真冬の絶景、オホーツクの流氷を見に行こう!
北海道のオホーツク海沿岸は、例年1月下旬から3月末頃まで流氷を間近で見ることができる日本国内で唯一の場所。流氷が海を埋め尽くす風景は、見た人に驚きと感動を与える素晴らしいものです。
今回は流氷が見られるオホーツク海沿岸から、雄武(おうむ)と紋別(もんべつ)での流氷観光を紹介します。一面に広がる流氷を一望できる場所があったり、氷を割りながら流氷の中を突き進む砕氷船など見所がいっぱいですよ。
<目次>
シベリアからやってくる冬の使者、流氷
毎年寒さの一番厳しい季節になると聞こえてくる流氷のニュース。この流氷は日本のはるか北、シベリア大陸の沖合にあるオホーツク海で海水が凍ることにより誕生します。 そして、寒さが増すと共に季節風に押されるようにして樺太(サハリン)沖からオホーツク海をゆっくり南下、例年1月下旬にはオホーツク海沿岸に流氷が到着し(「流氷接岸」と呼ばれます)、そして海全体を埋め尽くします。 接岸した流氷は、3月下旬頃まで南下を続け、オホーツク海の広い範囲を真っ白に染めあげます。気温や風の吹き方により大きく左右されますが、勢いがある時は北海道の東側すべてが流氷で埋まってしまうこともあるとのこと。そして遅い春の到来と共に流氷は融けていき、オホーツク海から消えていきます。流氷はシベリアからやってくる冬の使者であり、まさに真冬の北海道を象徴する風景だと言えますね。
【雄武】美しい日の出が見える街で流氷を出迎える
流氷が見られるオホーツク海沿岸の街から、最初にご紹介するのは雄武(おうむ、Googleマップ)。最北端の稚内(わっかない)からオホーツク海沿いを170キロほど走ったところにある漁業と酪農・畜産の町です。
町を縦断する国道238号線を走っていると、面白い形をした建物が目にとまります。その建物があるのは「道の駅おうむ」(Googleマップ)。元々ここには国鉄 興浜南線の雄武(おむ)駅があったのですが、鉄道廃止に伴い1985年に駅がなくなった後、バスセンターと道の駅に変身しています。 「道の駅おうむ」にある面白い形の建物は「スカイキャビン」という名前がついた展望台。外観は飛行船を模していて、道の駅おうむを利用する人は自由に入場することができます。
ビルの7階に相当する高さにあるので、エレベーターで「スカイキャビン」に上ると、雄武の町並みとすぐ目の前に広がるオホーツク海のパノラマを一望することが可能です。 もちろん流氷が接岸している時期であれば、「スカイキャビン」から流氷をパノラマで眺められますよ。
温泉の露天風呂から流氷を眺めてみよう!
道の駅おうむから、国道238号線を紋別・網走方向に進むと、オホーツク海に少し突き出した形の岬があります。ここは日の出岬(Googleマップ)といい、オホーツク海の眺望が素晴らしい名所です。 ちなみに岬の近くには温泉が湧いています。オホーツク温泉・ホテル日の出岬では日帰り入浴も受け付けていて、内湯や露天風呂からはオホーツク海を一望できます。つまり流氷が接岸していれば「流氷を見ながら温泉に浸かる」という贅沢な体験ができます! ホテルが岬近くの高台にありますので、ホテル内の展望スペースからもオホーツク海と流氷を眺めることができます。露天風呂とは違った視線からのパノラマが印象に残りますね。 またホテルから車で数分の距離にある日の出岬にも、小さいながら展望台「ラ・ルーナ」が設けられています。こちらからは海までの距離が近い分、流氷も身近に見えるような風景が楽しめます。日の出の美しい街、雄武を後にして、次は紋別へ向かいましょう。流氷の中を突き進む砕氷船に乗って、流氷を間近に感じることができますよ。
【紋別】流氷のまっただ中へ誘う流氷砕氷船「ガリンコ号」
紋別(もんべつ、Googleマップ)は、オホーツク海沿岸の中央に位置する港町。オホーツク海に面した町としては、網走に次いで規模の大きな町です。オホーツク海の流氷は、天然の良港である紋別港の中にも容赦なく押し寄せるため、冬は船が出せなくなります。でも紋別には、流氷に覆われた海へ堂々と乗り出していく観光船があるのです。 その頼もしい船とは流氷砕氷船「ガリンコ号」。冬の紋別の観光の目玉です。
