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ベッドに誘うための約束に効力はあるのか?(2ページ目)

お気に入りの女とベッドインしたいがためにあらゆるプレゼント攻勢をかける男。男からプレゼントをもらいつつ、いかに手を出させないかを思案する女。法律的にはどうなるのでしょうか???

酒井 将

執筆者:酒井 将

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裁判所は、こういう違法な目的の契約には一切手を貸さないのです。クリーンハンズの原則といいます。

口約束の場合

まず、マンションをあげる、というのは贈与の約束ですが、単なる口約束であった場合には、A男はその約束を後で撤回することができます。というのも、民法550条には、「書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。」と書いてあるからです。したがって、A男が、「そんな約束は撤回する」とB子に言ったら、それでおしまいなのです。B子はA男に勝訴することはできません。

紙に書いていたら?

では、A男がB子に対し、「マンションをあげる」と念書を差し入れていたらどうでしょうか?しっかり者のB子が、いざという時に備えて、書面化していた場合です。

この場合は、そもそもマンションの贈与契約の有効性が問題になります。というのも、A男は、ベッドに誘うためにB子に「マンションをあげる」と言い、B子は「マンションをくれるなら」と思って体を許しているわけで、これはれっきとした売春だからです。民法90条では、「公の秩序または善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする」と定めています。したがって、売春目的でのマンションの贈与契約は、そもそも無効になるというわけです。だから、やはりB子はA男に勝訴することはできません。

逆に女性が男性をまんまとだますには?

「マンションをあげる」と嘘をつき、女をだましてもてあそぶ男なんてとんでもない!そんなやつが法律に守られるなんてひどい話だ!と思う方もいるでしょう。では、こういうとき、B子はどうすれば良かったのでしょうか?答えはこうです。

B子は、A男とラブホテルに行く前に、マンションをもらうべきだったのです。マンションをもらうといっても、鍵をもらうだけではダメです。きちんと登記簿上の所有者の名義を移す必要があります。そして、マンションの名義を移してもらったら、A男に言ってやりましょう。

「マンションどうもありがとう。でも、あなたとは寝ませんから。」

A男は、当然、「約束が違うじゃないか。俺の女にならないならマンションを返せ!」と言うでしょう。ですが、仮にA男が、B子を訴えたとしても、A男は敗訴します。民法708条には、「不法な原因のために給付をした者は、その給付をしたものの返還を請求することができない」と定めています。つまり、売春という違法な目的のために、マンションをあげたA男は、もはや約束を破られたからといって、マンションの返還を請求できないということです。
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