納棺師になるには
一部を除いて、葬祭業は零細企業が多いので、就業後の福利厚生にさほど期待できません。しかし「究極のサービス業」と称されるように心に響く仕事であることは間違いないでしょう。 |
ホームページで人材募集の案内を出している企業もありますが、特に募集の有無についての案内がない場合は直接アプローチしてみる手法もアリです。
納棺の仕事に携わってみて
ガイドも葬儀社勤務時代は、納棺の仕事を行っていました。はじめて先輩に「今日は納棺の補助をしてください。」と言われたときは、何をどうしたら良いかもわからず、ただ言われるがまま布団や棺、ドライアイスの準備をしたものです。当時は、まだご遺体をまともに触れたことがなかった頃ですから、硬直した手や足をほぐすために必至にさすった記憶もあります。納棺を通じてさまざまな遺族の心情に触れることもできました。号泣する人もいれば、ショックで頭が真っ白になってしまう人もいます。それでも、目の前の故人から目をそらすことなく、遺族は旅立ちの準備を行っていきます。死による喪失から生じる深い心の苦しみをグリーフ(悲嘆)といい、それを乗り越える悲嘆のプロセスのことをグリーフワークといいますが、グリーフワークの最初の段階で大切なことは、故人としっかりお別れをすることだそうです。不用意な勇気づけや励ましの言葉は必要ありません。遺族や親戚・知人がそれぞれ死を共に受け止めることができる最初の儀式……それが納棺なのだと感じました。
映画「おくりびと」では「納棺師」という夫の仕事に嫌悪感を抱く妻。「けがらわしい」と吐き捨てるように言った言葉が印象的でした。死に携わる仕事は決して「けがらわしい」ことではないはずなのに、漠然とでもそういう思いを持っている人は少なくありません。
死に関係するビジネスは、お金や将来性だけに執着しているように中傷されることもありますが、それだけで続けられるものではありません。ガイドが知っている業界人の多くは「故人を見送る」ことに対して誇りを持っている人ばかり。「おくりびと」で一躍脚光を浴びることになった納棺師という仕事。忌み嫌われるイメージを少しでも払拭できるようになればと願わずにはいられません。
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