「ガリンコ号」は、船の先頭にある2本のドリル形スクリューで進行方向にある流氷を"ガリガリ"と割って進む流氷砕氷船。そのため流氷に閉ざされた紋別港を出発し、オホーツク海の沖合まで出ることが可能になりました。 現在は「ガリンコ号II」と2021年にデビューした「ガリンコ号III IMERU」の2隻が流氷砕氷船として運航しています。 流氷砕氷船「ガリンコ号」の乗り場は、紋別港にある海洋交流館(Googleマップ)。乗船窓口で受付を済ませてから乗船します。 乗船時間は約1時間(流氷の状況により若干の延長あり)。暖房の効いた船室も用意されていますが、しっかり防寒対策をした上で外のデッキから流氷を眺めるのも楽しいですよ。 紋別港を出航したガリンコ号は、氷海展望塔 オホーツクタワーを右手に見ながらオホーツク海の沖合へ。流氷が接岸している時は、港内にある流氷も砕きながら進みます。 流氷か接岸していない時は流氷帯まで航行した後、流氷帯に入るタイミングでドリル形スクリューを回転して流氷帯に切り込んでいきます。デッキの前方では、スクリューが流氷を砕いている様子を船上から目の当たりにすることも可能です。
流氷のまっただ中から絶景を満喫!天然記念物の鳥に会えるかも
流氷帯に突入したガリンコ号の船上から眺める流氷は「流氷原」という言葉がぴったり。白い大地が広がっているようにも見えて、ここが海の上であることを忘れてしまいそうです。 流氷接岸中、もしくは流氷帯が陸地に近い場合は、ガリンコ号から流氷越しに紋別の街並みを望むこともできます。 ガリンコ号に乗船していると、流氷の上で天然記念物に指定されているオオワシやオジロワシなどの鳥が休憩しているのを見ることができます。鳥の動きに注目してみるのも面白いでしょう。太陽と流氷のコラボレーション絶景が楽しめるサンセット便・サンライズ便
流氷砕氷船「ガリンコ号」には、16時台に出航するサンセット便が設定されています。この時期の紋別の日没時刻は16時半~17時前後のため、お天気に恵まれると航行中に夕景を見ながら流氷を楽しむことができます。 太陽は紋別の街の背後にある山へ沈みますが、空が赤く染まる夕焼けやマジックアワー、ブルーモーメントと呼ばれる美しい空と流氷のコントラストが美しく、素敵な旅の思い出になりますね。 またガリンコ号には土曜・日曜・祝日限定で、早朝5時半ないしは6時台に出航するサンライズ便も設定されます。 日の出前の薄暗い時間に出航して、航行中に流氷が埋め尽くすオホーツク海から昇る日の出を望むという特別な体験が可能。日の出の後も、朝日が照らす流氷など日中では見られない絶景を堪能できます。 紋別市内に宿泊すれば、サンライズ便に間に合うシャトルバス「ガリヤ号」に乗って海洋交流館まで移動できます。早起きする必要こそありますが、素晴らしい絶景が待っていますので、紋別に泊まるならばガリンコ号のサンライズ便乗船も旅のプランに入れてみて下さい。流氷の下はどうなっているの?
地球規模の自然現象である流氷ですが、流氷の下はどうなっているのか気になりますね。そんな疑問を解決してくれるのが、紋別港の防波堤の先にある氷海展望塔 オホーツクタワーという施設です。海洋交流館から送迎バスに乗って行くことができます。
ここは上部がオホーツク海を眺める展望台(無料開放)、下部が水族館と海中展望が楽しめるフロア(有料)となっています。流氷が接岸している時は、小窓から流氷の下の海の様子が見られます。
オホーツク海の人気者と言えばクリオネですが、もちろんオホーツクタワーでも展示されています。あまりの小ささにちょっとびっくりしてしまいますが、一見の価値はありますよ。
真冬でも常に流氷が見られるとは限りません
流氷は自然現象ですので、真冬だからといって必ず見られる訳ではありません。季節風の吹き方などに影響を受けることが多く、昨日は接岸していた流氷が1日もせずに沖合に後退してしまったこともしばしばあります。 流氷が来ていた場合でも、低気圧通過などで天候が荒れる場合はガリンコ号は欠航になります。自然現象はどうしようもありませんので、ガリンコ号での流氷観光を体験できた時は運が良かったと考えて、真冬の絶景を堪能してください。オホーツク海における流氷の最新状況は、第一管区海上保安本部が提供する「海氷情報センター」などのWebサイトで確認できますので、出発前に確認しておくと良いでしょう。また紋別バスターミナルなどに最新の情報が掲示されています。
他の道東の観光地も回るなら「ひがし北海道エクスプレスバス」がおすすめ
北海道は観光地間の距離が長く、かつ鉄道やバスの運転本数も多くないため、観光地間の移動には時間がかかります。時間を有効活用したい時はレンタカーも活用可能ですが、冬の北海道は厳しい寒さと滑りやすい道路状況から、雪道運転に慣れていない観光客のレンタカー利用はおすすめできません。そのような方々に向けて、道東に点在する観光地を結ぶ観光周遊バス「ひがし北海道エクスプレスバス」(インターネットでの事前予約制)が冬季限定で運行されています。
