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マンション建設で日が当たらなくなる!(2ページ目)

隣にマンションが建設され始めました。このままだと我が家に日が当たらなくなってしまいます。業者に文句を言っても、建築確認は下りているんだと言われ、まったく取り合ってもらえません。

酒井 将

執筆者:酒井 将

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建築基準法の規制は行政の見地から見た一般的な規制に過ぎません。建築が違法になるかどうかの判断は、個別具体的な事情を考慮し裁判所が判断することになります。

建築基準法に違反しなければ工事は許されるのか?

建築基準法は、都市計画区域内を、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住宅専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、、工業地域、工業専用地域、用途地域の指定のない地域に分け、それぞれの地域ごとに建物の隣地に及ぼす日影時間について規制しています。はじめに挙げた地域ほど、建築制限が厳しいので、日照をはじめとする良好な住宅環境が保護されます。

ご相談のケースでは、近隣商業地域ということで、建築基準法の規制もクリアしているということですが、だからといって、全く文句を言えないかというとそうではありません。というのも、建築基準法は行政法規であり、行政の見地からある程度の広さをもつ地域を一括して規制しているだけである一方、工事が違法になるかどうかの判断は、個々の住民の具体的な事情や建設予定地域の具体的な利用状況も考慮されるからです。

たとえば、低層住居専用地域であっても、比較的高層の建物が多い場所もあれば、商業地域であっても、商店街の裏側は住宅街で低層建築物が多いということもあります。このように、用途地域と実際の土地利用状況は同一とは限らず、このような事情を考慮する必要があるわけです。用途地域の指定がどうであるかというのは、あくまで判断の一要素に過ぎないのです。

結局のところ、工事が違法になるかどうかは、当該建物がその地域にふさわしいものかどうか、建物による日照や通風の被害が、社会通念上、一般に受忍限度(被害者が我慢できる限度)を超えているかどうかを、加害行為の態様、加害行為に対する社会的な評価、加害者の意図、侵害の程度、損害回避の可能性など、諸般の事情を総合的に考慮して裁判所が決定することになります。

ですから、あなたの家のまわりの環境が閑静な住宅街であることや、周囲に高い建物がないこと、マンションの完成によりあなたの家屋及び庭がすっぽり日陰になってしまうことなどの個別具体的な事情が考慮されて、マンション工事の違法性が判断されるわけです。

工事続行禁止の仮処分

なお、強制的にマンション工事をストップさせるための手段としては、裁判所に工事続行禁止の仮処分を申立てるのが通常です。仮処分とはとりあえずの結論を急ぐ必要がある場合に申し立てる手続きです。裁判は長い時間がかかることが多いので、結論が出るまで待っていたら、裁判が終わるころには、マンションは完成してしまうでしょう。それでは、裁判を起こした意味がありません。そこで、このような場合には、とりあえず仮処分で急いで結論を出してしまいます。仮処分はあくまで仮の手続きですから、この後に通常の裁判を起こして、最終的に決着をつけます。とりあえず結論を出しておいて、あとでゆっくり判断しましょう、という制度が仮処分なのです。
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