性的嗜好について話し合ったことがありますか?
パートナーの性的嗜好を知っていますか?
もちろん、まったくセックスレスでありながら夫婦ともに満足しているカップルもいらっしゃるかもしれませんが、一般的には性生活での満足度合いは、結婚生活全体の満足度、幸福度にも大きく関わってきます。
それでありながら、パートナーと性についてオープンに語り合えないご夫婦の例がよく見られます。セックスのやり方、回数などについて不満があったり、こうしたいという欲求があっても、恥じらいや遠慮があって相手には黙ったままになりがち。
そして、それよりさらに語りにくいのが自分の性的嗜好についてではないでしょうか。食べ物や洋服に好みがあるように、性的にもそれぞれ嗜好をもっていると思います。しかし、自分自身でも気づいていなかったり、あるいは気づいていてもそれを隠そうとしがちな性的嗜好。
パートナーの性的嗜好に気付いた時、あなたはどうしますか?また、パートナーから性的嗜好を打ち明けられた時、あなたはどのように対応しますか?今回はさまざまな性的嗜好の中でも特にフェチに的を絞って、考えてみたいと思います。
あなたはパートナーのフェチを受け入れられますか?
なぜフェチが生まれるの?
異性の親との関係がフェチの原因?
精神医学では「フェティシズム」は「変態性欲」「性的倒錯」と訳され、性的対象が歪曲された状態を指します。ただし、現在、「フェチ」はもっと軽い意味で、「好み」「萌え」に近い内容で使われることが多いと思います。
その対象は「脚フェチ」「おっぱいフェチ」「指フェチ」「お尻フェチ」「筋肉フェチ」など体のパーツであったり、「靴フェチ」「メガネフェチ」「ラバーフェチ」「皮フェチ」など事物であったりする場合もあります。あるいは「制服フェチ」「スーツフェチ」「水着フェチ」など服装が対象の場合や、「帰国子女フェチ」「女子高生フェチ」「人妻フェチ」など人物の属性であることもあります。
いずれにしても、普段の会話の中で交わされる際には「○○を注目してしまう」「○○が好き」という軽い意味で使われ、「メガネフェチ」といっても「メガネをかけていない人にはまったく性欲がわかない」というような状況を指すことはあまりみられません。
しかし、実際には「水着フェチ」でも「水着を着ている女性」を性的対象とするだけでなく「水着そのもの(女性が着ていなくても)」に興奮したり、あるいはそれを自分が身につけることで興奮したり、など嗜好の度合いは様々で、そのこだわりがディープになればなるほど、他人には伝えにくくなる傾向があります。
では、フェチはどのようにして作られるのか?一般的には過去に受けた経験やトラウマがきっかけとなるといわれています。また過去の経験の中でも、特に幼少期の異性の親との関係を指摘している文献もあります。
異性の親への性愛感という感情が成長の過程でうまく解消されなかったり、親との子離れがうまくいっていなかったりすると、親の特徴的な体の部分や親が好んだものを愛情の対象として考えるようになるという説です。
フェチは圧倒的に男性が多いといわれていますが、これは、一般的には父親よりも母親の方が子供との関係性が深く、子供の育ちに大きな影響を与えるため、母親が異性の親となる男性の方が、フェチになる可能性が高いと考えると納得がいくかもしれません。
では、実際にパートナーのフェチに向き合った時、どのようにそれを受け止めたらよいのか。実際の例を基に考えて見ましょう。
パンスト、タイツ、ストッキングなどのアブノーマルな夫のフェチ
ストッキングフェチの夫への悩み
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こんにちは。Aと申します。29歳の主婦で、結婚して10カ月です。夫のフェチに悩んでいます。
もともと夫は「脚フェチ」だと公言していて、私の脚のことを「きれいだ」とよく褒めてくれたり、なでたりしていました。特に生足よりもストッキングをはいた足が好きなようで、デートの時にも「パンストを履いてきて」ということが多くありました。
結婚後、私は仕事をやめて専業主婦になったので、普段はパンストをほとんど履かなくなりました。最初は何も言わなかった夫ですが、そのうちに夜ベッドに入る前に「パンストを履いてくれないかな。Aのストッキングを履いた脚が見たい」と言いだしました。「寝るときにパンスト・・・!?」と思ったものの、夫が言うなら、とストッキングを履いてベッドに入りました。
そのうち、徐々にリクエストがエスカレートしてきて、下着を付けずにパンストを履いて欲しいとか、パンストを破ってもいい?とか言うようになりました。かなり大胆な網タイツや、セクシーなガーターベルトとストッキングのセットを買ってきて、「履いてみて」という時もあります。もちろん、夫が喜ぶならと従っていましたが、だんだん怖くなってきました。
