強い音の方向性がスイートスポットを狭くする
従来のスピーカーのなかでも一般的な「コーンスピーカー」はスピーカー表面のコーン紙に密着させたコイルを、マグネットによって振動させることで音を出しています。音は空気の振動です。最終的にはコーンの振動によって空気が振動し、音が発せられるわけですが、コーン紙は前後に動いて空気を振動させるため、その音には常に方向性が生まれることになります。
音に方向性があるということは、音が特定の方向に放射されるということです。この音の方向性は、高音域になるほど強くなり、音が正常に聞こえる範囲が狭くなります。そのため、高音になるほど、２つのスピーカーの音が重なる範囲「スイートスポット」は狭くなります。
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| コーンスピーカーなど従来のスピーカーは音の方向性が強い。高音になるほど、音の方向性が強まり、スイートスポットが狭くなる。また、壁などで反射した音がノイズとなり、本来の音を聴く妨害となる。 |
周囲に均等に音が拡散するNXT方式
これに対して、NXTスピーカーではアクティブユニットがフラットパネルを振動させることで音を出します。フラットパネルは全体が共振することで、音を発します。パネル全体の共振が均等に周囲の空気を振動させて音を発するため、その音には特に方向性がなく、音は拡散していくことになります。
これにより、広い範囲で同等の音圧が保たれることになり、その音は方向性を持つと言うよりスピーカーを中心に「球状」に前後左右に広がっていきます。これにより、２つのスピーカーの音が重なるスイートスポットはきわめて広いものになります。
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| NXTスピーカーの音は方向性を持たず、周囲に拡散して広がるため、その音の重なる範囲であるスイートスポットはきわめて広くなる。また、その音の特性から壁などで反射しにくく、本来の音を聴く障害になりにくい。 |
NXTを進化させたAAPS
このNXTをさらに推し進めたのがTDKのAAPSです。NXTの１つの問題としてフラットパネル全域で均等にスピーカーを振動させることが難しく、音が微妙にひずんでしまうということがありました。これに対して、AAPSではよりパネル全域で均等に振動させることに成功し、音のひずみを減少させています。その秘密はフラットパネルに剛性の高い合成樹脂を使っていることです。高い剛性を持ったことで、パネルの振動の均一性を実現したわけです。
ただし、このパネルはあまりに剛性が高いため、NXTでよく使われるムービングユニットである磁気コイルではまったく音を出すことができません。そのため、AAPSではムービングユニットとしてGMMエキサイタを使っています。このGMMエキサイタは強力なパワーと繊細なコントロールが可能なことが特徴で、ムービングユニットに使った場合、磁気コイルよりも音の再現性にも優れます。
AAPSはフラットパネル全体を共振させて音を出すという基本的な原理はNXTと変わりませんが、パネルに剛性の高い大型の合成樹脂を使うことで音のひずみをなくし、しかも音を力強く、クリアにしています。NXTの原理はそのままにより高音質化したのがAAPSなわけです。現在、TDKのスピーカーのラインアップではAAPSスピーカーはNXTスピーカーの上位的な位置づけになっていますが、まさにそのラインアップ通りです。
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| AAPSスピーカーのサテライトユニットはNXTスピーカーよりも大きい。この大きな合成樹脂を振動させて音を出せるのはパワフルなGMMエキサイタのおかげ。ちなみに写真のNXTサテライトスピーカーはTDKのNX-502のもの。 |
次ページでは「Xa-Master」のレビューをします。
