売の方法も問題だらけですよね。明け方までやっているお店では、いつ行っても煌々と明かりがつけられ、子犬たちはひっきりなしに入ってくるお客さんに寝る暇もありません。しかも狭い店内に、3段4段にショーケースを重ねて100頭以上の幼齢犬を置いている。そんな環境で育てられた犬が健康であるとは考えられませんし、まだ社会化も行われない段階から出荷されてしまうのであとで問題行動のある犬にもなりやすいんです」(山口さん)
山口さんはまた、ブリーダーの定義をしっかりして、公的な機関がブリーダーの認定をするのが理想的とも言われていました。むずかしいのはわかるけど、ミシュランのレストランガイドのようなブリーダー年鑑ができたら、誰もが欲しいはずですよね。
気になる省令のゆくえと係官の権限
今回の法改正にともなう省令にはショップの登録規制とともに飼育環境の改善も盛り込まれるでしょうから、欧米並みに「8週齢未満の犬を売買してはならない」という項目が付けば、ペット業界のビッグバンに向けての大きな一歩となることは間違いなさそうです。
「その意味で、できた法律をどう運営していくかが重要ですよね。省令に出荷時の犬の年齢とか搬送方法とかショーケースやケージのサイズ、そうした具体的な数字まで盛り込めたら大成功なんですが……。そしてつぎに、それを運用する(取り締まる)際の自治体の係官にどこまで権限を与えられるか。海外の査察官やアニマルポリスとまではいかなくても、それに準ずるような立場の人を置ければ、今の状況はかなり改善されるものと思います」(山口さん)
省令に骨組みを与えるための審議は、お役所の人たちだけではなく、有識者や愛護団体のオピニオンリーダーも入れて行われるそうですから、そういう場でぜひ山口さんのような人に発言していただきたいものと思いました。
■(社)日本動物福祉協会
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