そして2週間前、夫がいない隙に、夫の机の引き出しをあけ、ストッキングや網タイツ、パンストがたくさん入っているのを見つけてしまいました。未開封のものもありますが、履いた後のものもあります。伝線してしまったので私がゴミ箱に捨てたものもありますが、私の履いたことのないブランドの物もあります。もしかして、どこからか洗濯物を盗んできたのでしょうか?それでしたら犯罪ですよね。ぞっとすると同時に恐くなってきました。
悩んだ末、思い切って夫の引き出しを見たことを話し、夫に使用済みストッキングについて問いただしました。夫は最初、私が引き出しを見たことを責めていましたが、そのうちに開き直ったように語り始めました。
使用済ストッキングは盗んだものではなく、自分で履いてみたというのです。履いたらどんな感じがするのか試してみたかっただけだと。だから犯罪でもないし、自分で家の中でストッキングを履いてみるだけで、だれにも迷惑はかけていないし、悪いことをしているとも思わないと・・・。
夫の「脚フェチ」発言は私の足が好き、ということだと思っていたのに、実は好きだったのはストッキング。ストッキングを履いた私の足はどうでもよく、ストッキングそのものが好きだった。という事実は大変ショックでした。
しかも夫が自分でも履いている。それを悪いことをしているとも思わないと堂々と言われてしまい、目の前が真っ暗になる思いがしました。思わず「それって変態よ」と言ってしまいました。
それから2週間、私の生理があったことや、夫の残業などや出張もあり、セックスレスで過ごしています。夫とは会話もギクシャクしたままです。ストッキングフェチをのぞけば、真面目でやさしくて、家事も手伝ってくれるし本当に文句のつけようのない夫です。何とかして夫のストッキングフェチを直したいと思います。私はどんなふうにこの問題に対処していけばよいのか、アドバイスをお願いします。
この相談をお読みになって、皆さんはどうお感じになりましたか?
パートナーのフェチにどう対応する?
パートナーのフェチを理解し、受け入れるには?
Aさんは「夫のストッキングフェチを直したい」と思っていらっしゃいますが、他人の性格を変えるのが困難であるのと同様、性癖を変えるのも困難です。相手を自分の価値観に合わせようとするのではなく、まずは相手の価値観を認め、理解してあげることが大事です。
Aさんの旦那様のおっしゃるように、自分でストッキングを買ってきて自分で家の中で履いているのは悪いことではありません。Aさんの「変態」発言は、「男性がパンストを履く」=「一般的でない」=「変態」という考え方が元になっていると思われます。
しかし、パンストを「女性の履くもの」と決めつけているのはAさんの思い込みです。たとえば、ダンスや演劇の衣装では男性がタイツを履くことは当たり前です。バイクや自転車に乗る方は防寒用にアンダータイツを履くこともよくあります。
もちろん、アンダータイツとストッキングはイコールではないですが、アンダータイツを履く方にとっては、パンストを履くことへの違和感は少ないことも想像できます。
また、ストッキングを単純に布地として考えた場合、手ざわりのよさを感じられるのは確かで、その感触の心地よさは男女共通だと思います。
妻が夫のフェチと付き合うには?「気持ち悪い」と切り捨てないこと
まずAさんに求められる対応は「変態」などと、自分の価値観だけで相手を切り捨ててしまわないことです。話し合いを拒否してしまっては、お互いの理解もありえません。相手が拒否の姿勢をとれば、パートナーも相手に理解してもらおうという努力をやめてしまい、お互いの歩み寄りも不可能になってしまいます。
Aさんも、まず最初は、旦那様の気持ちを聞いてみることから始めることが大切です。
旦那様からなぜストッキングが好きなのか、どんなところが好きなのか、どんなきっかけで興味を持ったのかなどを伺ってみれば、彼のフェチへの理解を進める助けになると思います。
そして、次の段階として、自分がなぜその嗜好を受け入れられないのか、受け入れられないポイントは何なのか、どこまでなら受け入れられるのかをじっくり振り返ってみる。そのうえで、ご夫婦の間で、歩み寄れる点を一緒に探してみることです。
たとえば「旦那様がストッキングを履いてみることを認める代わりに、Aさんに履くことを強要しない」など、「自分で楽しむ範囲であれば、認めてあげる」というのも一つの解決方法ではないでしょうか。
フェチに限らず、こと性癖のことになるとなかなかパートナー間でも話し合いにくいものです。相手を大事に思っていればいるほど、「拒否されるのでは?」「嫌われるのでは?」と口にしにくいこともあるかもしれません。
しかし、自分の性癖を相手に押し付けたり、正当化しようとしたりするのではなく、性癖も自分自身の一部として相手に理解してもらうように伝え、相手も愛情をもってそれを受け止められるよう、夫婦間で性についてもオープンに話し合えるようになることができるといいですね。
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