鉄道/寝台・夜行列車

寝台急行『銀河』の夜(2ページ目)

東京~大阪間に寝台列車が運転されているのをご存知ですか?その名は寝台急行『銀河』。新幹線や飛行機ならあっという間に到着してしまう距離ですが、寝台列車で一晩かけて行くというスローな旅をしてみませんか。

執筆者:高橋 良算

ある日の寝台急行『銀河』(東京~小田原)

■ 22:49 東京駅
東京駅9番線
旅立ちは東京駅9番線
金曜夜の東京駅9番線。酔客を乗せた通勤電車が次々と発着する合間をぬって、今夜の宿となる寝台急行『銀河』がブルーの車体を光らせながらホームにすべりこんで来ました。これから発車までの約10分間、見送りの人とあいさつをしたり売店で夜食を購入したり、ホームは夜行列車出発前の、慌ただしくも旅立ちの期待に満ちた雰囲気に包まれます。

■ 23:00 東京駅発車
準備の整った『銀河』は、客車列車独特の「ガクン」という衝撃とともに、ゆっくりと大阪へ向けて発車です。今夜私が乗るのは、B寝台の4号車5番下段。シーツや毛布、枕、浴衣がきれいにたたんで置いてあります。発車の余韻をしばらく楽しんだ後、早速ベッドメーキング開始。お金を払っているのに客にやらせるのか、などと言うなかれ。これも寝台列車に乗る楽しみのひとつです。

■ 23:03 新橋駅付近
車内放送でこの先の停車駅などの案内があります。「すでにおやすみのお客様もおられますので、この放送を持ちまして、明朝の大津到着前まで車内放送はいたしません・・・」発車数分で車内放送終了、というのもこの列車らしいですが、しかし普段の生活のリズムからすると、23時ではまだ深夜という気はしません。

■ 23:20 横浜駅付近
B寝台のベッド
今夜のベッドはB寝台下段
B寝台車はレールに対して垂直にベッドが配置されていて海側が通路になっているのですが、山側に枕を置くか海側に枕を置くか、いつも迷ってしまうんです。ベッド内の読書灯は海側に取り付けられているので、どうやら海側に枕が正解のようなのですけれど、私は結局いつも山側に枕を置いて寝るのです。

■ 23:38 戸塚駅付近
車掌が検札に来ました。切符に押された印を見ると「大阪車掌区」とあり、西へ向かう列車なんだという実感がわいてきます。そしてこの車両すべての検札が終わると、減光。完全に真っ暗になるわけではありませんが、照明が落とされていよいよ夜行列車らしくなってきました。

そしてすぐに大船駅に停車。寝台特急なら通過してしまう大船などにもこまめに停車するところが、「急行」らしくてなんだかちょっとうれしくなってしまいます。

それにしても、車内は思いのほか静かです。札幌行寝台特急『北斗星』のような観光客主体の列車では夜が更けても宴会をしている輩が多く、賑やかすぎて閉口してしまう場合もあるのですが、やはり『銀河』は乗り慣れたビジネス客や一人旅での利用が多いのでしょう。

しかし静か過ぎてほんのわずかな物音も響いてしまうので、隣の客はそーっと慎重に缶ビールの栓を開けています。ところがそんな静けさの中、通路でスナック菓子をボリボリ食べ始めた猛者が・・・。これが信じられないくらい大きな音なのです。

■ 0:00 国府津駅付近
日付が変わるとボリボリも聞こえなくなり、再び静かに。もうほとんどの乗客は寝ているらしく、あちこちから寝息やいびきが聞こえてきます。ところで私は寝台列車に乗ると、今のどの辺だろうかとか、もうすぐ◯◯駅に停まるはずだとか色々と気になってしまってなかなか寝付けないのです。寝台列車の真のプロフェッショナルは、発車前から寝られる人のことなのかも。

酒匂川の鉄橋を渡る音が聞こえると、まもなく小田原に到着です。

『銀河』の夜は次のページへ続きます>>
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