夫婦なのに憎み合う……幸せな生活が一転
夫婦なのに憎み合うのはなぜ
しかし、数十年後、いや、早ければ数年後には憎しみを胸に抱くようになってしまう夫婦が多少なりとも存在するのが現実です。
「外から見たら、仲の良い夫婦と見られるでしょう。その期待に応え続けるために笑ってきていました。でも……」
憎しみとなる発端は、ちょっとしたつまずきやすれ違いのことも少なくありません。
相手に言えない思いや、言っても理解してもらえないという気持ちやさみしさが次第に憎しみへと発展していく例を、これまでいくつも見てきました。
結婚当初の幸せな笑顔のまま過ごしてもらいたい。
また、今ほんのちょっとのつまずきを感じている方々に「憎しみ」という地獄を感じてもらわないために、今回は「憎しみ合わない夫婦にならないために」というテーマで、結婚後に陥りやすい問題を具体例をあげて説明します。
最初のつまずきは夫婦の間のすれ違い
「二人のハートが少しずつ、少しずつ崩れて行く」
その中でも、結婚間もなく陥るすれ違いとして多いのが、相手の態度の変化です。
「付き合っていた頃はあれほど仲がよくてどこに行くのも一緒だったのに、今は全く私に興味がない様子なんです。家にいてもテレビに夢中で話しかけても上の空。最近、仕事のあとパチンコに寄ってから帰ることがわかりました。我が家はそんなに居心地が悪いのでしょうか? とてもショックです」英子さん(仮名)34歳」
男性に聞くと、決して妻を愛していないわけではありません。
でも、生活の変化によるストレスもあります。習慣の違い、気遣い、遠慮。
一人暮らしをしていた人なら、一人気ままな生活が懐かしく思い出されるでしょう。
実家で家族と暮らしていたにしても、適度の距離感があったでしょうから、結婚したとたん、家では常に妻と一緒という状態に慣れるまで時間がかかる人もいます。
一方で、常に愛されていることを確認したい女性がいます。
朝起きたときのぶっきらぼうな様子。おはようのキスもないなんて! もう気持ちが冷めちゃったの? 私、何か悪いことした?
人から見たら小さなことでも、本人にとっては大きな問題です。
嫌われたのではないかと不安になってしまうのはしかたないことです。
ただ、この段階では憎しみにまで発展することはありません。
「どうして私を理解してくれないの?」の呪縛
「心に巣食う孤独感が少しずつ大きくなり、呪縛に」
そして、妻の孤独感、夫が感じる不自由さはストレスとなり、「どうして私を理解してくれないの?」という怒りに変化していきます。
その怒りは呪縛に。
お互いに今の状態はよくないと思っているので話し合いをするのですが、「「どうして私を理解してくれないの?」という呪縛は、気づかぬうちに相手を責めてしまいます。
本当は
「一緒にいるのに会話がないのはわびしい」
「休日に一人で出かけてしまうのはさみしい」
という寂しさを伝えたいのですが、「どうして私の寂しさ理解してくれないの?」と言われると、夫は責められたような気持ちになり、ついつい反撃に出てしまうのです。
「お前はどうして俺の自由を奪うんだ。仕事でたまったストレスを発散して何が悪い! 俺が病気になってもいいって言うのか!?」
これでは解決するものも解決できません。
さらに、「話し合えば理解してもらえると思っていたのに、話し合いすらできない。私たちは元の仲の良い夫婦には戻れないのかもしれない」と絶望感にさいなまれてしまいます。これが一番辛い状態なのではないでしょうか。
その状態にセックスレス問題が加わると、「夫婦っていったい何?」という状態になってしまいます。
セックスレス問題も加速
「私たち夫婦はすれ違いの多い夫婦でした。でも、夫に抱かれることで愛されている実感があるうちはまだ良かったのです。どんなにケンカをしても、愛されているとわかればやっていけました。でも、セックスレスになった今、夫が何を考えているのか全くわからないのです。私はどうしたらよいのでしょうか。」千春さん(仮名)31歳」私が主催している恋人・夫婦仲相談所にはこのような悲痛な叫びともいえる相談が少なくありません。
また、夫に憎しみを抱く原因として多いのが、長年のセックスレスによる寂しさが次第に肥大化していった場合です。
少しでも居心地がよくなるようにと家事を一生懸命こなし、寂しくても常に笑顔を絶やさず、ボディラインにも気をつかう妻。
それなのに、夫は妻の体に触れようともしません。自分が一生懸命がんばればまた愛されるようになる、と思っていた妻たちもがんばることに次第に疲れ、あきらめ、そのうち気持ちがすさんでいきます。
「30代後半だというのに加齢臭を感じさせる夫が汚らしく感じてしまうんです。あんなに触れて欲しいと思っていたのに。お風呂は夫が入った後は必ず流します。もちろん洗濯物も別。家庭内別居も時間の問題かもしれません。」純子さん(仮名)38歳」
寂しさがつのると、夫に向き合っても無駄だと思い、不倫に走る妻も出てきます。
「不倫が悪いというのはわかっています。でも、人生で二度と女として扱われることがないと思っていた私を、あんなに大切にしてくれるんです。もう彼とは離れられません」
この女性の気持ちは痛いほどわかります。でも、不倫は民法では違法とされるものです。自分だけでなく、相手の男性まで訴えられる可能性のあることなのです。
思いこみを客観視する
「互いに支えあえる夫婦になるため、できることは何でしょうか」
もとは他人だった二人が夫婦として生活をするわけですから、小さなすれ違いが出てしまうのはしょうがないこと。
それを新たな発見として「この人にはこんな一面がある」と相手を理解し、認めることが、すれ違いをすれ違いではないものにします。
そのためにも「どうして私を理解してくれないの?」という呪縛から逃れることが、相手を理解する第一歩になります。
自分の気持ちはひとまず横に置いておき、相手を理解する努力をしてみましょう。相手がどんな気持ちでいるのか、さぐってみてください。
しかし、そうは言っても孤独感や無力感のさなかにいると、その呪縛から逃れることが難しくなります。
まず、そんなパワーが湧き出てきません。そんなときには、自分の親や友人に相談することもいいのですが、まず紙に書き出して何を悩んでいるのか整理してみることが一番のおすすめです。
「親や友人に心配をかけたくない」
「なんて言われるかわからないから相談したくない。プライドもあるし」
「世間には仲良し夫婦と思われたままでいたい」
と思う人は、自分の中にいる第三者的自分を想像し、彼女に、
「これとこれが辛い」
「こういうところが憎い」
「この点が耐えられない」
と淡々と吐き出してみることです。吐き出すことで、自分の反省点も見つかることがあります。そうなればしめたもの。自分の反省点を一つでも見つけた方は劇的に、「思いこみ」から脱出できます。
「思いこみ」という堅い鎧を脱いだとき、気持ちが急激に軽くなっていくのを感じることでしょう。
「こうしてくれたらいいのに」と相手に望むばかりではダメ。相手を変えるのは難しいことですが、自分を変えることは可能です。
巡り会い、縁あって結婚したパートナーと、憎しみ合うことを極力少なくするために、「どうして? どうして?」と尋ねる前に、心理学の本を読んでみたり、恋人・ 夫婦仲相談所でほかのかたのお悩み事例を参考にしてみてください。
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