ボタンひとつで犬を買い、あとでトラブルに

今年の6月に改正動物愛護管理法が成立し、動物取扱業へのきびしい規制が盛り込まれる結果となりました。問題は今後、これをどう運用していくかということですが、そのあたりを(社)日本動物福祉協会の山口千津子さんに話をうかがいました。

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(社)日本動物福祉協会の
山口千津子さん
(社)日本動物福祉協会では、毎年、ペットの購入に関するトラブル相談を電話で受け付け、その集計をしていますが、それによると02年度が151件、03年度214件、04年度108件と、03年をピークにやや減少傾向にはあるものの、その内容については相変わらずとのことでした。つまり全体の約75%がペットショップ関連のトラブル、17%前後がブリーダーとのトラブルだそうです。

「なかでも目立って増えてきたのがインターネットでの購入です。02年が31件、03年が34件、04年は26件でしたが、ボタンひとつで写真だけを見て犬や猫を買ってしまう。買ってから病気であることがわかってトラブルになるというケースですね」(山口さん)
もちろん山口さんは、インターネットという新しいメディアそのものを問題視されているのではありません。ネットという便利だけれど不確実性のある手段だけを使って動物を物のように売買する「気持ちの軽さ」に警鐘を鳴らされているのです。

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「本当にその子の写真かどうかもわからない、犬舎などの施設だって本物かどうかわからないネット上の写真だけを信用してお金を振り込んでしまうというのが信じられませんね。そんな気持ちで犬を買って、写真と違う犬が来た、大きくならないと書いてあったのに大きくなったと騒いでいるわけですから、飼い主のほうにもまったく責任がないわけではないと思います」(山口さん)

ブリーダー探しの手段としてネットを使うことには何の問題もないが、その使い方には十分気をつけてほしい、と山口さん。たしかに、HPにアップされている写真をふくむ情報がホントであるとの保障はどこにもない。何でもHPにあったからということで鵜呑みにしてしまうのは危険といえるかもしれません。
「入り口はネットでもいいんですけど、一度は犬舎を訪ねて母犬や子犬たちを見せてもらい、ブリーダーさんとお話をしてください。子犬だって、性格のきつい子、穏やかな子、警戒心の強い子、誰にでもフレンドリーな子、とみんな違う。よく観察して自分に合った子を選ぶのは、とても楽しいことだと思いますよ」(山口さん)

病気になるのが当たり前? ペット繁殖・流通の仕組み

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協会に寄せられた相談内容を見せていただくと、90%以上が健康上の問題、そう病気です。それもパルボをはじめ、ジステンパー、原因不明の下痢や吐血、寄生虫、先天性疾患、ケンネルコフ、水頭症、股関節形成不全、心臓病、ウイルス性気管支炎、皮膚病、白内障など病気のオンパレード。
ワクチンなどで予防さえしっかりやっておけば防げるはずのものも多いようです。これって、どういうことなんでしょうね?

「ここが日本の最大の問題なんですけど、繁殖者---あえてブリーダーという言葉は使いたくない---たちがいかにいい加減な繁殖をしているかというのがひとつ。いま流行の犬種をブームが終わらないうちに急いでつくれということで、遺伝性疾患のチェックもせず、はじめての発情でも発情の度ごとにでも交配に使って子犬を産出してしまうんです。だから病気がちな子たちがどんどん生まれる。次に、若くてかわいい幼齢の子犬じゃないと店頭で売れないからと早めの出荷を急かす仲介業や小売店がいる。それでわずか3~4週齢の子犬たちが競り市にかけられる。競り市って、最近はオークションなんて言い方を変えてますけど、どんなところだか知ってます?」(山口さん)

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先進国の愛犬家たちが必ず眉をしかめるというペットの競り市とは、3~4週齢ぐらいで母犬や兄弟犬たちと離された子犬たちが段ボールに詰められ全国から集められ「1頭いくら」で競りにかけられる市場のこと。
山口さんは「まだよちよち歩きの子犬にとって、あんなにストレスのかかる場所はない」と言われています。また、3~4週齢といえばまだワクチンも接種できない時期、パルボやジステンパーの子が紛れ込んだら一気に感染が広がってしまう。そんなリスクもあるそうです。
「それと、犬舎からそこまでどうやって運ばれてくるか? 繁殖業者のトラックや配送業者のクルマで揺られてくるんです。そんなストレスのかかる中で、ほんとに健康な犬たちが取引されていると言われても信じられませんよね」(山口さん)
その結果が、先に示した相談内容に反映されているということでしょう。

それではもう少し問題点を掘り下げてみましょう!