紋別へは、以下のルートのバスが運行されています。
・阿寒湖・摩周湖から網走経由で紋別へ向かう「阿寒→摩周・網走→紋別2号」
・紋別から網走経由で知床へ向かう「紋別→網走→ウトロ1号」
「ひがし北海道エクスプレスバス」には利用条件があり、各エリアの指定宿泊施設に泊まること、かつ利用日の2日前までにバスの事前予約が必要です。
利用条件は厳しいですが、ホテル・旅館の前でバスに乗り降りできるなどのメリットがあり、公共交通機関での移動が面倒な「ひがし北海道」のエリアをリーズナブルな運賃で移動できます。
たとえば網走で流氷観光砕氷船「おーろら」に乗船した後、バスで紋別へ移動して流氷砕氷船「ガリンコ号」に乗船することも可能です。
なお「ひがし北海道エクスプレスバス」は、知床や野付半島などへ向かう他のルートのバスとも組み合わせて利用が可能。さらに旭川や釧路からの地域間バスなどが3日~5日間乗り放題となる「ひがし北海道ネットワークバス 乗り放題バス」(利用日の10日前までに事前購入、かつ利用日3日前までに乗車予定バスをすべてインターネットで事前予約要)を活用すると、よりお得に冬の道東の観光地をまわることができます。早めに旅を計画する方にはおすすめですね。
北海道の冬の風物詩の一つである流氷を楽しめる雄武と紋別をご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。厳しい寒さの中だからこそ味わえる美しい風景に出会えますので、この冬は流氷を見に雄武と紋別までぜひ出かけてみてください。
紋別・雄武へのアクセス
■紋別地図:Googleマップ
アクセス:
<飛行機> オホーツク紋別空港から、空港連絡バスで紋別バスターミナルへ。空港連絡バスは海洋交流館前(ガリンコ号乗り場)にも停車します。
オホーツク紋別空港へは、羽田空港からANA(全日空)が毎日1往復を運航。
<鉄道> 札幌と網走を結ぶ特急 オホーツク号、旭川と網走を結ぶ特急 大雪号で遠軽(えんがる)へ向かい、北紋バスまたは北海道北見バスで紋別バスターミナルへ。遠軽駅から紋別バスターミナルまでは約1時間30分。
<高速バス> 札幌と紋別を結ぶ「流氷もんべつ号」、もしくは旭川と紋別を結ぶ「特急オホーツク号」バス(北海道中央バス、JR北海道バス、道北バス、北紋バスの共同運行、予約要)で紋別バスターミナルへ。
札幌から紋別まで約4時間20分、旭川から紋別まで約3時間。
<観光周遊バス>
観光周遊バス「ひがし北海道エクスプレスバス」(インターネットでの事前予約制、利用条件あり)の以下のルートのバスが紋別ガリンコステーションバス停を経由します。
・阿寒湖・摩周湖から網走経由で紋別へ向かう「阿寒→摩周・網走→紋別2号」
・紋別から網走経由で知床へ向かう「紋別→網走→ウトロ1号」
<車>
道央道 比布(ぴっぷ)ジャンクションより、旭川紋別道へ。
浮島インターチェンジから国道273号線に進み、渚滑(しょこつ)から国道238号線経由で紋別へ。
または遠軽インターチェンジから国道333号線、国道242号線経由で湧別へ向かい、国道238号線経由で紋別へ。
※冬の北海道の道路は雪道と凍結のため、雪道運転の経験が少ないとレンタカーでの運転は危険です。楽しい旅とするために、公共交通機関やタクシーなどでの移動をお勧めします。
《流氷砕氷船「ガリンコ号」の乗船について》 流氷砕氷船「ガリンコ号」の乗船場とオホーツクタワーへは、紋別バスターミナルよりシャトルバス「ガリヤ号」に乗車し、海洋交流館前ガリンコ乗り場バス停にて下車。
なお流氷砕氷船「ガリンコ号」は定員制で、インターネット予約は乗船日の2日前まで、または乗船前の電話予約が必要です。空席があれば当日手続きも可能ですが、満席のことが多いので事前予約をお勧めします。予約状況は流氷砕氷船「ガリンコ号」のWebサイトで確認できます。
■雄武
地図:Googleマップ
<バス>
紋別バスターミナルより、北紋バス 雄武高校入口行きに乗車。道の駅おうむへは、雄武バス停下車、日の出岬へはホテル日の出岬バス停下車。
※バスの運行本数は少ないので、必ず事前に時刻表を確認して下さい。
<車>
紋別より国道238号線で浜頓別、稚内方面へ。
◇「冬の名所」に、「名所・旧跡」ガイドで冬に行きたい名所・旧跡を紹介した記事の一覧をまとめてあります。
◇「北海道の名所」に、「名所・旧跡」ガイドで北海道の名所・旧跡を紹介した記事の一覧をまとめてあります。